プロジェクト最前線

大阪駅のホーム上空に巨大なドーム屋根が出現

大阪駅改良他工事/大阪駅新北ビル(仮称)新築工事

2011. 02. 14

1日に85万人以上の乗降客が利用し、1,500本以上の列車が運行するJR大阪駅。この西日本最大のターミナルで、ホーム上空に橋上(きょうじょう)駅とドーム屋根を構築する駅改良工事や、駅直結の大型複合ビルである新北ビル(ノースゲートビルディング)の新築工事など、大規模な建設プロジェクトが佳境を迎えている。

「大阪の玄関口」が生まれ変わる

JR大阪駅の北側に広がる約24ヘクタールの梅田北ヤード(旧国鉄梅田貨物駅の跡地)では、関西経済を活性化させる旗印として、「大阪駅北地区全体構想」に基づく再開発事業が進む。大阪駅北地区全体構想は、大阪駅の周辺都市と連携して、商業・業務・文化・研究開発・住居など、多様な機能が共存するバランスの取れたまちづくりをめざすもの。その実現には、大阪駅北地区と南側の市街地とを行き交う玄関口として、大阪駅の改良工事が不可欠だった。

駅改良工事では、駅直結の新北ビル(ノースゲートビルディング)の建設と一体になって、駅の北側に駅前広場を整備。さらに、橋上駅やドーム屋根を構築することで、ラッシュ時の混雑緩和や乗り換えの利便性、歩行者の回遊性の向上が期待される。現場の総指揮にあたる京谷総括所長は、「大阪市や市民からの期待も大きく、身の引き締まる思いです。関西を代表する歴史的な工事にしたい」と意気込みを語る。

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建設中の新北ビルからホーム上空へ橋上駅の躯体を送り出し、ドーム屋根は中央から外側へスライドさせて構築した。大阪駅北地区全体構想の実現に向け、大阪駅はこの数年で大きな変貌を遂げている

プロジェクト成功への鍵となる工程調整会議

橋上駅やドーム屋根の工事は、主に既存のホーム上空で行われる。そのため、作業スペースを確保しながら安全に施工する方法が当初からの課題だった。検討の末に出した答えは、新北ビルの工事と連携し、現場敷地やビル屋上部分を利用することだった。

橋上駅の躯体は、新北ビル中央のアトリウム部分に構台を設置し、タワークレーンを使って構築。また、ドーム屋根は、新北ビルの屋上を利用して部材を組み立てた。ホーム上空での作業を最小限にすることで、安全に施工できたのだ。このように、互いの工区で綿密に作業調整ができたのには理由があった。

現場事務所では毎年11月頃になると、駅改良工事や新北ビル工事などのリーダーが一堂に集まり、翌年に向けて工程全体を見直す工程調整会議が行われる。「別々の工事の担当者が一緒になって検討することで、より円滑に安全に施工できる方策が見つかるのです」と施工計画を担当する川上副所長は話す。

会議には15枚以上の工程表が持ち寄られ、各工事エリアでは作業調整のせめぎ合いが行われる。2ヵ月かけて詳細にチェックし、年末には1本化した工程表が完成する。メンバーが意識を共有し、細部まで把握することが、プロジェクトの成功へとつながるのだ。

駅改良工事と新北ビル工事が複雑に絡み合う工程を調整し、円滑・安全な施工方法を検討
橋上駅の送り出し工事は時間との勝負。入念な施工計画と事前準備が鍵を握る

総重量3,600トンの橋上駅を緻密な計算で送り出す

大阪駅の南北をつなぐ橋上駅は幅約40m、長さ約100m、総重量は約3,600トンにもなる。昼夜にわたり新北ビルエリアで鉄骨を地組みし、夜間にジャッキを使ってホーム上空へ送り出す。ホームには、基礎となる鉄骨柱を事前に建て込んでおき、送り出した橋上駅の躯体とボルトで仮固定する。ホーム上の作業は、駅を閉鎖できる深夜1時半から4時までの2時間半に限定されるため、入念な施工計画が求められた。

「あらゆる事態を想定し、送り出し工事は1時間以内で計画しています」と竹中副所長は説明する。橋上駅を送り出す速度は、1分間に約50cm。 5つのホーム(1~4号と環状線ホーム)全長90mを5回に分けて送り出した。橋上駅の鉄骨組み立てから送り出し完了までわずか4ヵ月、大幅な工期短縮と安全性の向上を達成し、橋上駅送り出し工事を成功させた。

ドームスライドステップの平面図
南北断面図

ホーム上空に翼を広げた巨大なドーム屋根

改良工事で特に注目されるのが、橋上駅を覆う巨大なドーム屋根だ。ドーム屋根は新北ビルの12階部分と、ホーム上空でコの字に組んだ南側の架構に斜めに架かっている。その傾斜角度は、最大23度にもなる。 ドーム屋根は17列のトラスで構成され、1列は8つの地組みトラス部品の集合体。新北ビルの屋上で地組みした8つの部材を、橋上駅上に設置した200トンのクローラークレーンを利用し、ベント構台上で組み立てていく。この段階で、トラス間のつなぎ材を取り付け、トップライトや折板、吸音パネルなどの仕上げ工事まで完了させる。そして、組み立てたトラスを東・西両側へ7回ずつスライドさせ、東・西7列ずつの屋根が完成する。その後、クローラークレーンを小型のクレーンに組み替えて、残りの中央3列のすき間を組み立てていく。

中央から翼を広げるように姿を現したドーム屋根は、東西約180m、南北約100m。サッカー場が2.5面収まる大きさだ。「屋根が大きくなるにつれ、人々の関心も高まりました」と岩見工事長は笑顔で話す。

橋上駅上で組み立てたトラスに、最大40mもある屋根折板を取り付ける。職人の卓越した技術が工事を支えている

結集した技術がドーム屋根を支える

総重量が約3,500トンもあるドーム屋根には、地震動を効果的に低減する免震技術が採用されている。新北ビル側の支持部には、一体型の積層ゴムと鋼製U字型ダンパーを用い、東西架構側には、過度な水平力が作用しないよう十字滑り支承を備えた。常に営業しているホーム直上で施工するため、スライド工事の各段階で、免震が有効に機能するよう工夫を凝らしているのだ。これらの技術を可能にしたのは、大林組の技術研究所や特殊工法部、構造設計部などで構成した「橋上駅ドーム技術委員会」で検証を重ね、技術力を結集した結果だった。

メンバー全員が想いを一つに完成をめざす

平成16年4月の着工から6年以上が経過し、改良工事と新北ビル工事で積み上げてきた総労働時間は、延1,500万時間に達する。多くのメンバーと共に難関を乗り越えてきた岩見工事長は「簡単に積み上げられる時間ではありません」と、これまでの道のりに胸を張る。

今春のグランドオープンに向け、現場では仕上げ工事や各種の検査準備に余念がない。京谷総括所長は、ここに至るまでの心境、そして完成への決意を語った。 「発注者には、京都駅に続き大阪駅の工事も大林組に任せていただきました。巨大ターミナルでの工事は想像を絶する難工事の連続で、プレッシャーは相当のものでしたが、信頼と期待に応えるべく取り組んできました。 最盛期には1日に3,500名以上が従事するなか、皆が本当によく頑張ってくれています。メンバー全員が工事に携われることを誇りに思い、想いを一つにして完成をめざします」 新たなJR大阪駅の誕生は、関西に元気を与えてくれる「賑わいの架け橋」となるだろう。

(取材2010年12月)

工事概要

名称大阪駅改良他工事/大阪駅新北ビル(仮称)新築工事
場所大阪市北区梅田
【大阪駅改良他工事】
発注西日本旅客鉄道
設計西日本旅客鉄道、ジェイアール西日本コンサルタンツ
概要1~4号・環状ホーム改築一式、5号ホーム新築、通信管路設置一式、こう上桁改築・撤去一式、高架下駅・店舗改修、橋上駅舎新設、ドーム屋根新設、別棟駐車場新築、連絡通路整備ほか
工期2004年4月~2012年7月
施工大林組、大鉄工業、竹中工務店、錢高組、淺沼組、奥村組
【大阪駅新北ビル(仮称)新築工事】
発注西日本旅客鉄道、大阪ターミナルビル、ジェイアール西日本伊勢丹、JR西日本SC開発
設計西日本旅客鉄道
概要RC造・S造・SRC造、B3、28F、PH2F、延21万7,600m2
工期2006年8月~2011年春
用途百貨店、専門店、オフィス、シネコンほか
施工大林組、大鉄工業、竹中工務店、錢高組、淺沼組

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