2022年度グッドデザイン賞を受賞しました

サステナビリティ

日本デザイン振興会が主催する「2022年度グッドデザイン賞」において、大林組が手がけたウェスティン都ホテル京都 数寄屋風別館「佳水園」の改修がグッドデザイン・ベスト100を受賞、Port Plus 大林組横浜研修所神戸三宮阪急ビル市原ゴルフクラブ市原コースクラブハウスの3件がグッドデザイン賞を受賞しました。

グッドデザイン賞は、1957年に創設された日本で唯一の総合的なデザイン賞です。複雑化する社会において、課題の解決や新たなテーマの発見にデザインへの期待がますます高まっています。そうした時代にあってグッドデザイン賞は、製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、かたちのあるなしにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインと捉え、評価・顕彰しています。

佳水園の改修 【グッドデザイン・ベスト100】

(撮影:プライズ 山崎浩治)

ウェスティン都ホテル京都の数寄屋風別館である佳水園は、幾重もの薄い屋根が印象的な建築家・村野藤吾設計による数寄屋建築の傑作です。築60年を経て老朽化の進みも激しかったため、耐震改修と合わせてリニューアルを行いました。文化的評価が定まらない戦後の名建築が取り壊されつつある中、特に木造建築の更新は難しいとされていますが、佳水園は未来につながる改修を実現しました。

<審査委員の評価>
戦後の名作建築が、現代そして未来へ、最高の形で引き継がれた。当時の復元という側面においては、建物の外観や庭を完全な形で補修・復元したのに止まらず、室内から見える眺望を建設当時の状態に戻すために、視界をふさいでいた別の建物の上層部を解体撤去したという。客室に関しては耐震補強や現代の宿として利用しやすくするため、大幅に手を入れている。オリジナルをそのまま残さない・残せない時に、設計者のとりうる態度はさまざまあるが、ここでは村野藤吾の設計の考え・手つきを読み解きながら、村野ならどう設計するかを常に問いながら設計が進められた。

ここで実現されている状況は、保存した建物の中に単純に新しい内装を施したものとは、一線を画する。ほとんど全て新しいものに置き換わっているにもかかわらず、まるで最初からこの状態だったかのような自然さが漂っているのだ。事業者の高い志、施工者の高い技術、そして設計者の審美眼と卓越した設計力に敬意を表したい。そして、こうした建築を保存・再生・再利用する機運が、より一層高まることを期待したい。

Port Plus 大林組横浜研修所

(撮影:エスエス 走出直道)

日本初となる高層純木造耐火建築物です。森林を循環させるために木材利用が強く求められる一方で、戸建住宅の着工数が減少する中、建築の可能性を示しました。木造・木質空間を活かしながらIoT諸技術と融合することで、日常に自然を取り入れるバイオフィリックデザインを徹底しています。研修所の利用者の健康増進と、人・物・環境への気付きを提供する場としてデザインしました。

<審査委員の評価>
脱炭素が明確な社会課題として広く認識されるに至り、これまで動きが鈍重であった建築の領域においても、2030年さらには2050年という節目に向かってのさまざまな動きが見え始めている。この中の一つの動きが、建築自体に炭素を固定化することをめざして、都市の大型建築を木造化・木質化する試みである。このプロジェクトは、現時点の国内事例で最高クラスの高さを実現したものであり、木質高層建築のプロトタイプのデザインとして評価された。

神戸三宮阪急ビル

(撮影:伸和 木原慎二)

阪急神戸三宮駅に隣接する駅ビルの建て替えと、駅コンコース、高架下店舗リニューアルを含む再開発です。新駅ビルは、駅と商業施設、オフィス、ホテルなどの複合施設であり、街に開かれた計画として駅周辺へにぎわいのにじみ出しを図り、地域の活性化に貢献しています。最新技術を駆使した超高層建築に、街の記憶を継承する基壇部と調和したファサードデザインを展開し、一体感のあるランドマークを実現しました。

<審査委員の評価>
駅という場所はそのエリアに関わりのある市民にとってはもちろんのこと、旅行者にとっても記憶に残る特別な場所であり街を象徴する存在でもある。震災前に市民に親しまれてきた旧神戸阪急ビルのフォルムと装飾を残した低層部と、オフィス・ホテル等の機能による高層部。それらは異なるフォルムでありながらも、素材感や陰影といった表現によりうまく調和が図られている。にぎわいが街ににじみ出す飲食店街と共に一体的な街なみ形成を実現し、街のランドマークとして長期にわたり愛される場所として俯瞰的な視点で複合的にデザインされている点が評価された。

市原ゴルフクラブ市原コースクラブハウス

(撮影:エスエス 走出直道)

1973年のオープン以降、増改築を繰り返してきたクラブハウスを建て替えました。山頂を切り崩して造成した場所にあるため、かつて存在した山の稜線をなぞるように1枚の大屋根をデザインしました。土地に馴染ませた大屋根は、独創的でありながら、昔からあるようで親しみやすい印象を与えます。どの最終ホールから見ても、プレーヤーの印象に残る風景を創造しました。

<審査委員の評価>
これまでのゴルフ場クラブハウスとは一線を画すデザインが目を引く。ゴルフ場といえばバブル期の開発が思い出されるが、それは山を切り開き、環境破壊の象徴ではなかったか。このクラブハウスは環境を修景しているかのような柔らかいシルエットを持っている。インテリアも洗練されているが、嫌味なく色々な客層に対してのデザインがなされ、とてもさわやかだ。これらを実現するためには、複雑な法規制や構造的な工夫をハイレベルで統合するデザイン力があってこそである。設計者の時代を反映するかのような高いデザイン力の賜物である。

大林組は建設を通じて、デザインにできること・デザインが活かされる領域を広げ、一人ひとりが豊かに創造的に生きられる社会づくりに貢献していきます。