環境に優しいシールド用高性能テールシール充てん材「シールノックBD」を開発しました

生分解性を有し、止水・圧送性能が高いテールグリース

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、ENEOS株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大田勝幸)と共同で、シールド工事においてトンネル内への地下水の流入を防止する従来のテールシール充てん材を改良し、生分解性を有する材料を用いることで環境への影響を低減できる「シールノックBD」を開発しました。

シールドマシンは、後方でセグメントと呼ばれるパネル部材を組み立て、それを足がかりとして前方の地山を掘削しながら前進します。シールドマシンの後端部にはテールシールと呼ばれる止水機構が備えられており、セグメントと密着させることでシールドマシン内に地下水が流入するのを防いでいます。テールシールは主にワイヤーブラシと鉄板で構成され、ブラシ自身やセグメントと密着する部分に常に充てん材(テールグリース)を補給することで止水性能を維持しています。しかし、テールシール内に裏込め注入材(※1)が混入し固結すると、テールシールの柔軟性が著しく低下するため、最悪の場合セグメントを損傷させることがありました。そこで大林組とENEOSは、裏込め注入材が混入しても固結しにくいテールグリース「シールノックCR」を共同で開発し、2016年の販売開始以来、多くのシールド工事現場で適用してきました。

テールシール構造図

その一方で、シールドトンネル付近の地層からの地下水が利用されている場所などでは、地下水にテールグリースの油成分が流出するリスクが懸念されることから、近年、環境配慮へのニーズが高まっています。

シールノックBDの外観と荷姿。「シールノック」はENEOS株式会社の登録商標

今回大林組がENEOSと共同で開発したシールノックBDは、シールノックCRの特長を備えつつ、主成分に生分解性を有する材料を用いた、環境に優しいテールグリースです。

シールノックBDの特長は以下のとおりです。

生分解性を有し環境に優しい

従来のテールグリースは、主成分に生分解性を持たない材料を使用していましたが、シールノックBDは、主成分に生分解性を有する材料を使用しているため、環境負荷を大幅に低減できます。

高い生分解度と生物への安全性を有することが認められ、公益財団法人日本環境協会 エコマーク事務局から、テールグリースとしては初めてエコマーク(※2)の認定を受けました。

高い止水性を確保しセグメントの損傷も防止

高い止水性により、トンネル内の安全性と作業性を確保します。テールグリースの止水性能を計測する耐水圧試験、および施工現場での適用試験で、シールノックCRと同等以上の止水性があることを確認しました。また、裏込め注入材が混入しても、圧送可能な軟らかさ(ちょう度)をシールノックCRと同様に混入後24時間程度保持します。固結を防ぎながらちょう度を保つことが可能なシールノックBDをテールシールに常時補給することで、高い止水性を維持するとともにセグメントの損傷を防止します。

裏込め注入材混入後のちょう度の経時変化

ポンプ圧送性に優れます

テールグリースは、シールドマシンの後方の台車に設置された給脂ポンプを用いて、テールシールに配管を通じて圧送されます。圧送距離は大断面シールドでは100m近くなる場合もあり、必要な圧送圧を確保するため、高粘度液専用の大型給脂ポンプが採用されています。

シールノックBDは比重が軽いため、給脂ポンプで圧送する際のポンプ負荷を軽減できます。試験室内での圧送試験と施工現場での適用試験で、テールグリース圧送時のポンプ負荷を、シールノックCRと比較して約3割軽減できることを確認しました。

グリース圧送試験結果
テールグリース給脂 イメージ

大林組は今後、シールノックBDを幅広く展開していくことで、シールド工事の安全と品質を確保するとともに環境負荷のさらなる低減をめざします。

  • ※1 裏込め注入材
    セグメントはシールドマシンの中で組み立てられるため、セグメント外径はシールドマシンの掘削外径よりも小さくなる。裏込め注入材は、この外径の差によって生じる隙間を埋めるために注入するセメント系材料で、シールドマシン掘進後の地山の緩みを防ぐとともに、セグメントを地山内に固定する目的で、一般的に掘進時にセグメントに空けた穴から注入される
  • ※2 エコマーク
    公益財団法人日本環境協会 エコマーク事務局が、環境保全に役立つと認められる商品に対して表示を認可するラベル。シールノックBDは、同事務局が定める商品の認定基準(生分解度60%以上を有することおよび魚毒性を有さないこと)を満たし、第三者機関(一般財団法人化学物質評価研究機構)における試験をクリアすることで、エコマークの認定を受けた

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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