
アメリカ合衆国のフーバーダム下流で、大林組JVはネバダ州とアリゾナ州の境を流れるコロラド川に架かる「コロラドリバー橋」の建設を進めている。フーバーダムは1931年から1936年に造られ、400億トンを誇る貯水量は日本の全ダム合計をしのぐ。国定歴史建造物に指定されるなど、"アメリカの偉業"ともいわれるダムだ。
しかし、フーバーダムは、ビジターセンターの見学ツアーに年間約100万人が参加するほどの観光地となり、ダムの上を通過する幹線道路US93では交通渋滞が慢性化した。また、周辺は急峻な地形が続きカーブが多いことから交通安全上の問題も抱えていた。そこでアメリカ連邦高速道路局によって計画されたのが、ダム下流の渓谷をまたぐバイパス道路「コロラドリバー橋」である。
北米で最長支間のコンクリートアーチ橋に挑む
コロラドリバー橋は、大きな弧を描く梁(アーチリブ)が道路デッキ部を支える構造で、323メートルに及ぶアーチ支間は、コンクリートアーチ橋としては北米で最長となった。施工にあたっては、両側に立てた仮設の塔(ピロン)からケーブルでアーチリブを支えながら、施工部分を両側から中央に向かって送り出す工法が採用された。
美しいアーチが特徴的な一方で、露出した岩の断崖絶壁に橋脚などを構築し、空中で巨大なコンクリート構造物を施工していく作業は、非常に難易度の高い技術が要求される。工事の進捗に伴いアーチの構造系が変化する過程では、ピロンやアーチへ作用する荷重も刻々と変化するのだ。現場では、アーチやケーブルの挙動を三次元で解析するなど、綿密な施工管理でプロジェクトを進めている。

大林組が、世界の橋の歴史に名を残す
2005年にスタートした工事は、昨年8月にアーチの閉合部の施工が完了し、2本の美しいアーチが姿を現した。現在はピロンやケーブルも撤去され、桁上の床版などを施工中だ。
大林組が高い技術と総合力で挑む工事は、2010年11月の開通予定に向けて佳境に入った。世界の橋の歴史に名を残すべく、アメリカの地における挑戦は今日も続く。


