日本初、地熱発電および水素製造実証プラントの建設に着手

地熱発電電力を利用したCO2フリー水素を活用する社会の実現をめざす

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、大分県玖珠郡九重町において、地熱発電実証プラントの建設に着手します。敷地内に地熱発電電力を活用した水素製造実証プラントを併設し、地熱発電電力を利用して得られるCO2フリー水素をさまざまな需要先へ供給するまでの一連のプロセスを実証する日本初の試みです。なお、本実証は大分地熱開発株式会社(本社:大分県大分市、社長:中野勝志)の協力を得て進めます。

大林組はこれまで、太陽光・バイオマス・風力など、再生可能エネルギーの利用を拡大する取り組みを続けてきました。再生可能エネルギーの一つである地熱発電は、安定的な供給が可能な優れたエネルギー源です。しかし、発電可能な場所が山間部に位置しているため送電網の容量が不十分であることや、開発期間が長いため固定価格買取制度(FIT)(※1)を適用するための商用電力系統の容量が、開発期間が短い他の再生可能エネルギーによって先に埋まってしまい送電線への接続が困難になるといった課題があることから、事業化が遅れています。

また、水素は、利用時にCO2を排出しないうえに大容量の貯蔵が可能であるといった特長があります。特に再生可能エネルギーを利用して水を電気分解する方法で製造するCO2フリー水素は環境負荷の低減やエネルギー自給率の改善に大きく貢献します。

そこで大林組は、地熱発電の開発と同時にCO2フリー水素の活用を促進することをめざし、大分県において地熱発電電力で製造した水素を工場などへ陸送するスキームを実証することとしました。大林組はこれまでにも、地熱発電が盛んなニュージーランドにおいて、地熱発電電力によるCO2フリー水素のサプライチェーン構築のための社会実装研究に取り組んでいます。今回の実証は、そこでの知見も活かし、国内における地熱発電の候補地の選定から調査、発電所の建設、発電電力による水素の製造と供給に至るまでの一連の事業化プロセスを検討するものです。

実証では、バイナリー発電機(※2)を利用した地熱発電実証プラントの設計、建設および性能検証を行います。加えて、地熱発電電力を利用する水素製造実証プラントには、大林組が開発した複数の運転モード(※3)を備えたプラント向けエネルギーマネージメントシステム(EMS)を利用し、水素製造を最適に行うための検証を行います。さらにEMSには、水素搬送車両に装着したGPS端末から搬送状況を把握し、車両の発着スケジュールに合わせてプラントを起動停止させることなく効率よく連続運転できるよう制御する機能を加えます。地熱発電および水素製造実証プラントの稼働開始は2021年7月を予定しています。

実証プラントで製造したCO2フリー水素は、地元の工場に搬送して燃料電池フォークリフトの燃料として利用するなど、地域のエネルギー資源として有効に活用します。また、研究パートナーを広く募り、本実証で生み出される地熱発電電力やCO2フリー水素のさまざまな活用方法を検討することで、地域住民をはじめとした多くの方々に再生エネルギーの利用や水素社会の到来を身近に体感してもらえるよう取り組んでいきます。

大林組は今後も、再生可能エネルギーによるCO2フリー水素の製造、輸送、貯蔵および供給のサプライチェーン全体に取り組むことで、環境や社会の課題解決に向けた活動を進めてまいります。

地熱発電を利用した電力供給のイメージ

概要

実証場所 大分県玖珠郡九重町
地熱発電 出力 250kW(実証は125kWで運用)
水素製造量 10Nm³/h(燃費14.8km/Nm³、年間走行距離10,000kmとして燃料電池車約20台分)
  • ※1 固定価格買取制度(FIT)
    再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定める価格で一定期間、電気事業者が買い取ることを義務付ける制度
  • ※2 バイナリー発電機
    沸点の低い媒体を加熱・蒸発させてその蒸気でタービンを回す装置。蒸気が比較的、低温あるいは低圧の地熱においても多くの発電量を得ることができる
  • ※3 複数の運転モード
    以下3種類からなる。
    水素最大製造モード:年間水素製造量が最も多くなる運転モード(水素製造装置を負荷率および稼働率ともに100%で運転するモード)
    水素製造単価最安モード:水素の製造単価が最も安くなる運転モード(周辺機器を含めた水素製造装置の効率が最大となる運転点で運転するモード)
    グリーン電力優先モード:水素製造のための電力のうち地熱発電電力の割合が高くなる運転モード(できるだけ周辺機器動力+水素製造電力=地熱発電電力となるよう運転することで、系統電力からの買電電力を極力少なくする運転モード)

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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