AEM型水電解水素製造装置の性能比較実証を開始

次世代水電解技術によるグリーン水素製造装置の社会実装に向けて

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、大林組技術研究所(東京都清瀬市)に、高価なレアメタルを触媒に使用しないAEM型水電解水素製造装置(※1)を新たに設置し、水素製造効率や耐久性など、既存のPEM型水電解水素製造装置(※2)と性能を比較する実証を開始しました。

背景

水電解水素製造装置は現在、アルカリ型(※3)およびPEM型が商用段階にあります。一方で、経済産業省が水素基本戦略に掲げているように、2050年カーボンニュートラル実現に向け、AEM型などの次世代水電解技術の開発を継続し、それぞれの性能を十分に発揮できる分野での社会実装を進めていくことが求められています。

大林組は、2018年より技術研究所において、施設内の太陽光発電で得られた再エネ電力から、PEM型水電解水素製造装置を用いてグリーン水素を製造し、純水素型燃料電池に供給することで、所内の電力需要に応じて電力を供給するシステムを構築しており、グリーン水素の製造、利活用を実現する環境が整備されています。

今般、自社施設で水電解水素製造装置の性能比較実証を開始することで、さまざまなニーズに適したシステムの構築や運転管理などの知見獲得を進めます。

実証概要

AEM型水電解水素製造装置は、アルカリ型の弱点である生成水素の純度、安全性、入力電力負荷および間欠運転の制限を克服できるうえ、水素製造のシステムがシンプルで、メンテナンスが容易です。また、PEM型と比較した場合でも、触媒に用いられるレアメタルが不要なため導入コストの削減が図れ、同等以上の性能を発揮することが期待されています。

今回の実証では、技術研究所の水素製造フローにAEM型とPEM型の水電解水素製造装置を配置し稼働することで、改めて水素製造効率や水素製造にかかる運用コストなどの性能比較を行い、AEM型の優位性を確認します。そして、AEM型を使用した水素製造システムを構築した際に、想定されるニーズに対する有効性を評価するため、装置の耐久性検証や運用時における課題抽出などを行います。

アルカリ型
PEM型
AEM型
水素製造効率

大型はPEM型と同等

小型はアルカリ型より高効率

他方式より高効率
品質

低出力運転時に水素ガスと酸素ガスが混合する場合がある

低出力運転でも水素と酸素が混合しない

PEM型と同様
安全性

アルカリ溶液(25~30%KOH)を使用し材料腐食の恐れがある

薬品使用がなく、材料腐食の恐れがない

1%KOH水溶液使用
弱アルカリ環境なので腐食の恐れがない
保守管理
×

メンテナンスが複雑

メンテナンスが容易

メンテナンスが容易
導入コスト

大型のものはPEM型より廉価

大型のものはアルカリ型より高額

アルカリ型、PEM型より廉価
水電解水素製造装置の比較
AEM型水電解水素製造装置 水素製造フロー図
  • AEM型水電解水素製造装置 (左)外観・(右)内観
  • (左)PEM型水電解水素製造装置・(右)AEM型水電解水素製造装置

今後の展望

大林組は、水素をエネルギーとして利活用するため「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」というサプライチェーンの構築をめざしています。本実証を通じて得られた知見やノウハウをお客様のニーズに適した各種水電解水素製造装置の導入支援に活かし、グリーン水素の普及を推進することで、脱炭素社会実現に貢献していきます。

  • ※1 AEM型水電解水素製造装置
    アニオン交換膜(正極と負極間で水酸化物イオン(OH-))をやり取りするためのイオン交換膜)を用いた水素製造装置
  • ※2 PEM型水電解水素製造装置
    プロトン交換膜(正極と負極間でプロトン(H+)をやり取りするためのイオン交換膜)を用いた水素製造装置
  • ※3 アルカリ型水電解水素製造装置
    アルカリ溶液と電力で水素・酸素を製造する水素製造装置

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報課
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