「海水練り・海砂コンクリート」を応用して放射線遮蔽技術を開発

海水練り重量コンクリートで放射線をカット

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、既に開発済みの高水密な海水練り・海砂コンクリートに、ガンマ線遮蔽(しゃへい)性を付加した放射線遮蔽型のコンクリートを開発しました。

放射性物質を含む廃棄物の貯蔵施設や収納容器には、高い放射線遮蔽性と水密性が求められています。一般に、放射線を遮蔽するためには、重い金属板や重量骨材を用いてコンクリートの密度を高くすることが行われていますが、長期間にわたって放射性物質の拡散を抑制できる、より高い水密性も同時に満足する必要がありました。

今回開発した「放射線遮蔽型の海水練り・海砂コンクリート」は、2011年3月に発表した海水、海砂、高炉セメントを使用して高い水密性を実現した「海水練り・海砂コンクリート」に、従来は有効利用が難しいとされていた産業副産物を新たに重量骨材として再生活用し、さらに重量骨材の分離を防止する特殊混和材を添加したコンクリートです。高水密性を保持しながら、人体に最も影響があるとされるガンマ線に対して高い遮蔽性能が備わりました。

日本原子力研究開発機構(JAEA)高崎量子応用研究所のコバルト60照射装置を用いて、本コンクリートのガンマ線遮蔽効果を調査した結果、厚さ50cmのコンクリートでガンマ線を99.6%遮断できることを確認しました。厚さ20cmのコンクリートで比較すると、通常のコンクリートに比べてガンマ線透過量を半分とすることができます。

また、海水練り・海砂コンクリートの透水係数が、通常のコンクリートの70分の1であることから、高い水密性能と放射線遮蔽性能を兼ね備えた放射性物質貯蔵などに非常に有効なコンクリートとなりました。

「放射線遮蔽型の海水練り・海砂コンクリート」の概要は以下のとおりです。

  1. 使用材料
    練り混ぜ水:海水
    結合材:高炉セメント
    骨材:重量骨材
    混和材料:特殊混和材

  2. 性能
    透水係数:通常のコンクリート(真水、普通骨材使用)の70分の1
    ガンマ線遮断率(厚さ50cm):99.6%

大林組は、今回開発した放射線遮蔽型の海水練り・海砂コンクリートを、除染、原子力発電所の運転・廃炉に伴って発生した放射性廃棄物の保管施設・容器、低レベル放射性廃棄物(LLW)や高レベル放射性廃棄物(HLW)などの関連施設などへ提案していきます。

【試験結果】

ガンマ線遮蔽試験結果

※1 厚さ10cm、20cm、50cmにおけるガンマ線遮蔽率は、コバルト60照射装置による実測値(日本原子力研究開発機構(JAEA)高崎量子応用研究所)から算定した値、厚さ40cmにおけるガンマ線遮蔽率は、測定値から推定した値

※2 普通骨材を用いた海水練りコンクリートからの推定値

【コンクリートの厚さとガンマ線遮蔽率の関係】

コンクリートの厚さとガンマ線遮蔽率の関係

【実験状況】

ガンマ線照射実験状況(JAEA高崎量子応用研究所)

ガンマ線照射実験状況(JAEA高崎量子応用研究所)

 放射性物質貯蔵向けのコンクリートの断面

放射性物質貯蔵向けのコンクリートの断面

【参考】「海水練り・海砂コンクリート」の特長は次のとおりです。

  1. 高耐久、高強度、高品質

    特殊混和材の添加などにより、真水で練った普通コンクリートに比べ、一般コンクリート構造体の設計での基準となるコンクリート打設後の経過日数28日目の圧縮強度は、50%以上増加しました。また、自然暴露100年に相当する試験の結果、長期的強度低下も少なく、品質向上が図れました。さらに、一般に緻密性を表す指標となる透水係数が、透水試験の結果、真水で練った場合に対し、70分の1に低減し緻密性の向上を実現しました。

  2. 鉄筋コンクリート構造へも適用

    従来、海水や海砂は無筋コンクリートでは適用例はあるものの、鉄筋コンクリート構造では鉄筋の腐食の観点から使われていませんでした。鉄筋などの補強材が必要な構造物では、エポキシ樹脂塗装鉄筋、ステンレス鉄筋、炭素繊維補強筋、有機繊維など耐腐食性補強材を設計寿命に応じて適切に使用し、耐久性を確保します。これらの耐久性は、海水を練り混ぜ水とした供試体の促進腐食試験を実施することにより確認しています。

  3. CO2排出量とコストを低減

    本島から100kmの離島における擁壁工事(コンクリート打設量1,000m³)をモデルに試算した結果、真水と陸砂を本島より運搬して使用した場合(標準案)に比べて、CO2排出量で300kg/m³(40%)の低減が図れます。有筋コンクリートの場合には、エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いた場合で、上記と同様、300kg/m³(40%)の低減が図れます。なお、施工コストは、標準案に対し、無筋コンクリートでは10%の低減となり、補強材にエポキシ樹脂塗装鉄筋を用いた場合には、5%以上の低減が図れます。

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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