昨今、建設業界では、人材の高齢化や人手不足、時間外労働の上限規制など、多くの課題を抱えています。
oak港南品川は、品川駅(東京都港区)からほど近い、地下1階、地上12階建てのオフィスビルです。このビルの大きな特徴の一つとして、その課題を解決すべく、建設現場での生産性向上をテーマに掲げたことが挙げられます。オフィスビルとしての価値を高めることはもちろんのこと、生産性向上を目指した設計とは――。
大林組の設計・施工が一丸となって導き出した設計手法をご紹介します。
ブロックを積み上げるように部材を組み上げる
oak港南品川では、建設現場での生産性を高めるため、シンプル化、ユニット化、建設現場での作業削減を目指しました。可能な限り工場製作し、その組み立て方法も工夫しています。
例えば、柱と梁を水平に接合する場合、梁を持ち上げながら位置合わせを行うため、上から下へ落とし込む垂直方向の接合に比べて高度な施工技術・精度が求められます。oak港南品川の施工では、水平方向ではなく、あらかじめ工場で製作したプレキャスト鉄筋コンクリートの部材を垂直方向に接続するのみで組み立てられる方法を考案したことで、施工性を飛躍的に向上させました。
意匠・構造・設備が融合した合理的な外装計画
外装と構造を兼ね備えたプレキャスト鉄筋コンクリートの柱・梁の内側には、給排気や自然換気の設備ユニットを組み込んだアルミカーテンウォールを設置しています。
意匠・構造・設備が融合したパーツを積層することにより印象的な外観をつくり出すとともに、生産性を最大限に向上させました。
このように施工の効率化を図ることで、従来工法に比べて作業員数の削減を実現しました。
室内空間の最大化と空調負荷軽減を実現
プレキャスト鉄筋コンクリートによる構造・外装計画は、オフィスビルとしての付加価値向上にも貢献しています。柱の断面形状を正方形でなく長方形とし、室内側に突出しない構成とすることで、外装まわりの室内有効空間を最大限に確保しました。
また、屋外側に突出した柱と梁は、断熱と日射遮へいの効果を生み、空調負荷の低減につながっています。この構造をはじめ、さまざまな省エネ性能を備えたoak港南品川は、1次エネルギー消費量を50%以上削減するZEB Ready(ゼブレディ)や、健康・快適性を支援する建物を評価する国内認証制度であるCASBEE Sランクの認証を取得しています。
ファサードデザインをモチーフとしてインテリアに展開
外観の特徴的な形状は、インテリアにおいてもモチーフとして展開され、外部から内部へとつながる連続性の中で一貫した親和性を生み出します。
エントランスの特徴的な光壁は、合わせガラスの中間膜に外観ファサードを模した柄を印刷し、ガラスの背面にはサイズの異なる柄のフィルムを貼り付けることで構成しました。2つのパターンが重なりあうことで、見る角度によって平行モアレ(2つの異なるパターンが重なり合ったときに生じる干渉模様)が生じ、ガラス面に奥行きを与える視差効果を生んでいます。
建設現場の生産性向上と建物の付加価値向上に同時に取り組めるのは、早期に設計と施工が連携できるゼネコンとしての強みの一つであると、大林組は考えます。oak港南品川の設計手法を一つのモデルケースとして、人材の高齢化や人手不足といった建設業界における課題解決に貢献していきます。