株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、小規模なトンネル補修工事において、低価格かつ効率的に「スペースパック工法」を適用するため、従来のモルタルタイプに加えて新たにミルクタイプの注入材を開発しました。
現在、インフラの長寿命化をめざし、老朽化対策や耐震化が急ピッチで進められています。トンネル構造物には老朽化に伴いさまざまな変状現象が起こりますが、覆工コンクリートと背面地山との間に空洞がある場合には、地震時に地山からかかる荷重が均等でなくなることで生じる圧ざ(※1)などにより、覆工コンクリートが損傷、崩落し、災害につながることが懸念されます。
スペースパック工法は、可塑性(静置状態では形状を保持するが、振動・加圧により容易に流動する特性)を持つ注入材を充てんすることで、これらの背面空洞を確実にふさぎ、トンネル構造物の耐久性・安定性の向上を図る技術です。
これまで使用していたモルタルタイプの注入材は、生モルタル(生コン工場から出荷されるレディーミクストモルタル)を現場に搬入し、あるいは現場に用意したプラントでモルタルを製造した後、特殊増粘材スラリーを混入して製造するため、施工の都度モルタルを調達する手間がかかっていました。そのため、大量の材料調達、製造、運搬が可能な高速道路トンネルには適していましたが、比較的小規模なトンネルでは材料費や設備費が割高となるため、不向きでした。
そこで、大林組が参画するスペースパック工法研究会(事務局:株式会社テクノ・ブリッド)は、2種類の粉体系材料を混ぜるだけの、ミルクタイプの注入材を開発しました。これらの材料は、場所と時間を選ばず安定的に調達でき、モルタルタイプと比較して設備の小型化も可能です。これにより、小規模な一般道路トンネルの補修工事などでもスペースパック工法を適用することが可能となりました。
また、ミルクタイプの注入材も、モルタルタイプ同様、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社の3社により定められている品質規格(※2)を満たしていることを試験により確認しています。
ミルクタイプの注入材によるスペースパック工法の主な特長は以下のとおりです。
- いつでもどこでも施工できます
モルタルタイプは施工のタイミングに合わせて生モルタルを搬入する、あるいはモルタルを製造する必要がありますが、ミルクタイプは材料のセメント系結合材(※3)と特殊増粘材の粉体系材料2種類を施工時に混ぜ合わせるだけです。2種類の材料をあらかじめ搬入しておくことで、昼夜を問わずいつでも、どこでも施工できます。
- 材料コストを削減できます
モルタルタイプは夜間工事の場合、生モルタルを夜間に搬入するため出荷割増費用が発生したり、生モルタルを搬入したアジテータトラックに特殊増粘材スラリーを混入して注入材を製造する必要から、トラック1台当たりの生モルタルの輸送量が限られ、小口空積割増費用が発生したりしていました。また、注入後にトラックを洗浄する費用も発生していましたが、ミルクタイプはこれらの費用が不要となり、材料費について最大2割のコストダウンが可能となります。
- プラント設備を小型化できます
ミルクタイプはサイロ2基とミキサー1基を搭載したトラック1台をトンネル内に搬入すれば製造することができるため、モルタルタイプに比べて設備を小型化することが可能です。そのため、注入量が少ない場合でも効率的に作業を行えます。
今回の開発により、工事規模・施工条件に応じて適切な注入材を選択することができることから、高速道路などの長大トンネルはもとより、比較的小規模な一般道路トンネルへも本工法の適用が可能となりました。大林組はこれからも、スペースパック工法の適用を積極的に提案し、安全・安心のための社会インフラ整備、国土づくりに貢献してまいります。
【スペースパック工法研究会の概要】
1 設立 |
:2015年9月8日 |
2 目的 |
:スペースパック工法の普及、技術の向上ならびに発展 |
3 会長および事務局 |
:テクノ・ブリッド(代表取締役:青木茂) |
4 特別会員 |
:大林組 |
5 参加企業 |
:大林組 |
- ※1 圧ざ
コンクリート部材が外力を受けて、曲げ圧縮破壊し、コンクリートが剥離あるいは浮いている状態
- ※2 品質規格
東日本高速道路、中日本高速道路、西日本高速道路の3社が「矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領」で定める注入材の品質規格
- ※3 セメント系結合材
主成分はセメントで、強度発現に寄与するもの
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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