コンクリート橋の床版を取り替える「キャップスラブ™」工法を開発・施工

プレキャスト床版を用いて従来の3倍のスピードで床版の更新を実現します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)はプレキャスト床版を用いてコンクリート橋の床版を取り替える「キャップスラブ」工法を開発しました。このたび、中日本高速道路発注の中央自動車道・上田川橋(下り線)の床版取り替え工事において本工法を採用し、無事に施工を完了しました。

上田川橋におけるキャップスラブの架設状況

近年、高速道路の老朽化対策として全国でリニューアル工事が進められています。高速道路のリニューアル工事において、車両の荷重を直接支える床版を取り替えるには車両の通行を規制する必要があることから、交通規制期間の短縮を可能にする工法の開発が求められています。これまで、コンクリート橋のうち、プレストレストコンクリート構造の主桁と床版を一体化させたPC合成桁の床版を更新するためには、建設現場での作業が多くなることから、長期間の交通規制が必要でした。

キャップスラブは主桁を覆う特殊な形状のプレキャスト床版です。ずれ止め用のアンカー鉄筋を既設の床版を撤去した後の主桁上に施工し、プレキャスト床版を設置した後に床版と主桁の隙間をモルタルで充てんするだけで、床版と主桁を一体化させます。このため、建設現場での作業を最小限にすることが可能となり、施工スピードが大幅に向上しました。

キャップスラブを用いたPC合成桁の床版取り替え工事の施工手順

キャップスラブ工法の特長は以下のとおりです。

工期を短縮できます

従来工法では、既設の主桁から突出している鉄筋を再利用するため、ウォータージェット工法(※1)でコンクリートのみを除去し、狭あいな空間で支保工を組み立て、型枠工・鉄筋工の後にコンクリートを打ち込むといった建設現場での作業に長期間を要することが課題でした。本工法では主桁からの突出鉄筋をすべて切断撤去するため、短期間で既設床版を撤去できます。さらに、プレキャスト部材による架設工法を採用し、スピーディーに床版を構築できるため、従来の工法に比べて3倍の施工スピードで床版取り替え工事が完了します。

経済性が向上します

海外ではPC合成桁にプレキャスト床版が採用されていますが、その工法で採用されているプレキャスト床版はフラットな形状です。国内のPC合成桁の床版に適用する場合、強度を高めるために主桁との接合部を厚くしなければならないため、路面の高さが上がります。それに伴い、工事対象箇所の前後の舗装をかさ上げして段差を解消する、すり付け工事が必要になるため、これまで国内では採用されていませんでした。今回開発したキャップスラブは、キャップのような形状のプレキャスト床版の下面を主桁の上面を覆うように設置することで、床版の厚さを抑えます。路面のすり付け工事が不要となったことで、プレキャスト床版による経済的な取り替え工事を可能としました。

プレキャスト床版形状の比較 (左)海外の場合、(右)キャップスラブ

品質と耐久性が向上します

管理された工場で製作するプレキャスト部材であるため、品質が安定することに加え、コンクリートにとって理想的な養生を施せるため、より緻密な床版の提供が可能です。さらに、工場製品ではプレテンション方式(※2)で容易にプレストレストコンクリート構造とすることができるため、床版の疲労耐久性も高めることができます。

大林組は、今回開発したキャップスラブをPC合成桁の床版取り替え工事に積極的に採用することで、高速道路のリニューアル工事に伴う交通規制期間や回数を減らすとともに、交通インフラの長寿命化に貢献していきます。

  • ※1 ウォータージェット工法
    ノズルから超高圧の水を噴射しコンクリートを削り取り、鉄筋に損傷を与えずにコンクリートを除去できる特長をもつ工法
  • ※2 プレテンション方式
    設備のあるPC工場で採用が可能なもので、PC鋼材をあらかじめ所定の力・位置に緊張しておき、これにコンクリートを打ち込み、硬化した後に緊張力を解放してプレストレスを与える方式

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報第一課
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