株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、山岳トンネルの切羽前方150mを高速で削孔し、かつ地質を短時間で予測できる「高速ノンコア削孔(※1)切羽前方探査システム」を開発しました。
山岳トンネル工事では、安全と工程を確保するために、地質探査により地質不良部の存在を事前に把握し、適切な対策を講じる必要があります。大林組では、前方探査距離30~50mの地質を高い精度で予測するノンコア削孔探査技術「トンネルナビ®」を開発し、既に各地のトンネル工事で導入しています。
さらに、土被りが大きく前方に帯水層が予想される場合は、高水圧の突発湧水を防ぐため、別途前方約150mの削孔を行い、事前に水抜きをして水圧を下げる作業を行っています。これまでは、油圧ハンマー式の長距離ボーリングマシンにて削孔作業を行っておりましたが、油圧ハンマー式は長距離になるほど削孔能力が落ち、時間がかかることが課題でした。
本システムは、専用ボーリングマシンに水圧ハンマーを用いることで、これまでトンネルナビと油圧式長距離ボーリングマシンそれぞれで行っていた地質調査およびボーリング削孔を、一台で兼用できるようにしたものです。水圧ハンマーは長距離でも削孔能力が衰えないため、短時間で長距離ボーリングを削孔でき、かつ、削孔データから地質状況を予測できます。
水抜きボーリングが必要となる帯水区間を掘削する場合、水抜きボーリングと地質調査に伴う掘削停止期間の短縮により、約10%の工期短縮が見込めます。また、150mの長距離削孔に係る費用は油圧ハンマー式と同程度であり、加えて別途実施していた地質調査費用の削減が見込めます。
本システムの特長は以下のとおりです。
- 長距離のボーリングを高速に削孔できます
従来の油圧ハンマーの場合、ロッドの根元にあるドリフタ部分で打撃を行うため、長距離になると削孔能力が落ちることが課題でした。しかし、水圧式ハンマーは、ロッド先端のピストンを水圧で振動させて打撃を行うため、長距離でも削孔能力が低下しません。さらに、専用ボーリングマシンでは、通常よりも長いロッドを使用することで、ロッドの継ぎ足しにかかる作業時間を低減し、150mの長距離削孔を従来の4分の1となる8時間程度で行うことを可能にしました。
- 信頼性の高い地質予測が可能です
水圧ハンマー打撃性能試験を行い、地山条件と打撃性能の関係を把握することによって、エネルギー指標値(送水圧×単位削孔長当たりの打撃数)から地山評価が可能になることを確認しました。
- トンネルナビの豊富な実績データを活用できます
トンネルナビの探査距離は、すでに累積2万4000mを超え、豊富な実績データを保有しています。今回開発した高速ノンコア削孔切羽前方探査システムに、トンネルナビの実績データを活用することにより、地山評価の精度をさらに向上させることができます。
京都府道路公社発注の鳥取豊岡宮津自動車道 野田川大宮道路第14トンネルにおいて、本工法による前方探査を実施しました。地山は亀裂が多く脆弱な区間を含む花こう岩帯であり、今回のノンコア削孔により100m先までの脆弱部を事前に把握するとともに、毎分1m³超の湧水を抜くことであらかじめ地下水位を下げました。その結果、トンネル掘削時には地山に適合した支保工で補強を行い、かつ湧水のない安定した状態で施工することができました。
大林組は、大土被りで長大な山岳トンネルの施工の安全確保と工程短縮のため、高速ノンコア削孔システムを積極的に提案・展開していきます。
- ※1 ノンコア削孔
「ノンコアボーリング」、岩石コアを採取しないボーリング
以上
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大林組 CSR室広報部広報第一課
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