プロジェクト最前線

新幹線の真上に巨大橋桁を架ける

上越幹大宮・熊谷間圏央道Bo新設他工事

2015. 03. 26

橋桁を線路上空につり上げているのは国内最大級のクローラークレーン

首都圏中央連絡自動車道(圏央道)は、都心から半径40km~60kmの位置を環状に結ぶ延長約300kmの高規格幹線道路だ。2014年暮れ、大林組は、この圏央道整備工事の一環として、埼玉県・桶川北本~白岡菖蒲インターチェンジ間にある上越新幹線との交差部で、内回り線と外回り線2本の道路橋の一括架設を行った。地上で桁を組み、クレーンで一気に架設するという極限の緊張感を伴う工事に、施工担当者はどう向き合い、乗り越えたのか。その舞台裏に迫る。

重さ400tの橋桁を一括架設

建設現場は上越新幹線大宮駅を起点に15kmほどの場所にある。11月29日、23時40分。立ち込めていた夜霧がうそのように晴れ渡り、架設が始まった。1250t級の超大型クレーンの長いブームがつり下げているのは、長さ70m、幅12m、重さ400tの鋼製橋桁。乗用車400台分に相当するほどの重量物が徐々に地上から離れ、30mの高さで停止すると、今度は左に旋回し150mの距離を進んだ。

新幹線の架線への電力供給停止を合図に軌道上空に進入した後、橋脚柱頭部まで降下、橋桁の据え付けに入った。開始から3時間後、1本目の架設は無事に完了した。12月6日、2本目も終えた所長の大野の表情に、ようやく安堵(あんど)の色が浮かんだ。

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早く、安全に架ける

「圏央道の開通スケジュールや、冬場に多くの乗客が上越新幹線を利用することを考えれば、年内架設は必達」。着工当初の2014年2月、NEXCO東日本の委託を受けた発注者の東日本旅客鉄道からこう念を押されたという。用地問題が影響して、橋桁を支える橋脚1本が未着工の中、所長の大野は「厳しい仕事になると思った」と当時の心境を吐露する。

架線すれすれに橋桁を架設。緊張感はピークに達した

作業可能日や時間帯が極めて限定されるうえに、落下物などのリスクを徹底的に排除しながら安全かつスピーディーに施工するにはどうしたらよいか。たどり着いた答えが「一括架設工法」だった。

地上で桁を先組みし、クレーンでつり上げ一気に架設する。橋脚間に設置した仮受け台上で桁をつなぎ合わせる在来のクレーンベント工法もあるが、この工法では各連結部でのボルト締めや溶接、桁底部に備えるつり足場の組み立てと解体、落下物を防止するネット張りなどの作業を伴うので夜間作業が長期化し、必然的に安全上のリスクが高まる恐れがあった。

さらに騒音による近隣住民の負担も懸念された。「より早く、安全に架けたいというお客様の強い思いが詰まったプロジェクト」は、大林組の施工力が大いに試される工事となった。

地上で桁を連結し、一本化。床版は鋼床版と縦リブを工場で合成したものを取り付けた 

浅く強い支持力へのこだわり

鍵となったのは、クレーンの安定動作を担保する構台の整備だ。橋桁をつったクレーンの重量は1500t。これにウェイトワゴンと呼ばれる転倒防止の重しを加えると、単純計算で2000tに及ぶ。しかも、足元は水田で、地質は軟弱。抜本的な対策が必要だった。

そこで実施したのが、鋼管杭で支持力を出す方法だ。4600m2の敷地に、先端が翼の形をした杭を回転させながら貫入。2m四方に、深さ11mの杭360本を打ち、杭頭部にH鋼を設置、最後に鉄板を敷設した。

こだわったのは沈下量を19mm以内に抑える「浅く、強い」支持力。新幹線の近傍に太く長い杭を打てば、撤去の際に高架の支持力に影響を及ぼすリスクが増す。比較的地表から浅く安定している地層に向けて、エリアごとに2種類の太さの杭を打ち分けた。

さらに、組み立てを担当した工事長の増田が「試験つりの日までH鋼などの鉄骨に補強材を追加した」と話すように、安定性の追求をぎりぎりのタイミングまで続けた。こだわりが存分に詰まった構台は、本番で10mmの沈下量にとどまる効果を発揮。想定どおりに水平レベルを保ったクレーンは、架設工事をスムーズに導いていった。

成否の鍵を握った若手の活躍もあった。6年目の職員住永は、桁を載せる橋脚の施工を担当した。着工が遅れていた1本の橋脚を急速施工で完成させた。

基礎杭の施工では、掘削の際に周囲の土をセメントで固めて矢板を省いたり、躯体部分は数ブロックに分けて工場で製作してから現地で組み立てる「ハーフプレキャスト橋脚」を用いたりと攻めの施工を展開。住永は「急ぐからこそ品質を上げることにこだわった。上部工に引き継げた時はほっとした」と、達成感をかみしめていた。

一括架設を支えた構台
あらかじめ組み立てた凾体状の橋脚躯体は、配置済みの主筋を内部に通しながら縦積みし、頂上部からコンクリートを打設して構築
架設に先立ち取り組んだ下部工。60基の橋脚が立ち並ぶ

不要な緊張、皆で取り除く

架設日が差し迫るにつれ、職員一人ひとりに重くのしかかってきたプレッシャーを早めに取り除くことを心がけたと所長の大野は話す。朝夕の会議で、各人は直面した課題や悩みを発信、早期に全員で共有し解決の道筋を付けていった。現場内に根付いたAll for one, One for allの精神は、安全、品質面にも好結果をもたらす。困難な仕事を乗り越えられた要因がこんなところにも見てとれた。

大野は最後にこう付け加えた。「プレッシャーや緊張感は、ないよりはあった方がいい。これまでの成果が無駄にならないように、残りの仕事こそ今まで以上に気を引き締めて取り組んでいきたい」。

(取材2015年1月)

工事概要

名称上越幹大宮・熊谷間圏央道Bo新設他工事
場所埼玉県桶川市五町台
発注東日本旅客鉄道(事業者:NEXCO東日本)
概要主桁地組・架設工2本(支間長60m、幅員11m、一括架設工法)、架設構台設置工他
工期2014年1月~2015年7月
施工大林組

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