国内初、洋上風力発電施設用TLP型浮体を実海域に設置

漁業への配慮と高い発電効率を兼ね備えた浮体式基礎構造体の実証実験を開始

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、青森県下北郡東通村岩屋の沖合3kmの海域に、浮体式洋上風力発電施設のうち、国内で初めて(※1)緊張係留方式のTLP(テンション・レグ・プラットフォーム)型浮体を設置し、1年間の挙動観測を開始しました。本実証における「浮体および係留システム」は、一般財団法人日本海事協会の船級検査を完了し、船級を取得しています。

曳航
  • 浜出し

  • 設置完了

TLP型浮体の実証実験(動画再生時間:4分41秒)

開発の背景

洋上風力発電施設の基礎構造形式(※2)は、海底に基礎を構築して風車を支持する着床式と、海に浮かべた基礎に風車を設置する浮体式があります。現在、日本における洋上風力発電の基礎構造体はほとんどが着床式ですが、着床式は比較的水深が浅い場合に適した形式のため、遠浅の海域が少ない日本では、水深が深い海域に適した浮体式の導入が期待されています。

浮体式は、係留方式として、スパー型やセミサブ型などのカテナリー方式が実用化されつつあるものの浮体動揺が大きく、発電効率が低いことなどが課題です。一方、TLP型は、浮体の動揺安定性や発電効率が高いことが期待されるとともに、海域の占有面積が小さく、漁業への影響が少ないことが特長です。しかし、TLP型は一般的に設置が難しいとされており、海底油田などでは実績はあるものの、洋上風力発電の基礎として国内での施工実績はなく、実用化されていません。

大林組は、着床式と浮体式のあらゆる基礎構造形式を対象に、洋上風力全般の技術開発に取り組んでいます。とりわけ将来有力なTLP型浮体の開発に取り組んでおり、2018年には一般財団法人日本海事協会から基本設計承認を取得するなど、着実に技術成熟度を高めてきました。

今般、大林組独自の設置方法(特許出願中)を用いて、出力15MW級の風車を搭載する浮体の5分の1サイズのTLP型浮体を実海域に設置し、1年間(2024年7月から2025年7月)にわたって、実波浪条件下での浮体の動揺安定性や係留材の緊張力の変化などを確認する挙動観測を開始しました。

実証実験の内容

ハイブリッド構造の採用

TLP型浮体は、海底に設置されたアンカーをテンドンと呼ばれる緊張係留材で定着させ、浮体の浮力によって生じる緊張力を利用して基礎として機能させます。本実証実験では、浮体製作の低コスト化、大量生産を図るため、鉄筋コンクリートと鋼製部材によるハイブリッド構造を採用しました。また、テンドンには低クリープ高強度合成繊維ロープを採用し、TLP型浮体との適用性を検証しています。

TLP型浮体と構成イメージ

設置方法の確立

TLP型浮体は設置時に一時的に不安定になるという困難さがありますが、それを克服するために大林組は大型の専用船などを使用せずに浮体の安定を保ちながら設置する方法を確立しました。(特許出願中)

構造妥当性の検証

1年間の挙動観測を通して実波浪下での動揺安定性の確認や、コンクリート浮体の水密性の検証を行い、TLP型浮体の耐用性を確認していきます。

今後の展望

今回の浮体には風車を搭載していませんが、今後は風車を搭載した浮体による実海域実証実験を行うことで、商用化に向けた開発を推進していきます。

今後も2030年以降のTLP型洋上風力発電施設の社会実装の実現に向けて技術開発を推進するなど、洋上風力をはじめとした再生可能エネルギー普及を通じて、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

  • ※1 自社調べ(2024年7月)「洋上風力発電施設用TLP型浮体を実海域に設置」が国内初
  • ※2 洋上風力発電施設の基礎構造形式の特徴

  • 形式 モノパイル式 スパー型 セミサブ型 TLP型
      
      
      
      
    構造形式 着床式 浮体式 浮体式 浮体式
    係留方式 - カテナリー係留 カテナリー係留 緊張係留
    適用可能水深 50m以浅 100m超 80m超 80m超
    主な特徴 構造が単純で、海域の占有面積が小さい 構造が単純で、海域の占有面積が大きい 構造が複雑で、海域の占有面積が大きい 浮体の動揺が小さく、発電効率が高い
    海域の占有面積が小さい
TLP浮体式洋上風力発電基礎の開発 ~2050カーボンニュートラルの実現にむけて~(動画再生時間:11分23秒)

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報課
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