CO2から生産する生分解性プラスチックの実用化検討を開始

水素細菌を応用し温暖化防止と海洋プラスチック問題の解決に貢献します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、水素細菌(※1)を利用してCO2から生分解性プラスチック(※2)であるポリ乳酸(※3)を製造する技術の実用化検討を開始しました。株式会社CO2資源化研究所(本社:東京都港区、代表取締役:湯川英明)と実用化に向け共同研究を進めます。

地球温暖化抑制のため、さまざまなCO2削減策が求められますが、プラスチックなどの化学品の原料を石油など製造段階でCO2が発生する化石資源から、脱炭素で持続可能なものに変えていくことが必要です。また、海洋など環境中に残留するプラスチック(※4)の削減も重要な課題で、国のSDGsの主要ターゲットにも挙げられています。

本技術の鍵となる水素細菌は、CO2と水素を吸収して増殖し、有機物を使わずに有用物を生産できる技術への応用が期待されています。CO2資源化研究所が保有する水素細菌は、生育が速いことが特長で24時間で1個体が1600万個に増殖します。再生可能エネルギーから製造した水素を用いることで、化学品原料の脱化石化に大きく貢献できます。

大林組は、特に乳酸を作る水素細菌に注目しました。乳酸から作るポリ乳酸は、環境中では微生物などにより分解する生分解性プラスチックの代表的な素材になります。世界のプラスチックの用途のうち建設業の利用は16%を占めます。特に、土のう袋や養生シートなどの仮設材料は主に屋外環境となる建設現場で使用するため、破れやすく長期使用が困難で、その都度新たな物を調達する必要があります。これらを、水素細菌が作るポリ乳酸に置き換えることで、CO2の削減が可能です。また、この技術は、建設業以外でも、食品トレーやディスポーザブル食器など幅広い用途への拡大が期待されます。ポリ乳酸は、通常のプラスチックのようにいつまでも環境中に残留しないため、国がSDGsのターゲットとした課題の解決にもつながります。

水素の有効活用につながる本技術は、水素社会実現に大きく貢献すると期待しています。大林組は、ニュージーランドにおいて地熱発電を利用したCO2フリー水素製造・流通の研究を行っており、また、多数の再生可能エネルギー発電施設を有しています。本共同研究により、技術の実用化を促進し、保有する技術、設備を活かすことも視野に入れ、事業化をめざしていきます。

  • ※1 水素細菌
    水素と酸素の反応によって生じる化学エネルギーを利用し、炭酸同化作用(生体内で二酸化炭素が有機物に変化する反応)を行う細菌
  • ※2 生分解性プラスチック
    生分解とは、微生物の作用によってもとの化合物がほかの物質に分解すること。生分解性プラスチックは、一般的に「使用するときには従来のプラスチック同様の性状と機能を維持しつつ、使用後は自然界の微生物などの働きによって生分解され、最終的には水と二酸化炭素に完全に分解されるプラスチック」とされる
  • ※3 ポリ乳酸
    乳酸を重合して作る生分解性プラスチックであり、多くはトウモロコシなどから作る乳酸を用いるが、本技術は、水素とCO2を用いて水素細菌が直接作る乳酸を用いるため、食料とも競合しない新しい技術
  • ※4 海洋など環境中に残留するプラスチック
    現在、世界全体で年間数百万tを超えるプラスチックごみが海洋に流出していると推計されている。このため、海洋プラスチックごみによる地球規模での環境汚染による生態系、生活環境、漁業、観光などへの悪影響が懸念され、国連をはじめとするさまざまな国際会議において、重要かつ喫緊の課題として議論が行われている

以上

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大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報第一課
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