長大トンネルに「スペースパック工法®」を適用するための長距離圧送型注入材を開発

狭い坑内や延長2,000mのトンネルでも補修工事が可能です

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、長大トンネルの補修工事にも「スペースパック工法」を適用できる、ミルクタイプの長距離圧送型注入材を開発しました。

新材料を適用した長距離圧送工事の様子(トンネル内空(幅1.5m×高1.8m))

トンネル構造物は、老朽化すると覆工コンクリートと背面地山との間の空洞が原因となり、地山との一体化が損なわれることで、覆工コンクリートのひび割れなどが発生します。

大林組が開発した「スペースパック工法」は、可塑性(静置状態では形状を保持するが、振動・加圧により容易に流動する特性)を持つ注入材を充てんすることで、これらの背面空洞を確実にふさぎ、トンネル構造物の耐久性・安定性の向上を実現する技術です。従来から標準仕様のモルタル型に加え、湧水対応型など多数の注入材を開発することで、多種多様な施工条件に対応してきました。

従来型の製造システム例
長距離圧送型の製造システム例

今般、大林組は新しい材料として、2,000mまで圧送可能な長距離圧送型注入材を開発しました。圧送距離が伸びたことにより、従来型では長距離圧送に必要としていた中継ポンプなどが不要となるため、延長が長いだけでなく内空断面が小さいトンネルにも「スペースパック工法」を適用できます。また、超遅延剤を添加し24時間管内に注入材を残置できる遅延型配合とすることで、材料の廃棄を大幅に削減できます。

今回開発した長距離圧送型注入材は、大林組が他社と共同で設立したスペースパック工法研究会(事務局:株式会社テクノ・ブリッド、所在地:東京都渋谷区)を通じて、発電用水路トンネルでの補修に採用され施工しました。

今回開発した長距離圧送型注入材の主な特長は以下のとおりです。

坑内の施工設備を最小限に抑えられます

従来の注入材は、2種類の粉体系材料と水を練り混ぜて製造する1液性配合の材料で、坑内で製造するか、坑外で製造しアジデータ車で坑内に運搬する、あるいは1本の配管でポンプ圧送して空洞に注入します。しかし、ポンプ圧送は圧送距離が延びると管内圧力が上昇するため、500m以上の圧送には中継ポンプなどを坑内に設置しなければならず、車両や設備が入らない内空断面が小さく延長が長いトンネル補修工事には適用できませんでした。

今回開発した長距離圧送型注入材は、2種類のスラリー(※1)を2本の配管で施工箇所の手前まで圧送し、混合管で混ぜたうえで空洞内に充てんするため、2,000mまで圧送が可能です。そのため、坑内には小径の配管類と混合管など小さく軽い設備だけを持ち込めばよく、施工に係る設備を最小限に抑えることができます。

材料コストを削減できます

今回開発した注入材は、昼夜2方施工用の標準型配合のほか、超遅延剤を添加することで、昼間1方施工用として製造から24時間管内に残置できる遅延型配合も可能です。夜間作業をしない現場でも夕方から翌朝まで管内にスラリーを残置できるため、作業終了後の廃棄や管内洗浄が不要となることから、材料のロスを大幅に削減できます。

今回の開発により、高速道路などの長大トンネルはもとより、小断面で長距離の水路トンネルなど、内空断面や延長の大小にかかわらず幅広く「スペースパック工法」の適用が可能となりました。大林組はこれからも「スペースパック工法」を積極的に提案し、安全・安心に向けたインフラ整備、国土強靭化に貢献します。

  • ※1 スラリー
    粉体系材料と水を混合して流体状にした混合液

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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