プロジェクト最前線

めざすは日本最深! エネルギーの将来を支える研究坑道

瑞浪超深地層研究所 研究坑道掘削工事

2010. 01. 13

岐阜県東部、陶磁器の里で知られる瑞浪市で、大林組JVは日本最深となる研究坑道の掘削を進めている。深さが地下400mを超え、完成に向けて一丸となって挑んでいる現場の様子を取材した。

超深地層における処分技術の研究坑道

私たちの日常生活になくてはならない電気。日本では、その約3割が原子力発電でまかなわれている。発電で使い終わった燃料は「核燃料サイクル」でウランやプルトニウムに再利用し、資源は有効活用される。

一方、その過程では高レベル放射性廃棄物が発生するため、地下300mより深い地層で保管し、長期間にわたる管理で放射線を低減させる必要がある。そこで計画されたのが、超深地層における処分技術の研究坑道だ。地下1000mを目標に直径約6.5mの立坑を掘削し、地中の岩石や地下水などを調査するもの。深部地質環境の総合的な調査技術開発の場として、国内外から大きな注目を集めている。

地下400mの研究坑道を見下ろす光景には目を見張るものがある

巨大な機械設備が大活躍

今回の超深度の施工を可能にしているのは、「スカフォード」と呼ばれる高さ22mの巨大な機械設備だ。掘削に応じて坑道を上下に移動するこの設備は、坑道の最深部で働く作業員を落下物から守り、安全に掘削を進めるための前線基地の役目を果たしている。
スカフォードの先端にはシャフトマッカーと呼ばれる積み込み機が設置され、発破によるズリ(掘り出した土や岩石)を10トンダンプ1台分かき集め、専用のズリバケツで一度に搬出できる。さらに、操縦席には無線が搭載され、地上とデータの交信を行い、各所に設置しているモニターへ施工状況を配信する役割を担っている。まさに、工事になくてはならない最新鋭の設備だ。


技術を駆使して超深地層を掘削する

平成16年から掘り続けた坑道は、昨年の10月に地下400mまで到達した。工事は主立坑の掘削のほか、深さ100mごとに換気立坑に接続する予備ステージの施工もある。また、深度300mに設けたアクセス坑道では、地質や地下水の研究調査が行われている。

多岐にわたる作業のなか、野田工事長は工事の難しさをこう話す。「大深度の立坑掘削やアクセス坑道での研究調査など、工事にはさまざまな知識や技術が要求されます。それに、地質の状況に応じて施工図も変わっていくので、作業工程を立てるにもひと苦労です」

4年前、地下180m付近を掘削中に、ふっ素やほう素の含有量が規定値を超える湧水帯に遭遇した。このままでは排水することができない。すぐに作業を中止して、今後の対応策に知恵を絞った。検討を重ねた結果、湧水の処理能力を高める排水処理プラントを増設するなど、素早い対応で危機を乗り越えたのだ。

スカフォードの概要図。土や岩石をシャフトマッカーでズリバケツに積み込み、地上に搬出する
地下水に含まれるふっ素やほう素を除去する排水処理プラント

"絶対にモノを落とさない"を肝に銘じて

研究坑道の最深部では、昼夜にわたり掘削作業が進んでいる。そのようななか、現場では特に気を付けていることがある。それは"絶対にモノを落とさない"ということだ。

「仮に、ボルトを地上から地下400mまで落としてしまうと、地面に激突するスピードは、新幹線並みの時速300kmに達してしまうのです」と工事を率いる松島所長は説明する。 「作業を繰り返していると、次第に深さに対する恐怖心は薄れていきます。だからこそ、常に緊張感を持って作業をすることが重要になります」と表情を引き締めた。

最深部から見上げると、地上へつながる小さな光が見える

未知なる深さへの挑戦

平成22年3月に予定される深度450mの到達に向け、現場は一丸となって日々奮闘している。最後に、松島所長は工事に対する思いを語った。 「将来の原子力開発に寄与する研究施設ですし、これほど深い地下構造体に接する機会はないので、若いメンバーにはチャレンジ精神を持って取り組んでもらいたいですね。また、地質調査や水理解析など地質学的要素も強い工事なので、本社と連携した最先端技術をコーディネートして、完成に向けて進んでいきます」 未知なる深さへの挑戦は、日本の原子力発電の未来へつながる大きな試金石となっていく。

(取材2009年11月)

工事概要

名称瑞浪超深地層研究所 研究坑道掘削工事(A工区)
場所岐阜県瑞浪市明世町山野内
発注日本原子力研究開発機構
設計日本原子力研究開発機構
概要主立坑:ショートステップ工法、掘削450m、仕上がり内径6.5m、ボーリング90m、予備ステージ・アクセス坑道5ヵ所
工期2003年3月~2010年3月
施工大林組、大成建設、間組

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