プロジェクト最前線

大阪中心地のオフィス 知と技を結集させた省力化工法で挑む

(仮称)日本生命新東館新築工事

2015. 01. 21

建設業界を取り巻く作業員不足や短工期といった課題の数々。今、建設会社には知恵と工夫でそれらを乗り越え、発注者のニーズに応える施工が求められている。そんな中、大阪の都心部の現場では、ある積極的な取り組みが行われている。

大阪、淀屋橋の程近くで進む「(仮称)日本生命新東館新築工事」。大林組JVが、地下2階、地上15階建て、延床面積6万579m2のオフィスビルを施工中だ。取材に訪れたのは2014年7月中旬。既に躯体工事がほぼ終わり、外壁の花こう岩が重厚な雰囲気を醸し出していた。

所長の林は「順調に進捗している」と施工の様子を話す。その進捗を支えてきた要因の一つに、斬新なアイデアと技術力を駆使した省力化工法の積極的な展開があった。

SRC造と外壁PC版の一体的な施工で効率化

「SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造と外壁PC(プレキャストコンクリート)版の複合構造は珍しい」と所長の林は構造的な特徴を強調する。外壁PC版を用いる場合、取り付け先となる柱、梁はS(鉄骨)造であることが多い。この組み合わせであれば、鉄骨の建て込みも外壁PC版の取り付けも足場を組まずに、クレーンを使って行うことが可能だ。

しかし、この建物の外周部には、より強固な構造体を実現するためSRC造が採用されていた。SRC造は鉄骨を建て込んだ後、足場上で鉄筋を鉄骨に組むのが従来の手順だ。

ここで所長の林は思い切った手に打って出る。「地上部の施工ヤードで鉄骨を地組みし、さらに鉄筋も先組みすれば鉄筋を組むための足場が不要になり、施工を効率化できる」。後述するユニットフロアの施工も同時進行で行うことを想定し、3台のタワークレーンを効率的に稼働させるための緻密な施工計画を練ったうえで施工に当たった。職員、作業員が知恵を絞った取り組みは躯体工事の進捗を引き上げるとともに、お客様が求める工期の短縮、品質や安全性の向上にもつながったという。

地上で間柱、大梁、鉄筋を組み、クレーンでつり上げて建て込む

都心部ならではのユニットフロア工法「O-SMART Floor(オー・スマートフロア)」

建物内部を構築する省力化工法の一つにユニットフロア工法がある。先述の地組み同様、施工ヤードで、梁に床デッキ、ダクトや配管などを事前に組み合わせ、施工の合理化を図るものだ。

発注者も高い関心を寄せたこの工法。しかし、敷地内では鉄骨の地組みなどにスペースが占有されており、採用は容易ではなかった。所長の林はこの窮地を逆転の発想で乗り切る。「建物内部にスペースを作ればいい」。建物中心部に空間を設け、立体的なスペースを活用する積層型のユニットフロア工法「O-SMART Floor(オー・スマートフロア)」を考案した。

梁に床デッキ、ダクトや配管などを組み合わせたユニット構成

施工手順はこうだ。まず建物1階で梁とデッキをユニット化し、架台(キャリアフレーム)に乗せて中心部まで移動させる。本体鉄骨に取り付けた上昇装置(ユニットフレーム)で2階にジャッキアップ。設備機器を取り付け、ユニット化が完了したものをストックする。後はクレーンでつり上げて所定の位置に敷き込む。

この装置は、着工の半年前から大阪機械工場や大阪本店生産技術部に協力を仰ぎ、設計・製作したもの。ジャッキアップ時の安定的な動作を得るため、4分の1スケールのモックアップで何度も試験を行って本番に臨んだ。

適用範囲は延床面積の4割ほどだったが、実証研究も兼ねた試みは想定通りの成果が上がったという。開発メンバーは新工法「O-SMART Floor(オー・スマートフロア)」を都心部における有力な省力化工法として確立したい考えだ。

所長の林は一連の省力化工法について主張する。「作業員不足への対策で注目されてはいるが、短工期、品質向上といったお客様の要望を実現するために活用する観点を見失わないようにするべき。考え得る工法を取り入れ、段取り、工程管理に工夫を凝らし、関係者とも連携を深めて取り組むことが大事だ」。

【1 組み立て】(上)床デッキを取り付ける (下)キャリアフレーム上で梁を組む
【4 設備工事】床デッキ下に衛生配管を設置する
【6 つり上げて取り付け】完成したユニットフロアをクレーンでつり上げて所定の位置に敷き込む

安心、快適な職場づくりを推進

若年者から高齢者まで、さまざまな人が働く現場。ここでは、作業員が安心して快適に過ごせる工夫が満載だ。例えば暑さが続く夏の時期、気になるのは熱中症や脱水症状。その対策としてミストシャワー、製氷機や冷水器のほかに、空調、簡易ベッドなどが整った熱中症対策室も完備する。

中でもユニークなのが休憩室に設けられた「かき氷屋」だ。作業員同士がコミュニケーションを深めるきっかけにもなっていたという。また、女性職員、作業員には専用の仮設トイレに加え、更衣室も確保した。

安全面にも工夫を凝らす。その一つが作業分担の「見える化」だ。職長には赤色、各班のリーダーには青色のヘルメットを着装させるほか、ベストやヘルメットに巻くバンドを用いたりして、それぞれの役割を識別できるようにした。見える化の取り組みは安全管理の実効性を高めている。

こうした「快適職場づくり」は外部からも高い評価を受け、日本建設業連合会の「2013年度快適職場表彰」特別賞の受賞に結び付いた。

女性の現場監督員も活躍する
60歳以上の作業員には識別シールを義務付ける。熱中症や高所作業に目を配る

人が集まる環境をつくることが大事

「この現場で働けて良かったと思ってもらえるような現場運営を続けたい」。所長の林は力強くそう語った。その根底には、作業員不足が深刻化する中、どうすれば人が集まる現場を構築できるかという危機意識が潜む。快適職場づくりはまさにその答えの一例。「作業員が働きやすい環境をつくる努力が必要。人が集まり、つながりを強めれば、さまざまなアイデアが生まれるし、仕事はよりうまくいく」。

現場のスローガンは「人にやさしく、自分に厳しく、笑顔で築こう現場の和」。所長の林の思いを職員・作業員たちが共有し、2015年1月の完成に向けて施工にまい進する。

赤いヘルメットをかぶった職長から作業状況の説明を受ける所長の林

(取材2014年7月)

工事概要

名称(仮称)日本生命新東館新築工事
場所大阪市中央区今橋
発注日本生命保険
設計日建設計
概要S・SRC造、B2、15F、PH付、延6万579m2
工期2012年6月~2015年1月
施工大林組、竹中工務店

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