箕面市立文化芸能劇場・箕面市立船場図書館・箕面市立船場生涯学習センターは、北大阪急行電鉄南北線「箕面船場阪大前駅」の開業に先駆けて、2021年に駅前地区に誕生した、街づくりの核となる複合施設です。かつては竹林が広がっていたこの土地は、1970年開催の日本万国博覧会(大阪万博)を契機に繊維問屋街として発展し、そして今、新駅開業を機に教育と文化の街へと再び生まれ変わりました。
生まれ変わる街の象徴的な施設を設計するにあたり、街の歴史をひもといて継承する建築としながらも、人々の関わり合いを促す施設をめざしました。
多様な「箱」を積層する
劇場施設の各機能は、「箱」として分割し、その箱をずらしながら積み上げるように建屋を構成しました。
一つひとつの「箱」を小さくすることで圧迫感を減らし、新たな活動の場を生み出します。また、「箱」をずらすことで生まれた隙間からは、にぎわいや明かりがあふれ出します。
街の記憶を継承したファサード
これら施設が建つ箕面市には、「日本の滝百選」にも選ばれた箕面大滝があります。"箕面"の地名は、一説によると箕面大滝の流れ落ちる姿が農具の「箕(み)」の「面」(表面)に似ていることに由来するといわれています。
また、以前この街は繊維問屋街だったことから、「箕」や「繊維」のイメージを建築に落とし込み、織物を表現したファサードをデザインしました。街の様相は生まれ変わっても、これまでの記憶を継承した建築をめざしました。
まるで街中を散策するような体験をデザインする
劇場の設計では、街と立体的につながり散策路となることをめざしました。建物内にいながらも、まるで街中を散策するかのような体験を得られる空間を実現しています。
箕面の大滝・竹の織物を模した劇場空間
約1,400の客席を配置した大ホールは、空間全体で箕面の大滝を表現しています。意匠性だけでなく、音響性能も重視した形態・素材を採用しています。
小ホールは、防振ゴムによってホールを丸ごと浮かせた浮き遮音構造を採用しました。これにより、大ホール・小ホールそれぞれで発生する音が互いに影響しないため、両ホールの同時利用を可能としています。
さまざまな学びの場がらせん状に混ざり合う図書館・生涯学習センター
箕面市立船場図書館は、日本初の公・大連携図書館として、市立図書館と大阪大学図書館の蔵書を所蔵し、一体運営されています。ペデストリアンデッキから接続する2階に箕面市の蔵書、3・4階に大阪大学の蔵書を配置、5・6階に箕面市立船場生涯学習センターが入居しています。
閲覧室や活動室を立体的に配置し、それらを結ぶようにらせん状に吹き抜け空間を立ち上げました。各階はゆるやかにつながり、市民や学生が交ざり合う街の風景をつくり出します。