国内初、全周波数帯域に対応したトンネル発破音消音システムを開発

「ブラストサイレンサー」の消音範囲を可聴音へも拡張

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、既存技術である山岳トンネル工事の低周波発破音消音器「ブラストサイレンサー」の消音範囲を可聴音まで拡張した全周波数対応型トンネル発破音消音システムを、国内で初めて開発しました。

国内で施工しているトンネル730kmの半分以上の380kmは山岳トンネルであり、その6割に発破工法が用いられています(出典:一般社団法人日本トンネル技術協会 トンネル年報2014)。山岳トンネル工事は通常昼夜連続で施工し、一日に複数回発破を行います。発破音は周波数帯域が広く、非常に大きな騒音です。トンネル入口付近に民家が近接する場合はもちろん、トンネルから1km以上離れていても発破音に対する苦情が発生し、対策が必要となることがあります。

大林組は、低周波音向けの技術として、音響管の共鳴現象を利用した「ブラストサイレンサー」を既に開発し導入件数を増やしており、周辺環境に配慮した創意工夫が評価され平成25年度土木学会賞 技術開発賞を授賞しています。

このたび、吸音材式消音器を組み合わせ、「ブラストサイレンサー」を低周波音だけでなく、100Hz超の可聴音域も含めた全周波数帯域で大幅に低減できる総合的なトンネル発破音消音システムとして新開発しました。これにより従来、可聴音域の発破音対策として別途複数枚設置していた防音扉の設置数を減らすことが可能となります。

写真「ブラストサイレンサー」

掘削時

掘削時

発破時

発破時

新しいトンネル発破音消音システム「ブラストサイレンサー」の特長は以下のとおりです。

  1. 2種類の消音器を組み合わせて爆風を通過させながら消音する発破音消音システムです

    発破音のうち低周波音は、トンネル断面周囲の音響管式消音器を用いて逆位相の反射音を生じさせ打ち消すことで消音します。一方、ゲート中央部に設置し、車両通行用に人力で開閉自在な仕組みの吸音材式消音器は、通気性があり爆風を通過させながら、ダクト部の吸音材で100Hz超の可聴音を吸音します。
    従来は、コンクリートや砂を充てんした重い防音扉を設置していましたが、全断面をふさぐ仕組みのため爆風による激しい振動で隙間から音漏れが生じ、その厚みから期待される程の消音性能は得られませんでした。「ブラストサイレンサー」は、2種類の消音器の一体化によって全周波数帯域の発破騒音の抑制を可能にしています。さらに、重厚な防音扉と異なり、車輌通行用ゲートや送風管用の開口をふさがず、横引き用車輪付きで移設も容易です。

    図-1 音響管式消音器の概要(低周波音用の消音器)

    図-1 音響管式消音器の概要(低周波音用の消音器)

    図-2 吸音材式消音器の概要(100Hz超の可聴音用の消音器)

    図-2 吸音材式消音器の概要(100Hz超の可聴音用の消音器)


  2. 広帯域での大幅な低減効果を確認しています

    熊本3号湯浦トンネル新設工事現場(国土交通省九州地方整備局発注)で検証を行い、低周波域では音圧で15dB低減(エネルギーでは約90%削減、従来の防音扉の3倍以上の低減効果)、100Hz超の可聴音域では音圧で22dB低減(エネルギーでは約99%削減、従来の防音扉の約4分の1の設置面積で同等以上の低減効果)し、従来の防音扉を大幅に上回る低減効果を確認しています。
    「ブラストサイレンサー」1枚で従来の防音扉複数枚分の性能があることから、設置枚数の削減が可能です。


  3. ブロック構造で設置や繰り返しの転用が容易であり、コストを約20%削減できます

    音響管式消音器、吸音材式消音器共にあらかじめ工場で組み立てたブロックやパネルでパーツ構成をしているため、従来の防音扉に比べ短期間で現場に設置・解体することができ、施工性に優れています。また、2つの消音器を転用しやすい形状に設計しており、断面積が異なる他のトンネル現場に繰り返し利用することができます。
    従来の防音扉を用いた技術に比べて、設置枚数の削減効果で約20%のコスト削減が可能になりました。

大林組は、「ブラストサイレンサー」を発破掘削の山岳トンネル現場へ積極的に提案し、周辺環境に与える負荷のさらなる低減に貢献していきます。

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
お問い合わせフォーム

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。