東京スカイツリー®のつくり方「ゲイン塔のリフトアップ工法」

技術・ソリューション

アンテナ用鉄塔を引き上げる 未知の高さを解決する切り札 ゲイン塔リフトアップ工法

 

採用されたゲイン塔リフトアップ工法のメリット

アンテナ用鉄塔「ゲイン塔」のつくり方には、さまざまな方法があります。
すべてを組み上げた後で最終的な高さへ引き上げる「リフトアップ工法」も多岐にわたり、一般的には次のような例が考えられます。

例1:第1展望台から上の塔体とともに全長を積み上げてから所定高さに引き上げる方法。
第1展望台から上の塔体建て方と同時にシャフト内空洞部に積み上げます。
塔体建て方完了後に突き出します。
塔体建て方とともに行うため、タワークレーンの揚重回数が増え、工期がかかります。

 

例2:第1展望台屋上で組み立てながら引き上げる方法
ゲイン塔を引き上げながら下に継ぎ足す組立てを第1展望台屋上で行います。
組み立て完了後に突き出します。
塔体建て方完了後からゲイン塔の組立てを開始するため工期がかかります。

上記2例の方法はいずれも、工期の短縮や未知の高さに対する問題が抜本的に解決していません。

そこで今回は、工期を短縮し、安全面・品質面も向上する画期的でダイナミックな手順のリフトアップ工法を採用することにしました。その手順とメリットは次のとおりです。

東京スカイツリーで採用するリフトアップ工法

東京スカイツリーで採用するリフトアップ工法
上は上で進めます。
「第1展望台から上の塔体鉄骨建て方」
4基すべてのタワークレーンは、第1展望台から上の塔体の工事を進めることのみに専念します。
下では並行してゲイン塔を進めます。
「ゲイン塔鉄骨組立」
第1展望台から上の工事とはまったく分離された地上レベルのシャフト内空洞部分で、ゲイン塔を組み上げます。
① ゲイン塔鉄骨組み立てと第一展望台から上の塔体鉄骨組み立ての上下の作業を、
それぞれ独立して、並行して進めることができ、工期が大幅に短縮
② 500mを超える高所にあるゲイン塔の組み立て作業を地上で行うことにより、安全と品質が向上
未知の高さに挑むなかで、工法のメリットを最大限に引き出した画期的かつダイナミックな手法です。

リフトアップ工法は、世界一の高さの電波塔の安全・品質を確保し、効率良い建設を可能にした立役者といえます。超高層ビル1棟分ほどの大きさの構造物を634mも引き上げることは前例がなく、工事全体のなかで最大の見せ場となる技術です。

 

採用されたゲイン塔リフトアップ工法の手順

PHASE1

第1展望台より上の鉄骨建て方工事と並行して、シャフト空洞内でゲイン塔の組み立て工事を開始します。

第1展望台から上の塔体鉄骨建て方
「リフトアップの手順」
・シャフト空洞内上部に油圧ジャッキを設置します。
・地上レベルで、ゲイン塔の上部となる鉄骨から順に組み立てを行います。
・組み上げた鉄骨全体を油圧ジャッキで引き上げます。
・引き上げた鉄骨の下に下部の鉄骨を組み立て、継ぎ足した後に全体を引き上げます。
・組み立てと引き上げを繰り返し、ゲイン塔全体の鉄骨をシャフト内空洞部に組み上げていきます。

 

PHASE2

シャフト空洞内のゲイン塔の組み立てが完了した後、吊点を下部に吊り替えます。

シャフト空洞内のゲイン塔の組立が進んだ後、吊点を下部に吊り替えます。
塔体鉄骨建て方
「ゲイン塔の吊り替え」
ゲイン塔を塔体より上に突き出すためには、ゲイン塔の頂部を吊っているとできません。
ワイヤーの吊点を、ゲイン塔の頂部から定着部(ゲイン塔が塔体鉄骨に入り込んでいる部分)に吊り替えます。

 

PHASE3

塔体鉄骨建て方が完了した後、油圧ジャッキを盛り替えます。このとき、シャフト内空洞部ではゲイン塔が組み上がっています。

塔体鉄骨建て方完了
塔体鉄骨建て方完了後、油圧ジャッキを盛り替えます。
「油圧ジャッキの盛り替え」
・ゲイン塔を塔体最上部より上に突き出すために油圧ジャッキを塔体最上部に盛り替えます。

 

PHASE4

ゲイン塔にアンテナを取り付けながら突き出していきます。

塔体頂部から突き出し・ゲイン塔の突き出しとアンテナ取り付けを繰り返しながら最終高さの634mまで突き出します。アンテナ取り付け工事ゲイン塔を塔体頂部から突き出した後に、塔体頂部でアンテナを取り付けます。1段目のアンテナを取り付けた後、再びゲイン塔を突き出します。心柱をつくる組み上がったゲイン塔がリフトアップされると後を追いかけてシャフト内空洞部で心柱の施工(スリップフォーム工法)を始めることができます。


※心柱・・・鉄筋コンクリート造の円塔で、重りとしてタワーの揺れを軽減する役割を担います


 

東京スカイツリーのつくり方大公開(上級編)