山岳トンネル工事で鋼製支保工のひずみをワイヤレスで計測する「ハカルーター®」を開発
ひずみをリアルタイムに監視することで安全な作業環境を確保
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プレスリリース
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、山岳トンネル工事において、鋼製支保工のひずみをワイヤレスで計測するシステム「ハカルーター®」を開発しました。
山岳トンネル工事では、軟弱な地山をアーチ状の鋼製支保工と吹付けコンクリートで支えますが、鋼製支保工の形状や設置間隔は、切羽(岩盤掘削面)の状態を目視し決定します。そのため、地山に適合せず大きなひずみが発生する場合もあることから、鋼製支保工のひずみを計測し、応力(※1)の測定を行うことで地山との適合性を確認しています。
しかし、鋼製支保工のひずみ計測は、切羽直近で配線作業を行うため、岩石の落下などのリスクを伴う点が課題でした。さらに、従来の目視や有線の計測システムではひずみの増大をリアルタイムで検知できないため、作業員への警告が遅れることがありました。
今回大林組は、安全な作業環境を確保するため、ひずみの計測データを無線で送信し、リアルタイムで監視する「ハカルーター」を開発しました。配線作業が不要なため、切羽への接近を排除でき、かつ落石の危険を察知した際には、迅速に作業員を退避させることができます。
「ハカルーター」は、計測データの「送受信機」、受信データを表示する「計測用タブレットPC」、規定値を超えた場合に警報を発する「警告灯」で構成されています。
「ハカルーター」の特長は以下のとおりです。
切羽付近での配線作業が不要
送信機は場外で鋼製支保工に取り付けることができ、ひずみゲージで計測したデータは無線で送信します。そのため、切羽でのケーブルの配線や防護作業が不要となり、配線作業時の落石による危険性が排除できます。また、場外で設置が完了するため、鋼製支保工を建て込んだ直後からひずみを計測できます。加えて、送信機と受信機の距離を最大50mまで離せるので、計測値を安全に確認できます。
リアルタイムでひずみを監視
軟弱な地山を掘削する時など、突発的な鋼製支保工の崩壊が懸念される場合は、「ハカルーター」を一定の間隔で連続して設置することで、支保工の挙動をリアルタイムで監視できます。複数台の計測データは一台の計測用タブレットPCで一元管理され、ひずみまたは応力が規定値を超えた場合は、警告灯からの音と光で作業員に危険を知らせます。また、鋼製支保工の変形の収束に要する約1ヵ月間、バッテリーの交換をせず継続して計測できます。
発破や湧水に対する高い耐久性
鋼製の防護材で送信機を覆うことにより、発破による爆風や振動、坑内湧水に対して高い耐久性があります。
従来手法より安価
配線が不要なため、送信機の設置を場外で行うことができます。そのため、場内で行っていた配線作業が不要となり、作業時間を短縮できます。また、送信機は繰り返し使用可能で、従来よりもひずみの計測に要する費用が2割程度削減できます。
支保工の適合性を早期に判断
過去の計測事例から将来的に発生する応力を予測し、管理基準値と比較することで、支保工の適合性を早期に判断します。早い段階で支保工の適合性が判断できれば、鋼製支保工の変形が発生する前に対策を取ることができます。
今回開発した「ハカルーター」は、大林組が山岳トンネル工事の生産性向上を目的に開発に取り組む統合システム「OTISM ®(Obayashi Tunnel Integrated SysteM)」(※2)において、「データドリブン」により迅速かつ合理的な意思決定を可能にするモジュール「OTISM / MONITORING TM(オーティズム/モニタリング)」(※3)の構成技術です。トンネルの掘削において、調査や計測で取得したデータを統合・可視化し、分析・評価を行い、データドリブンによる迅速かつ合理的な意思決定を実現します。
大林組は、「ハカルーター」を積極的に現場適用し、切羽の崩落災害の防止に努めるとともに、支保工の適合性を速やかに判断し、工期短縮につなげます。また、「OTISM/MONITORING」のすべての作業分野の技術開発を加速し、それらの技術を組み合わせて現場に適用することで、建設業界の安全性と生産性の向上に貢献します。
- ※1 応力
鋼材などの物体に単位面積当たりに作用する力。ひずみに物体固有の係数を乗ずると応力が計算される。物体の応力が一定の値よりも大きくなると、物体がつぶれ、破断に至る - ※2 OTISM(Obayashi Tunnel Integrated System)
山岳トンネル施工における掘削作業の安全・生産性向上、および覆工作業の品質向上・省人化、施工管理の意思決定の迅速化を図り、全体の生産性を向上させる一連のシステム - ※2 OTISM/MONITORING
OTISMのうち、データドリブンによる施工管理における迅速かつ合理的な意思決定につなげる一連のシステム。「調査・計測」、「品質・出来形」、「データの統合・可視化」、「分析・解析」、「評価・判断」の5つの作業分野で構成
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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