奈良・生駒山上遊園地のチケット売場を3Dプリンターで建設

スリムクリートとの複合構造により形状自由度を向上

技術・ソリューション

大林組は、株式会社近鉄生駒レジャーが運営する生駒山上遊園地(奈良県生駒市)のチケット売場を建設用3Dプリンターによる独自工法で建設しました。これは、園内に点在するチケット売場のうちの一つを3Dプリンターで建設する試みで、緑豊かな園内の景観に調和するように、樹木をモチーフにデザインしています。また、枝や幹にあたる部分はプランターとして本体と一体で製作しており、植栽とチケット売場が有機的に結合するユニークな外観を形成しています。

完成したチケット売場

大林組は、3Dプリンター用特殊モルタル(※1)を用いた建設用3Dプリンターと超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート®」(※2)による独自工法を開発しており、2023年4月には、国内で初めて国土交通大臣認定を取得した「3dpod™」を建設し、2023年11月には、国内初となる大型土木構造物のプレキャスト部材に適用するなど、着実にその適用を進めています。

今回建設したチケット売場は高さ2.7m、横幅2.5m、奥行き2.5mで、工場で製作して現地に設置しました。工場では外殻部を5つの部材に分けてプリントし、下部の部材から順に組み立てながら、内部にスリムクリートを充てんして製作しています。また今回は、プリント厚さやノズル角度を任意に制御することで、自在に傾斜する湾曲部材の製造が可能となり、従来よりもさらに複雑な自由形状を実現しました。

  • 3Dプリンター製外殻部とスリムクリートの構成

  • 部材No.3のプリント

  • 設置状況

  • 2025年春季の開園に合わせて設置されたチケット売場

大林組は、複雑なデザインや強度・耐久性を備えた構造物を実現できるセメント系材料を用いた3Dプリンター建設の研究をさらに進め、多様なニーズに応えるとともに、建設技術の未来を拓く技術開発を進めてまいります。

  • ※1 3Dプリンター用特殊モルタル
    デンカ株式会社が開発した特殊なセメント系材料を用いたモルタル「デンカプリンタル®」。建築物や土木構造物に必要な強度と耐久性を持つとともに、ポンプで圧送することが可能で積層しても崩れづらい性質(チキソトロピー性)を有しており、型枠を使わずに部材の製作が可能
  • ※2 スリムクリート
    大林組の保有技術である常温硬化型のモルタル材料で引張強度や曲げ強度が高いだけでなく、高い引張靭性を有するため、単独でも構造体としての使用が可能な材料(圧縮強度180N/mm²、引張強度8.8N/mm²)。スランプフローは260mm程度あり、自己充てん性を有するため、3Dプリンター用特殊モルタルで製作した3次元曲面状の打込み型枠にも密実に充てんできる