プロジェクト最前線

8千㎡超の大規模工場を木×コンクリートのハイブリッド構造でつくる

内外テクノス本社工場 建替計画

2022. 12. 12

約28m×85mの無柱空間がある新工場では木材の加工作業などが行われる

大林グループは、循環型資源である木材の利用拡大、促進による持続可能な社会の実現をめざし、さまざまな木造建築の普及に積極的に取り組んでいる。木工事を中心に手がける大林グループの内外テクノスでは、本社工場を木とRC(鉄筋コンクリート)のハイブリッド構造による大規模工場に建て替える。


木造・木質化推進の情報発信基地

木造作の老舗・内外テクノス

完成予想図。工場棟は左右対称(木造+RC造)の建物と中央部(RC造+S造)で構成される

内外テクノスは、1895(明治28)年の創業以来、伝統建築からホテルまで幅広い物件の高級木造作工事を手がけてきたリーディングカンパニーだ。同社は、埼玉県ふじみ野市にある本社工場(以下、旧工場)の老朽化に伴い、大規模工場(以下、新工場)への建て替えを計画した。17棟の建物に分散していた旧工場を工場棟と事務所棟に集約し、解体、新築、移転を繰り返すローリング施工で行っていく。

2021年8月に完成した1期工場棟では、木材の加工作業をすでに行っている。「内外テクノスは大林グループですが、同業他社からの受注も多いため、製品検査などの際に設計事務所や他社の関係者が頻繁に来所します。だからこそ、大林グループとして恥ずかしい仕事はできません」と所長の正田は言う。新工場は「見せる工場」として、大林グループの木造・木質化推進の情報発信基地の役割も担っている。

屋根は木トラス、壁・柱はRC造を採用

ローコストな木造ハイブリッド構造を確立

建築技術性能証明の取得に向け、設計部門が中心となってモックアップで検討

新工場は延べ面積8,000m²を超える規模で、今回、壁・柱をRC造とした「準耐火建築物における大規模木造建築」のプロトタイプとなることをめざした。最新の法規制(※1)に適合し、防火を目的としたRC区画壁に直接梁を接続した国内初の大規模木造建築物となる。

RC壁と木トラスの梁を直接接続できる設計方法を確立し、建築技術性能証明を取得。特許も出願中である。

また、屋根に使用する木造部材は、大林組独自技術であるオメガウッドにより、一般に流通する短尺な部材を耐力ビスでつづることで延伸し、大断面部材としている。通常必要となる接続部の金物プレートなども大幅に削減してコストダウンを図っている。

  • ※1 基準法第21条
新工場の構造

最大28mの木造トラス

新工場の無柱空間は、木トラス架構で構築する。トラス梁は、両側の壁面から伸びる片持ちとし、左右の先端同士を空間の中央でピン接合。同一形状を接合しユニット化することで、施工手順の簡素化を図っている。

木材を使う場合は、雨や雪への対策が必要だ。木は水分を含むと膨張し、乾燥すると縮む。2022年3月に完成した日本初の高層純木造耐火建築物「Port Plus大林組横浜研修所」でも、水分・湿気による寸法変化には悩まされた。本工事で利用する大断面の木材も、搬入された状態のまま防水・防湿のために完璧に養生するのは不可能だと考え、工程を検討した。

その結果、現場にトラックで木材が搬入されるとすぐにブルーシートで養生。可能な限り当日中にトラス架構に地組みし、設置を完了するようにした。所長は「トラス材を壁に取り付けてしまえば、多少雨などで濡れても問題ありません。鉄骨は天候に関係なく施工できますが、やはり木造の最大の敵は水です」と木を使うことの難しさを語る。

1本が2分割されて搬入される木トラス
搬入当日に木トラスを地組みして1本に加工
1スパンのトラス架構は4本の木トラスで構成され、エックス型になるように組む
地組み後、クレーンで吊り、所定のベースプレートに設置。重量は500kg程度で鉄骨に比べ軽量だが、風の影響を大きく受けた

高さ8mの打ち放しコンクリート

新工場内部の四方の内壁は、全て化粧打ち放しコンクリートになっている。仕上げをせずコンクリートの素材感をそのまま見せるため、やり直しがきかない。一発勝負の打設には緊張感があり、精度の高い施工が求められるため、経験豊富な熟練者が必要になる。しかし、化粧打ち放しコンクリートを採用する新築物件が減り、経験者も年々減少している。そこで、同工法を採用している他の建設現場に施工担当者を派遣。打設を体験させ、ノウハウや最新の知識を現場に持ち帰り、その社員が中心となって新工場の打設を進めた。

今回打設する壁は、8mを超える高さがある。使用するバイブレーター類の機材選定にも時間をかけ、協力会社と何度も勉強会を実施し、コンクリート打設を行った。

化粧打ち放しコンクリートの内部壁。壁面は上部に向かって傾斜が付き、高さは8mを超える

手仕上げにこだわった外壁

外壁の大断面は、下地メッシュ素材を用い、4層構造の外断熱壁を採用。外側の仕上げは塗装コテ塗りとし、専属の左官工が手作業で仕上げた。

仕上がりはコテの抑え方次第で違って見えるため、同じ作業員、もしくは同レベルの作業員を配置する必要があった。また、この壁には目地がなく、一度始めたら手を休めることなく、2時間程度集中して作業する必要がある。誰でもよいというわけにはいかない。工事期間が空いた1期と2期工事に同じ作業員を確保した。

大断面で目地のない外壁を実現
左官工がコテで仕上げた外壁

ローリング施工だからできること

工場棟のローリング施工では、工場を二分割して作業を行い、躯体工事、仕上げ工事とも、ほぼ同じ作業を2回行う。2期工事に着手する時に所長の正田は、「どんなことでも少しでもいいから改善を図ること」と皆に呼びかけた。同じことをやっても面白味がなく、工期短縮、コスト低減につながらない。生産性を向上させる方法を考えた。

まず、化粧打ち放しコンクリート打設で改善を図った。1期工事では1日の打設量が50m³で、四方の壁の打設に18日かかったが、日数を短縮するために、コンクリート打ち継ぎや流れ止めの位置を工夫して1日当たりの打設面積を広げ、2期工事では、打設日数を10日に短縮することができた。

コンクリート打設時期が冬だったという季節的な利点はあったが、大林組社員も協力会社作業員も、一日中緊張状態でコンクリートを打設し続けた疲労は想像以上だった。打設日数を短縮することは、大きな改善。関係者全員が力を合わせて頑張った、価値ある成果だ。

内外テクノスが内装を手がけた化粧室の手洗い場。木を利用した落ち着きのあるデザイン
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純木造の事務所棟(左)と木造ハイブリッド構造の工場棟(右)

「日々、さらなる改善を追求しています。やはり木材とRC造のハイブリッド構造によるローコスト工場のプロトタイプになる建物ですから、安全に、安く、早く建てることを追求していく使命が当現場にはあります」と話す正田の横顔からは、本プロジェクトをやり抜く強い決意を感じた。

事務所棟の前で。工場棟と併せて工事が進んでいる

(取材2022年7月)

工事概要

名称 内外テクノス本社工場 建替計画
場所 埼玉県
発注 内外テクノス
設計 大林組
概要 【工場棟】(梁)木造、一部S造/(柱・壁)RC造、1F、延べ8,845m²
【事務所棟】木造、1F、延べ822m²、掘削工(深度約16m、約9万m³)
工期 2020年7月~2023年6月
工場棟1期:2020年10月~2021年8月
工場棟2期・事務所棟:2021年9月~2022年10月
外構他:2022年2月~2023年6月
施工 大林組

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