中規模木造建築の準耐火構造提案を支援する計算ツール「SynchroMOK™」を開発
燃えしろ深さの算出をBIM連携で効率化、火災・避難時の倒壊防止性能を検証
-
プレスリリース
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、火災時倒壊防止性能検証法(※1)および避難時倒壊防止性能検証法(※2)に基づく木構造の燃えしろ深さ計算をBIMと連携して行うツール「SynchroMOK(シンクロモック)」を開発しました。
開発の背景
建築物の木造化は、3階以下の低層住宅では木造率83.9%、低層非住宅建築物では15.5%であるのに対し、中高層建築物では住宅・非住宅ともに0.1%以下に留まります(※3)。公共施設をはじめ中規模建築物の建て替えや市街地再開発が進む中、これらの建築物を純木造(※4)で新築することは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて大きく寄与します。
中規模建築物を純木造で設計するには、火災の規模や被害を抑え、避難時に建物が倒壊しないよう主要な構造部分に特別な安全性が求められます。そのため、火災時に木材が燃えてもすぐに崩れないよう、木材の表面が炭化する深さ(=燃えしろ深さ)を計算する必要があります。この計算は、火災時倒壊防止性能検証法および避難時倒壊防止性能検証法に基づく火災継続時間の算定によって行われますが、その計算の複雑さからこれまで中規模建築物を純木造で建てる際の大きな障壁となっていました。
そこで大林組は、設計の効率化を図るためBIMと連携して燃えしろ深さを自動計算するツールSynchroMOKを開発しました。
SynchroMOKの構成、特長
BIMワンモデルを用いた正確で円滑な評価
大林組は、自社のBIM業務標準Smart BIM Standard®(※5)に基づいたBIMワンモデルの一貫利用を推進しており、今回開発したSynchroMOKをBIMワンモデルと連携することで、中規模建築物の木造化実現性評価を円滑に行います。すでにBIMワンモデルと相互連携し、各種性能評価に必要な情報を抽出可能なSmartHAK®、SHAREDTIK®、SmoothSEK®を運用しており、SynchroMOKがこれらに加わることで、法的審査に必要な情報の抽出がさらに高度かつ効率的に行えるようになります。
BIMデータの自動抽出による燃えしろ深さ計算の省力化
SynchroMOKは建物の設計情報が入力されたBIMモデルと連携し、構造データを自動抽出することで、燃えしろ深さの計算を効率化します。歩行距離や歩行速度などの基本的な避難情報を入力するだけで、必要な構造情報をBIMから自動取得して燃えしろ深さを短時間で算出します。例えば5階建て、延べ面積2,500m2の建物の場合、従来の方法では4時間弱かかっていた計算が、SynchroMOKを使用すれば30分程度で計算完了するため、80%以上の省力化を実現します。
なお、建築確認申請にSynchroMOKが使用可能であることは検証済みです。
今後の展望
大林組はSynchroMOKによる木造化実現性評価の効率化を通じて、建て替え需要の高まる中規模建築物に対し、純木造化の提案を推進し、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。
また、自社開発の性能評価ツールとBIMパラメータとの連携をさらに強化し、設計作業の一層の効率化に向けた検討を進めてまいります。
- ※1 火災時倒壊防止性能検証法
木造建築物などの高さ制限、規模に関する延焼防止などの制限を性能的に評価し、通常の火災に対する公設常備消防の消火の措置により消火されるまでの間、主要構造部が倒壊しないことおよび延焼を防止することを確かめる方法 - ※2 避難時倒壊防止性能検証法
特殊建築物の主要構造部への耐火要求を性能的に評価し、通常の避難および救助検索が終了するまでの間、主要構造部が倒壊しないことおよび延焼を防止することを確かめる方法 - ※3 建築物の木造化比率
出典:林野庁プレスリリース(2025年3月26日)
「令和6年度 建築物における木材の利用の促進に向けた措置の実施状況の取りまとめ」等について - ※4 純木造
柱、梁、壁などの建物の主要構造部に木材を使った構造 - ※5 Smart BIM Standard(SBS)
大林組のBIM業務標準。BIM一貫利用を幹とし、プロジェクト関係者が等しく理解できるBIMモデルをつくるための基準。Smart BIM Standardウェブサイトで一般公開している
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組コーポレート・コミュニケーション室広報課
お問い合わせフォーム
プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。