高速1号羽田線更新工事で低炭素型地盤改良材「クリーンクリートジオ®」を初適用

流動化処理土の埋め戻しに係るCO2排出量を約62%削減

技術・ソリューション

大林組は、株式会社KSJと共同でクリーンクリートジオを用いた低炭素型流動化処理土を開発しました。高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事(発注者:首都高速道路株式会社)において、運河内に設置した橋脚基礎の埋め戻しの一部に試験的に使用し、埋め戻し工におけるCO2排出量約62%削減を実現しました。

低炭素型流動化処理土での運河内に設置した橋脚基礎の埋め戻し状況

2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、建設業界では建設資材の脱炭素化を進めており、大林組は、製造過程で多くのCO2を排出するセメントの使用量を減らすなどの方法で、クリーンクリート®(※1)をはじめとした低炭素型の資材を開発しています。低炭素型地盤改良材としては、さまざまなケースで最大限の効果を発揮できるよう、バイプロジオ®(L)、バイプロジオ(C)、クリーンクリートジオ®(※2)、Infill Hard Geo®(インフィルハードジオ)(※3)の4種類を開発しています。

今般、クリーンクリートジオを用いた低炭素型流動化処理土を、高速1号羽田線更新工事の運河内に設置した橋脚基礎の埋め戻しに使用しました。その特長や効果は以下のとおりです。

従来の流動化処理土と同等の品質

本工事では、橋脚の基礎部を施工する際に掘削した箇所を、従来(高炉セメントB種使用)の流動化処理土で埋め戻す計画でした。流動化処理土とは、建設現場で発生した土に処理を施し、強度や充てん性を高めたもので、狭小部などのさまざまな場所の埋め戻しに使われています。

流動化処理土の要求品質は、28日後の一軸圧縮強度が100kN/m²以上、打設時の流動性がシリンダーフロー(※4)で180~300mm、ブリージング率(※5)が1%未満、密度が1.5t/m³以上です。今回開発した、クリーンクリートジオを用いた低炭素型流動化処理土は、いずれの項目も要求品質を達成しました。

品質管理状況

【低炭素型流動化処理土の品質】

項目 基準 結果
28日後一軸圧縮強度 100kN/m²以上 264kN/m²
シリンダーフロー 180~300mm 270mm
ブリージング率 1%未満 0.3%
湿潤密度 1.5t/m³以上 1.54t/m³

埋め戻しにかかるCO2排出量の削減

本工事では222m³の流動化処理土が必要で、従来の流動化処理土を使用して埋め戻した場合のCO2排出量は5.1tとなります。今回開発した低炭素型流動化処理土を使用したことで、CO2排出量は1.9tとなり、約62%の削減を実現しました。

大林組は、低炭素型地盤改良材シリーズのバイプロジオ(L)、バイプロジオ(C)、クリーンクリートジオ、Infill Hard Geoをそれぞれのニーズに合わせて積極的に提案し、安全・安心なインフラ整備とカーボンニュートラルにつながる技術開発に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

  • ※1 クリーンクリート
    セメントの大部分を高炉スラグ微粉末などの産業副産物に置き換えることで、CO2排出量を大幅に削減できるコンクリート
  • ※2 バイプロジオ(L)、バイプロジオ(C)、クリーンクリートジオ
    従来、地盤改良に用いられるセメント系固化材は、火山灰土や腐植土に添加すると、六価クロムを溶出するリスクがある。そういった環境リスクの高い土壌でも、脱炭素に貢献しながら土壌環境保全を実現する地盤改良材
  • ※3 Infill Hard Geo
    グラウト材に使用されるコロイダルシリカを工場生産から天然由来のものに置き換えることで、同等の性能を保って低炭素化を実現した地盤改良用グラウト材
  • ※4 シリンダーフロー
    シリンダーフロー試験は、モルタルの流動性を評価する試験としてNEXCO試験法313に規格されており、流動化処理土の流動性を管理する際にも用いられる。シリンダー型の容器に流動化処理土を充てんし、シリンダーを引き抜いた時に円形に広がった直径をシリンダーフローという
  • ※5 ブリージング率
    ブリージング試験は、コンクリートの材料分離性を評価する試験としてJIS A 1123に規格されており、流動化処理土の材料分離性を管理する際にも用いられる。分離して上に溜まった水の容量を流動化処理土全体の容量で除した値をブリージング率という