R4国道20号新笹子トンネルその1工事に「OTISM/TUNNELING®」の技術を集約し実装

安全性を確保し、20%の省人化により生産性が向上しました

技術・ソリューション

大林組は、山岳トンネルの掘削作業の安全性向上と省人化を実現する統合システムOTISM/TUNNELING(オーティズム/トンネリング)の構成技術を集約し、R4国道20号新笹子トンネルその1工事の建設現場に実装しました。危険を伴う山岳トンネルの掘削面(切羽)直下に人が立ち入ることなく、また、技能労働者の熟練度に依存せずに省人化した施工を実施し、掘削作業の一連の工程において安全性と生産性の向上を確認しました。

国道20号新笹子トンネルでの遠隔によるコンクリート吹付け作業の様子

開発の背景

山岳トンネルの掘削作業では、切羽で岩石が落下する「肌落ち」災害や重機災害のリスクに加え、就労人口の減少や熟練技能労働者の不足など、安全性と生産性の両面での向上が求められています。また、国土交通省が掲げるi-Construction2.0(※1)では、「建設現場のオートメーション化」により、「今よりも少ない人数で、安全に、できる限り屋内など快適な環境で働く生産性の高い建設現場」を実現することを目指しています。

大林組は、山岳トンネルの施工における安全と品質、生産性を飛躍的に向上させる統合システム「OTISM®(※2)」を構築しており、これまでにさまざまな現場で各技術を個別に実証してきました。OTISMを構成するOTISM/TUNNELINGは、トンネル掘削作業の安全性向上、省人化を実現するシステムであり、「穿孔(せんこう)・装薬」「ずり出し」「吹付けコンクリート」「支保工建込み」「ロックボルト打設」の5つの作業分野の技術開発を行っています。

このたび、OTISM/TUNNELINGの技術をR4国道20号新笹子トンネルその1工事の現場に集約し、掘削作業の1サイクルを施工しました。

OTISM/TUNNELINGによる施工サイクル

発破のための穿孔作業と発破パターン作成の自動化

切羽に発破孔(こう)をあける穿孔では、油圧削岩機のフルオートコンピュータージャンボを使い事前に設定した発破パターンに従い効率的かつ自動で行います。オペレーターは1人で2つのブームを監視し、穿孔の進行状況や機械の動作を確認しながら、必要に応じて調整を行います。

発破パターンの作成にはブラストスキルAI™(※3)を活用し、コンピュータージャンボの穿孔データと切羽の写真をAIで分析し、熟練技能者の経験と勘(暗黙知)に依存することなく、次サイクルにおける最適な発破パターンを作成します。

発破パターンを作成するブラストスキルAIの使用状況

コンクリート吹付け作業の遠隔化

コンクリート吹付け作業は、無遅延カメラ搭載の出来形・監視UGV(※4)を使い、リアルタイム出来形計測システムを用いて遠隔地にてモニターを確認しながら行います。

コンクリート吹付け作業での出来形・監視UGV使用状況

鋼製支保工建て込み作業の遠隔化

支保工の建て込み作業は、遠隔建て込み技術であるクイックテレクター®(※5)を採用し、切羽直下に人が立ち入ることなく、オペレーター1人で行います。モーションキャプチャ技術を活用したガイダンスシステムに従って所定の位置に支保工を誘導・設置します。

ロックボルト作業の遠隔化

ロックボルト打設作業は、専用の遠隔打設機ロボルタス®(※6)を使い、切羽直下に人が立ち入ることなく、遠隔操作で削孔からモルタル注入・ロックボルト挿入までの一連の作業を行います。

OTISM/TUNNELINGの安全性と生産性の向上効果

従来は掘削作業中に切羽直下への人の立ち入りが必要でしたが、OTISM/TUNNELINGの技術を集約した本現場では切羽への立ち入りは不要になります。そのため、切羽で肌落ちが生じても人的被害は発生せず、安全性の飛躍的な向上を実現しました。

また、一連の施工サイクルを従来の方法で行った場合と比べ、本現場では20%の省人化ができることを確認しています。なお、施工サイクルの各作業は熟練度に依存せずに遠隔化・自動化を実現しているため、経験の浅い技能労働者でも同じ生産性が期待できます。

今後の展望

今後はさらなる安全性と生産性の向上を目指し、トンネル坑内に人が立ち入る必要のない技術や、遠隔操作の作業を自動化する技術の開発を継続していきます。大林組はOTISMの開発、実装を通じて、建設業の生産性向上と安全・安心なインフラ整備に貢献していきます。

  • ※1 i-Construction 2.0
    2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍向上することを目指し、「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」を3本の柱として、建設現場で働く一人ひとりが生み出す価値を向上し、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指す、建設現場のオートメーション化の取り組み
    「i-Construction 2.0」を策定しました ~建設現場のオートメーション化による生産性向上(省人化)~
    (国土交通省ウェブサイト)
  • ※2 OTISM(Obayashi Tunnel Integrated System)
    山岳トンネル施工における掘削作業の安全・生産性向上、および覆工作業の品質向上・省人化、施工管理の意思決定の迅速化を図り、全体の生産性を向上させる一連のシステム
  • ※3 ブラストスキルAI
    山岳トンネルの切羽写真からAIにより地山を評価し、地山の硬軟と形状に応じた発破パターンを作成するシステム
  • ※4 出来形・監視UGV
    山岳トンネルの出来形測定をするスキャナーと作業状況を監視するカメラを搭載し、遠隔操作ができるUGV(Unmanned Ground Vehicle)
  • ※5 クイックテレクター
    山岳トンネル掘削作業において、切羽直下での技能労働者による作業を完全に排除し、安全性を大幅に向上した鋼製支保工建て込み技術
  • ※6 ロボルタス
    山岳トンネル工事において、ロックボルト打設の削孔からモルタル注入、ロックボルト挿入までの一連作業を遠隔操作で行うロックボルト遠隔打設専用機