土砂の積み込み作業を自動化するバックホウ自律運転システムを開発しました

熟練技能者のノウハウとそれを再現する高精度制御により高い生産性と安全性を確保

プレスリリース

株式会社大林組
日本電気株式会社
大裕株式会社
 

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治、以下大林組)、日本電気株式会社(本社:東京都港区、社長:新野隆、以下NEC)、大裕株式会社(本社:大阪府寝屋川市、社長:飯田浩二、以下大裕)は、建設機械の自律化第一弾として、土砂の積み込み作業を自動化するバックホウ自律運転システムを共同開発しました。

建設業では、技能労働者の高齢化や若手就業者の減少による労働力不足が喫緊の課題となっており、省人化による生産性の向上が急務となっています。そのため、建設重機を用いた施工の自動化、とりわけ熟練技能者による重機操作を再現するための技術開発には大きな期待が寄せられています。

今回、大林組、NEC、大裕の3社は、各社の保有する技術とノウハウを活用するため、汎用建設機械を自律化して生産性を飛躍的に向上させる技術の共同開発に着手し、その第一弾としてバックホウの自律運転システムを開発しました。

システム構成図

バックホウ自律運転システムは、地盤の造成やトンネル掘削といった土木工事や大規模建築物の地下掘削などにおいて膨大な作業量となる土砂の積み込み作業を自動で行います。土砂の積み込み作業は、バックホウのアームやブーム、バケットを巧みに操る熟練技能が必要で自律化が困難でした。

そこで、バックホウに大林組と大裕が共同で開発した汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を装着したうえで、対象土砂やダンプトラックの状況に応じた動作計画を大林組のノウハウをもとに作成し、刻々と変動するバックホウの動特性(※1)や応答遅延による影響を加味した制御を行うためNECの「適応予測制御技術(※2)」を適用しました。加えて、熟練技能者による操縦のノウハウとAI技術も活用することで、掘削や積み込み時の機械の動き方を高精度に再現することができます。

本システムは、2019年12月に大林組の土木工事現場に適用する予定です。

実証実験の様子
   

バックホウ自律運転システムの特長は以下のとおりです。    

正確・安全で高い生産性を実現

バックホウ自律運転システムは、掘削範囲における盛土の状況を3Dスキャナにて確認することで、一回に積み込む土砂の量が最大になるポイントを判断し掘削、さらに待機しているダンプトラックへ旋回しベッセル内のカメラで確認しながら積み込みを繰り返し行います。作業の高精度化のために、一連の作業におけるバックホウの最適な動作計画を作成し、バックホウ特有の動特性を加味するためNECが開発した適応予測制御技術を活用して制御しています。

加えて、熟練技能者の大量の作業データを分析することで効率的な動作を数値化し、これを土砂の状況や作業ごとに異なるバックホウやダンプトラックの配置に応じて補正することにより、熟練技能者の動きを模した高い生産性を実現しています。

また、積み込んだ土砂がダンプトラックの規定重量に達した時は、作業を停止し次のダンプトラックが入って来るまで待機するため、周辺には一切作業員が立ち入る必要がありません。万が一、作業員が立ち入ったとしても、大林組が開発した「クアトロアイズ」を搭載するなど、今まで培ってきたフェイルセーフ対策によって接触を防止するといった安全性を確保しています。

掘削位置のセンシング

バックホウのメーカーや機種を選ばず後付けで容易に自律化

バックホウの制御は、電気信号などで直接制御するのでなく、大林組と大裕が共同で開発した汎用遠隔操縦装置サロゲートを介して行います。サロゲートは、操作レバー部に装着するアタッチメントで、メーカーや機種を問わず対応が可能なため、バックホウ自律運転システムも装着機種を選ばず、市販のバックホウに後付けで装着できます。また、自動運転とオペレータによる遠隔操縦の切り替えが容易にできるため、自律運転中に発生した突発的な事象や、自律運転では難しい複雑な作業が必要になった場合など、迅速で臨機応変な対応が可能です。

大幅な省人化を可能にする統合制御システム

バックホウ自律運転システムは、作業エリアや建設機械の姿勢・位置を認識するためのさまざまなセンサを、作業エリアやバックホウなどを認識しやすい場所に多数配置し、それらを通信ネットワークで統合して制御する「ネットワークドコントロールシステム(※3)」によって管理しています。そのため、搭乗視点のみならず俯瞰的な視点も加えることができ、これらの豊富な情報を管理者が遠隔で確認しながら管理することが可能です。今後、次世代通信技術「5G」を活用することで、より高速・大容量・低遅延な通信が可能となり、一人の監視者によって複数種類の建設機械を同時に自律化させることで、さらなる生産性向上と省人化が可能です。

今後大林組は、少ない技能者でも高い生産性と安全性を実現できる次世代型の建設生産システムの構築を進め、将来的にはこれらのシステムの外販を通じて建設業が抱える熟練技能者不足の課題解決をめざします。

NECは、今回の開発の成果を活用して建設現場で活用できるソリューションの開発を進め、建設作業の効率化と安全性の向上に貢献していきます。また、NECはネットワークを柔軟に活用し、人・モノに必要なデータを賢くつなぐ「NEC Smart Connectivity」の提供を加速し、新たな社会価値を創造していきます。

大裕は、あらゆる建機の遠隔・自律操縦を身近なものにすることをめざし、サロゲートの開発と普及、そのオペレータ育成事業を推進します。

東日本ロボティクスセンターで行ったバックホウ自律運転システムのデモの様子を動画でご覧いただけます

  • ※1 動特性
    入力(バックホウではレバー操作)が時間的に変化する場合の出力(バックホウではアームの動き)の特性。バックホウの場合、作業内容によってレバー操作とそれに伴うアームの動き方が大きく異なる
  • ※2 適応予測制御技術
    制御対象の動特性の変化に適応する「適応制御」と制御対象の動きを予測することで応答遅延に対応する「予測制御」を融合したNEC独自の制御技術
  • ※3 ネットワークドコントロールシステム
    制御システムの一形態。通信ネットワークで制御に必要なセンサデータを収集し、通信ネットワーク経由で対象を制御するシステム

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報第一課
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プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。