超速硬型UHPFRCで国内最大の製造能力を持つ車載型専用プラントを導入し、 既存橋梁のコンクリート床版増厚工事を実施
1車線規制帯内での高速施工を実現
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技術・ソリューション
大林組、大林道路、UBE三菱セメントの3社共同で開発した超速硬型UHPFRC(※1)「スティフクリート®」が、北陸自動車道(特定更新等)杉崎第1橋床版増厚工事に採用され、2024年5月25日から7月11日にかけて施工しました。本工事では、新たに、超速硬型UHPFRCで国内最大の製造能力を持つ車載型専用プラント(※2)を導入したことにより、1車線規制での高速施工を実現しました。
スティフクリートを採用した高速道路の床版増厚工事は、2021年の現場初適用以降(※3)、本工事含め4件の採用実績となりました。
超速硬型UHPFRC「スティフクリート」の概要
昨今、社会インフラの老朽化が社会問題となっており、2030年には国内の道路橋の約55%が建設から50年を経過することから、リニューアルが急務となっています。大林組は、老朽化した橋梁のコンクリート床版を補強する材料として、2021年に超速硬型UHPFRC「スティフクリート」を開発し、高速道路のリニューアル工事において、長期耐久性の向上を実現してきました。
スティフクリートは、常温硬化型UFC「スリムクリート®」(※4)の特長を活かした超速硬型UHPFRCで、薄層補強が可能となり、長期耐久性にも優れた材料です。また、打設後わずか3時間で交通開放に必要な強度(24N/mm²以上)を発現するため、速やかな交通開放が可能です。さらに、現場条件に合わせて配合を微調整できるため、外気温や橋梁勾配にかかわらず、品質や出来形を確実に確保できます。
本工事の施工概要
本工事は、供用開始から約48年経過した橋梁の床版増厚工事であり、上下線を合わせた施工面積は約600m²です。既設床版上面の表層や劣化部を撤去した後、スティフクリートによる上面増厚を施工しました。
本工事で使用するスティフクリートは、新たに開発した車載型専用プラントを導入し、1車線の規制帯内に設置、製造しました。本プラントは、練り混ぜ容量1m³のミキサー2台と排出コンベアから構成され、トラックの荷台に積載しています。2台のミキサーによりスティフクリートを交互に製造し、さらに排出コンベアによりミキサーからキャリアダンプまで運ぶことで、連続製造・連続打設を可能にしました。また、車載型であることから、プラント設置や搬出にも時間を要しませんでした。
スティフクリートの運搬、敷きならしには、従来から使用している専用の「キャリアダンプ」と「フィニッシャ」を使用しました。
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新開発の車載型専用プラント
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専用キャリアダンプでの運搬状況
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専用フィニッシャによる敷きならし状況
車載型専用プラント導入による効果
本工事において、新開発の車載型専用プラントを使うことで、1時間当たり3.0m³のスティフクリートを製造して打設できることを確認しました。これは、超速硬型UHPFRC専用の車載型プラントとして、国内最大の製造能力です。これにより、スティフクリート(厚さ40mm)を1時間当たり約70m²の面積に打設でき、上下線合わせて4車線の施工を各車線で1週間、延べ3週間で完了しました。
従来、1車線の規制帯内で製造する場合は、小規模ミキサーを使い、1時間当たり1.0m³の製造が限界でした。車載型専用プラントの導入により施工速度は3倍に向上しています。さらに、施工中に規制帯の外から材料を搬入する工事車両が不要となり、一般車両の通行に支障を生じないうえに、材料到着の遅れによる施工遅延も回避できます。
夜間1車線規制での有効性
都市部近郊では、交通規制に伴う渋滞や事故を防止するため、交通量の少ない夜間に1車線だけを使って施工し、昼間は全車線の開放が必要になるケースがあります。スティフクリートの特長である早期の強度発現による「速やかな交通開放」に加えて、車載型専用プラントによる「プラント設置・撤去時間の短縮」と「施工速度向上」により、夜間限定の1車線規制においても高速施工が可能となります。
大林組は、施工速度が大幅に向上したスティフクリートを高速道路のリニューアル工事に積極的に提案し、交通規制期間の短縮や迅速なインフラリニューアルを実現するとともに、インフラ構造物の長寿命化に貢献していきます。
- ※1 UHPFRC(Ultra-High Performance Fiber Reinforced cement-based Composites)
超高性能繊維補強セメント系複合材料の一般名称であり、圧縮強度が100N/mm²以上の超高強度材料。また、非常に緻密な構造を有するため、透気性・透水性が小さく耐久性にも優れている - ※2 国内最大の製造能力を持つ車載型専用プラント
超速硬型UHPFRC専用の車載型専用プラントとして(自社調べ) - ※3 「スティフクリート™」を開発し、既設RC床版を新たに上面薄層増厚工法として施工(2021.9.21付)
- ※4 常温硬化型UFC(Ultra-high strength Fiber reinforced Concrete)「スリムクリート®」
高温蒸気養生を必要とせず、現場でのシート養生だけで、圧縮強度 180N/mm²以上を確保できるモルタル材料