広報誌『季刊大林』52号(特集:振動) を発行

都市全体の免震化を可能にする「ゼリー免震」都市構想を発表

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、このたび、広報誌『季刊大林』52号「振動」を発行しました。

季刊大林 52号(特集:振動)

『季刊大林』では、建設という視点を通して、現代の社会における問題や現象を紐解いていきます。本号では「振動」をテーマとし、地震のみならず、生命というミクロなレベルで生じる振動とゆらぎや江戸期につくられた地震の間の紹介、振動の利用例など、あらゆる角度から「振動」を捉え、紹介しています。

大林組の技術陣による誌上構想「大林組プロジェクト」においては、都市を丸ごと地震に強い構造に変える「ゼリー免震」という新しい考え方を提案しています。

大林組では今後とも、建設にまつわる文化を考察する『季刊大林』の発行を社会貢献活動の一環と位置づけ、環境・情報・防災など現代社会において重要なテーマを積極的に取り上げていく予定です。

『季刊大林』と「大林組プロジェクト」について

『季刊大林』は、1978年6月発刊の創刊号「ピラミッド」から現在に至るまで、建設という視点を通して人類が築き上げた文明、文化を考証し、また未来社会のあり方を模索する広報誌をめざしてきました。
その間、国内外の数多くの研究者・専門家の方々にご参加いただき、他に例のない学術的広報誌として高い評価をいただくことができました。

『季刊大林』の大きな特徴となっているのは、社内で編成したプロジェクトチームが歴史的建造物の復元や検証、未来社会に寄与する建造物や街の構想などに挑戦し、そのプロセスと成果を誌上で発表する「大林組プロジェクト」です。例えば、「伝説となっていた巨大な古代出雲大社の復元」「アーカイヴズの原像・アレクサンドリア図書館の復元」「日本と大陸をつなぐ海底トンネル道路の建設構想」「火星への居住計画構想」などですが、これらは、建築文化への理解を深める格好の機会として、社会的にも話題となりました。

『季刊大林』 52号  「振動」 概要

無意識に脚部を揺すってしまう貧乏ゆすり、電車の揺れ、ブランコの往復運動、心臓の拍動など、揺るぎや振動の現象は私たちの日常の随所に出現しています。近年では、地球全体が一定の周期で振動していることも発見されています。

その一方で、地震という、私たちの日常生活を脅かす危険のある振動もあります。地震は振動のなかでも最大規模のものであり、このために耐震や免震など制御技術の発展が期待されています。しかし、未来技術に少し夢をふくらませてみると、地震の振動エネルギーを有効に利用するような可能性を見つけることができるかもしれません。

本号では、大林組プロジェクトとして、都市そのものを免震化するという新たな試みを発表するとともに、免震技術の歴史や振動の利用例など、あらゆる角度から「振動」を捉え、紹介します。

<主な内容>

  1. グラビア 「振動する世界へ」

    オーロラが奏でる音や鳥のはばたき、ろうそくの炎の揺らぎなど、私たちの身の回りには、多種多様な振動がある。日光東照宮境内本地堂(薬師堂)にある「鳴竜」も、天井と床の間で音が繰り返し反響するフラッターエコーという振動現象のひとつだ。意外なところで身近に存在する、振動の世界を紹介する。


  2. 「ニューヨークの振動、生命の律動」

    福岡伸一(青山学院大学理工学部化学・生命科学科教授)
    ベストセラーとなった著書『生物と無生物のあいだ』で、分子生物学の世界を一般に広めた福岡伸一氏。大学院を卒業後、博士研究員として過ごした“振動を放散する都市”ニューヨークについて、そして生命というミクロなレベルで生じる振動と揺らぎについて、福岡氏ならではの視点で振動を描写する。


  3. 「振動をめぐって ―フーコーの振り子から高性能免震・制振技術まで―」

    鈴木浩平(東京都立大学名誉教授、首都大学東京名誉教授、日本クレーン協会会長)
    車輌の揺れ、洗濯機の騒音、建物や橋の地震・津波対策など、あらゆる制振技術の発展は振動を知ることから始まる。長年にわたり機械工学の分野で振動と向き合ってきた鈴木浩平氏が、地球の自転を明らかにしたフーコーの振り子から、当社のスーパーアクティブ制震「ラピュタ2D」、兵庫県にある世界最大規模の震動破壊実験設備まで、さまざまな振動をめぐって考察する。


  4. 事例集 「振動を利用する」

    佐藤勇一(埼玉大学大学院理工学研究科教授)
    振動は大きくなると厄介もの扱いされることも多いが、その一方で私たちはよく振動を利用してもいる。例えば紙を揃えるときに机の上でトントンと叩く、あるいは固まった粉などをほぐすときに容器ごと振ったりする場合がそうだ。ここでは振動学の専門家である佐藤勇一氏がさまざまな振動の利用例を紹介する。


  5. 「日本建築の地震備えを考える ―地震の間と岡式免震装置を巡って―」

    西澤英和(関西大学環境都市工学部建築学科教授)
    地震大国の日本において、建築の分野ではどのような免震技術の歴史があったのだろうか。本稿では、19世紀初めに造営され、今も彦根城に残る「楽々園 地震の間」における古来の免震の技、そして、関東大震災後に独自の研究で考案された岡隆一氏の免震装置について取り上げる。日本建築の地震備えとはいかなるものであったのか、歴史的建造物の保存修復にも携わる西澤英和氏が紹介する。


  6. 大林組プロジェクト
    ◇ 「ゼリー免震」 都市構想 ―水都・大阪を免震都市モデルに―
    大林組プロジェクトチーム

    地震は、私たちのまわりにある振動のなかでも最大のものだ。とりわけ近代以降、都市の拡大が進むにつれ、巨大地震による被害は想像を超える規模に及んでいる。大林組プロジェクトチームは今回、未来へとつながる安全な都市のあり方を求めて、大阪を舞台にゼリー免震という、都市そのものを免震化する新しい試みに挑戦した。
    【大林組プロジェクトチーム】
    設計本部    建築設計 東井嘉信、水上栄
            構造設計 冨澤健、徳山純一郎
            設備設計 大石晶彦
    開発事業本部  開発計画 中善昭


  7. シリーズ 藤森照信の 『建築の原点』 (4) マーサー博物館

    藤森照信 (工学院大学教授、東京大学名誉教授、建築史家・建築家)
    建築史家にして斬新な設計者としても知られる藤森照信氏が、独自の視点で捉える建築の原点シリーズ。第4回は、アメリカ・ペンシルバニア州の「マーサー博物館」を紹介する。日本では、耐震構造におけるコンクリート重視の流れで発達してきた表現である打ち放しコンクリート。建築史の定説を覆す打ち放しコンクリート建築として、藤森氏を驚かせたこの博物館の魅力とは。

<仕様等>

  • 書名    季刊大林 52号「振動」

  • 仕様    B5判、4C、本文64頁

  • 発行・企画 株式会社大林組CSR室

  • ISSNコード 0389-3707

  • 発行日   2010年9月29日

大林組プロジェクト 「ゼリー免震」都市構想

都市全体の免震化を可能にする「ゼリー免震」

近年、建物の免震化技術は大いに進んできました。しかし都市には、建物のほかにも、生活に必須なインフラ設備など多様かつ複雑な構成要素があります。そうした都市を丸ごと、地震に強い構造に変えることはできないでしょうか。そんな壮大な想いから「ゼリー免震」は構想されました。

500m四方の敷地の外周に100mの切込みを入れることで、地盤の周期を人工的に伸ばすことが可能になります。外周と絶縁することで、敷地内に、ゼリー免震の名の通り、都市を上に乗せてゆっくり揺れる巨大なゼリーのような地盤が生まれるのです。

 ゼリー免震概念図

ゼリー免震概念図


「ゼリー免震」は既存の街に、新しい安心・安全を提供します

既存の街を水路で囲み「ゼリー免震化」するだけで、既存の街を大きく変化させることなく、巨大地震の際でも高度な安全を確保することができます。そして、囲まれた水路を延長させ、近郊の別のゼリー免震都市とネットワークすることで、被災時においてもさまざまな機能を享受し、通常時と同様の生活をすることが可能となります。
広大な水のネットワークは、物資輸送、避難経路としても利用でき、防災拠点として機能します。

ネットワークしたゼリー免震都市 鳥瞰図

ネットワークしたゼリー免震都市 鳥瞰図


「ゼリー免震」は都市環境の向上にも寄与します

日本の大都市に不足しているものといえば、誰もがまず「水辺と緑地」といった自然環境を指摘するでしょう。ゼリー免震では、深さ100mの切り込み部分には水を満たし、水圧によって周囲の土圧と均衡させます。このことは、都市に水路を軸とした広大な水のネットワークと豊かな水景を誕生させることになるのです。切込みを施工する際に、鉄道や道路、エネルギー関連施設などを地下化することにより、さらに豊かな自然環境を創出が可能となります。

今回のプロジェクトでは、大阪のメインストリートである御堂筋の未来像を描きました。

ゼリー免震・御堂筋計画 断面パース

ゼリー免震・御堂筋計画 断面パース


ゼリー免震の水路を利用した船入り

ゼリー免震の水路を利用した船入り

水を利用したアクティビティ豊かな水都の夜景

水を利用したアクティビティ豊かな水都の夜景

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 本社CSR室
お問い合わせフォーム

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。