プロジェクト最前線

空中に浮かぶ回廊型ギャラリー誕生へ!

(仮称)ホキ美術館新築工事

2010. 08. 24

森に囲まれた回廊型ギャラリー

千葉市緑区のJR外房線「土気駅」から南へ歩くこと20分。閑静な住宅街を抜けると、千葉県内でも有数の敷地面積を誇る「昭和の森公園」が広がる。その緑豊かな地域の一角で建設されているのが、日本初の写実絵画専門の美術館として計画されたホキ美術館だ。

鋼板構造が空中に跳ね出す

施設の特徴は、細長いチューブ状の躯体が敷地形状に合わせてカーブし、立体的に重なり合うユニークな構造である。地上1階のギャラリー部分は100mにわたる鉄骨の鋼板構造になっており、その先端から30m部分が空中に跳ね出しているのだ。

また、鋼板構造全体は地下の鉄筋コンクリート造から突き出た2ヵ所の支柱で支えているため、施工にあたっては高い精度が要求された。「鋼板を支える柱の位置が重要だったので、墨出しは違う手順で二度行うなど万全を期しています」と岡村工事長は説明する。

3層構造になった回廊型ギャラリー
ギャラリー内の完成予想図。収蔵作品は300点に及ぶ予定だ

宙に浮かぶ躯体を「ベント工法」で施工

宙に浮かんだ跳ね出し部分を含む鋼板構造は、主に溶接で組み立てている。現場では、建て方の安全性と作業性を考え「ベント工法」を採用。井桁に組んだベント(支保工)上で鋼板を組み立て、溶接が完了した時点でジャッキダウンして支保工を解体する工法だ。

ただし、支保工を解体すると、跳ね出し部分は重力で鉛直方向にたわみが発生する。一方で、鋼板を溶接すると接合個所が収縮し、上方に反り返る溶接変形も予測される。工事では、鉛直方向の「たわみ」と上向きの「溶接変形」を考慮して、建て方の最終的な精度を確保することが重要になった。

「100mの鋼板構造は一般的にはない構造です。そのため、どれくらい溶接変形が発生するかは正確に解析できないので、溶接の管理に苦労しました」と岡村工事長は語る。現場では鋼板のひずみを丁寧に矯正し、溶接手順を工夫することで、溶接変形を最小限に抑えているのだ。

「魅力ある美術館」をチャレンジ精神で造り上げる

今回の工事は、「作品のみならず、建築としても魅力あふれる美術館」というコンセプトを大切にしながら進めている。優れたデザイン性と、美術館としての機能性をうまく融合させることが腕の見せどころだ。

現場を統括する谷口所長は、「複雑な構造の施設なので、一つひとつ検証しながら施工することを心がけています。機能性を確保するうえで数々の難題もありますが、難しい工事だからこそ、メンバー全員がチャレンジ精神を持って一丸となっています」と語る。

11月3日のオープンに向け、工事はラストスパートに入った。地域の方々からは、完成を待ち望む声が日増しに高まっている。完成すると、千葉県の新たな芸術拠点として、各地へ文化を発信し続けていくだろう。

(取材2010年6月)

工事概要

名称(仮称)ホキ美術館新築工事
場所千葉市緑区土気東特定土地区画整理事業112街区
発注ホキ美術館
設計日建設計
概要RC造一部S造、B2、1F、延3,753m2
工期2008年10月~2010年8月

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