日建連表彰2022「BCS賞」「土木賞」を受賞

サステナビリティ

日本建設業連合会が主催する「日建連表彰2022」が発表され、「GREEN SPRINGS」、「THE HIRAMATSU 京都」、「ダイヤゲート池袋」がBCS賞を、「千本ダム耐震補強改修プロジェクト」が土木賞を受賞しました。

日建連表彰は、建築部門のBCS賞、土木部門の土木賞の2部門で構成される表彰制度です。BCS賞は、文化の発展と地球環境の保全に寄与することを目的に優良な建築物を、土木賞は、国民生活と産業活動の基盤の充実に寄与することを目的に優良なプロジェクトや構造物を表彰するものです。

今年で第63回を迎えるBCS賞は、78件の応募の中から15件が、第3回となる土木賞は、41件の応募の中から12件(特別賞2件を含む)がそれぞれ選ばれました。

第63回BCS賞

GREEN SPRINGS

GREEN SPRINGSは、エリアの価値と街の持続性向上をめざし、「空と大地と人がつながる、ウェルビーイングタウン」をコンセプトに開発された複合施設です。

施設は、東京・JR立川駅北側の商業集積エリアと国営昭和記念公園の結節点に位置し、街との連続性と緑豊かな景観形成がデザインの骨格となるよう計画されました。

1階の見えない部分に駐車場を集約し、人工地盤の2階レベルに街の中心的な存在である約1haの広場を計画。これを取り囲むように、オフィスや店舗、ホール、ホテル、美術館、保育所などの施設が配置されています。広場を介して自然と建物、人々の活動が緩やかに重ね合わさり、多世代間の交流やにぎわいが生まれました。

今回の受賞では、コンセプトに沿って、寛容で風通しの良い、人々の心の拠り所になる空間を創出したとして高く評価されました。

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立川のポテンシャルを活かし、自然と文化、先端技術が融合した街づくりを行った(撮影:根本健太郎写真事務所)
建築主 立飛ホールディングス、多摩信用金庫
設計者 スタジオタクシミズ、ランドスケープ・プラス、山下設計、大林組、清水建設、CURIOSITY、ライトデザイン、井原理安デザイン事務所、POOL、フレームワークス、シアターワークショップ
施工者 大林組、清水建設、中島建設、中村建設

THE HIRAMATSU 京都

京都の山鉾町に建つ築100年超の京町家を、施設の一部として保存・活用したホテル建設プロジェクトです。京町家の庭と建築、インテリアを統合し、施設の中に伝統と新規性が融合された美しい空間と生活様式を再構築しました。

室町通りに面する表家の耐震補強には、伝統木造工法において少ない壁量で高い剛性と耐力を発揮するスーパー板壁工法を採用しました。保存と再生をテーマに既存建物の木材や瓦、樋(とい)などを活かして修復し、新築建物に取り込みました。内装には京都の厳しい美意識の中で育まれた手仕事による土壁や和紙、木などの仕上げを多用しています。

今回のプロジェクトで実現された保存再生は、歴史的建造物をそのまま残す保存改修ではなく、空間性や美意識・伝統技術など町家の遺伝子を受け継いだ歴史の発展的継承であり、歴史の継承と経済性を共存させ、困難な状況にある京町家の保存に新たな可能性を切り拓いたとして評価されました。

保存・復元したことで、室町通りにふさわしいファサードを創出した(撮影:伊藤彰(アイフォト))
建築主 NTT都市開発
設計者 日建設計、大林組、中村外二工務店
施工者 大林組

ダイヤゲート池袋

東京・池袋に、西武池袋線の線路をまたぐ大規模オフィスビルを建設しました。V字柱と斜め格子が特徴的な外観は、鉄道の運行図表であるダイヤグラムを表現しています。

商業エリアでの鉄道近接工事であったため、第三者災害の防止、資材の搬出入・作業エリアの確保を考慮し、逆打ち(さかうち)工法で1階に先行床を構築。掘削面を先行床で支えることで地下工事による鉄道への影響を抑えました。線路上空の人工地盤の鉄骨組み立てでは、事前に足場を構築し、鉄道への電力供給を停止する夜間2時間半で作業を行いました。

今回の受賞では、鉄道線路上空にデッキを架けることにより、鉄道によって分断されていた街をシームレスにつなげる広場を創出したこと、広場上空に大きなワンプレートオフィスを構築し、地域の魅力と価値の向上に寄与したことが評価されました。


中間免震構造を採用した防災性の高いビルは、災害時には地域の災害拠点としての役割を担う
建築主 西武鉄道、西武リアルティソリューションズ
設計者 日建設計、トーニチコンサルタント
施工者 大林組、西武建設

第3回土木賞

千本ダム耐震補強改修プロジェクト

千本ダムは、島根県東部に位置する、1918年に完成した水道専用の重力式コンクリートダムです。建設後約100年が経過した現在も島根県松江市の水道用水の4分の1を供給しています。その歴史的価値の高さ、石積み外観の美しさから国の登録有形文化財に指定されています。

2011年のダム健全度調査により、地震時の堤体の安定性に問題があることが確認されたため、堤体の耐震補強工事を行いました。工事ではダムの機能を維持しながら文化遺産としての姿を保持するため、ダム天端から鉛直下方の岩盤にアンカーを定着。ダム堤体を固定する「堤体PS(プレストレス)アンカー工法」を国内で初めて採用しました。

今回の受賞では、日本初の工法を採用し、文化遺産としての姿を保ったままリニューアルを行ったことや、従来工法に比べて工期を5分の1に、施工費用を半分以下に削減したことなどが評価されました。

山陰で最も古い石積み堰堤の水道専用ダム。今後100年の耐久性を見据えて、アンカーの二重防食などを実施した(提供:松江市上下水道局)
施設管理者 松江市上下水道局
設計者 ダム技術センター、中電技術コンサルタント
施工者 大林組
関係者 日特建設、大林道路、藤井基礎設計事務所、田部石材

大林組は今後も、「ものづくり」に携わる設計者、施工者として、発注者の思いに応え、利用者に寄り添う建築物・社会基盤を創出するとともに、安全な暮らしの提供、文化の創造・継承、建設技術の発展に努めてまいります。