プロジェクト最前線

東北を復興から創生へつなぐ道

国道45号 吉浜釜石道路工事、国道283号 釜石道路工事

2016. 03. 09

東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の三陸海岸。その沿岸部を南北につなぐ「復興道路」と、沿岸部と内陸部をつなぐ「復興支援道路」の建設が急ピッチで行われている。

両道路建設のうち、大林組は岩手県釜石市内の2区間を施工している。一つは復興道路の国道45号吉浜釜石道路。もう一つは復興支援道路の国道283号釜石道路だ。

国道45号吉浜釜石道路の総延長は23km。大林組JV(以下、吉浜釜石道路JV)が施工しているのは、トンネル3本と高架橋2橋を構築する3km区間だ。国道283号釜石道路の総延長は6km。大林組(以下、釜石道路)はその区間のうち、点在する数箇所でトンネル1本と橋梁下部工14基、上部工1橋などを担当している。

開通により、都市間の所要時間短縮、地域間の連携支援などが期待されている

耐久性の高い橋脚をより早く

「道路建設は東北の新たな社会基盤を造るインフラ工事です」と吉浜釜石道路JVの所長 松野は話す。求められるのは、早期の開通と開通後のメンテナンスを極力減らす耐久性だ。そのためにはコンクリートの品質確保が肝要。両現場ではコンクリート構造物の施工にさまざまな社内外の技術を取り入れている。

吉浜釜石道路JVの橋脚工事で取り入れたのがキャンバーフォーム(CF)工法だ。従来の工法で打設可能な高さは1日約5mだが、CF工法では約10mの高さを打設でき、コンクリートの密実性が確保できるのが特徴だ。

まずH鋼を1mピッチで建て込み、その間に縦90cm、横90cmの合板を3枚重ねた専用パネルを並べて橋脚の型枠とし、コンクリートを打設する。

高さ90cmずつ打設することで、コンクリートの確実な締め固めができ、品質が高まる。打設を終えるとパネルを積み上げ、再度打設するという工程を繰り返していくこの工法では、手間は増えるが3層構造のパネルが高い強度を生み出し、1日10mの高さでも高品質なコンクリートの打設が可能となる。

90cmずつ打設するCF工法。間近でならすため密実性が増す
CF工法で造った橋脚には等間隔の線が見える

路面を長く使い続けるために

床版(自動車などの荷重を直接受ける面)にエポキシ鉄筋を配筋し、コンクリートを打設した

釜石道路では、気候風土に適応する耐久性の高い床版(高耐久床版)の施工を行った。寒冷地では特にコンクリート中の水分が凍結と融解を繰り返すことでコンクリートにひび割れを発生させる「凍害」や、道路の凍結を抑える凍結防止剤(塩化ナトリウム)の散布によってコンクリート中の鉄筋がさびる「塩害」などが生じる。これらによる躯体の劣化をどう抑えるかが課題だ。

高耐久床版の施工に当たっては、以下のように複数の対策を行った。

1.コンクリートの長期的な強度を生み出すための混和材・フライアッシュ(石炭を高炉で燃焼した石炭灰)の配合割合を算出

2.コンクリート中の空気量を高め、隙間をつくることで体積膨張を緩和。凍害によるダメージを防ぐ

3.寒期のコンクリート打設で生じる表層と内層の温度差によるひび割れを養生して防ぐ

4.鉄筋コンクリートの塩害防止のためにエポキシ樹脂を施した鉄筋を使用

耐食性、曲げ加工に優れたエポキシ樹脂塗装鉄筋。寒冷地の橋脚、橋梁などに活用される
複数の対策でさまざまな要因から生ずる劣化を防ぐ

トンネル技術を駆使して安全性と施工精度を上げる

吉浜釜石道路JV、釜石道路の両現場で取り入れているのが「トンネルナビ」だ。通常は掘削後に地山の硬さなどを精査し、それに見合った支保パターンでトンネル内部を覆うが、発破前に50mの細いドリルで前方を探査。これから掘削する地山の強度や地層、湧水の有無を事前に把握することで適正な支保パターンの選定と安全性の確保に役立てている。

また、吉浜釜石道路JVでは地質や覆工コンクリートのデータをCIM(Construction Information Modeling)に落とし込んだ3次元データを発注者へ提供。今後の維持管理に活用してもらう予定だ。

トンネルナビの細いドリルで前方を探査し支保パターンを決定していく
超音波加湿器から発生したミストが黄色のダクトを通りシート内の湿度を保つモイストキュア

トンネル内の覆工コンクリート打設後の養生にも気を配る。温度の低下と乾燥によるひび割れを防ぐモイストキュアを採用。打設後のコンクリートをシートで覆って密閉空間を作り、温度の低下を防ぐとともに、超音波加湿器からミストを送り出すことで湿度を保つ。こうして高品質で高耐久のコンクリートを生み出している。

支え合う2つの現場

2つの現場間は車で20分程度。作業員や資材、工事機械の不足など抱える問題は共通している。トンネル工事の作業員は吉浜釜石道路JVでの貫通後、釜石道路のトンネル工事に従事した。

また、両現場の各担当班が頻繁に打ち合わせを行い、工程や安全の管理について互いに情報や知恵を出し合っている。力を結集させてこのプロジェクトを完遂させるという意気込みが伝わってくる。

地元釜石市民から寄せられる期待も大きく「注目されている事業であることは間違いない」と吉浜釜石道路JVの松野と釜石道路の所長の永久は口をそろえる。安全祈願祭や貫通式、見学会には地元住民も多く駆け付け、小学生に演舞を披露してもらうなど親交を深めている。

3本のトンネルと2本の高架橋の建設を進める吉浜釜石道路JV

復興と創生への思い

若手社員に対して、魅力ある現場にしたいというのが所長 松野の考えだ。そのためには「新しい技術にチャレンジできる土壌をつくり、ここで育ってもらいたい」と話す。永久は「たくさんの工種があるこの現場で働くことをチャンスと捉え、経験を積んでほしい」と語る。

「復興はまだ道半ば。この道路を完成させることで東北地方の発展に寄与したい」と、竣工に向けた両所長とも思いは一致している。2018年の供用開始をめざす復興道路と復興支援道路。この2つの道路がつながったとき、東北の街の復興は加速し、さらにはその先の創生へと歩みを進めるだろう。

釜石道路の現場において、複数の対策を講じた高耐久床版は日本初の施工事例となった

(取材2016年1月)

工事概要

名称国道45号 吉浜釜石道路工事
場所岩手県釜石市
発注国土交通省
設計国土交通省
概要荒川トンネル延長1,169m、唐丹第1トンネル延長465m、唐丹第2トンネル延長521m、唐丹第1高架橋延長306m、高さ36m、唐丹第2高架橋延長352m、高さ45m
工期2014年3月~2017年3月
施工大林組、富士ピー・エス
名称国道283号 釜石道路工事
場所岩手県釜石市
発注国土交通省
設計国土交通省
概要定内トンネル延長808m、橋梁下部工14基、上部工1橋、切盛土工事25万m3
工期2014年9月~2016年7月
施工大林組

ページトップへ