2025年度グッドデザイン賞を受賞しました

サステナビリティ

日本デザイン振興会が主催する「2025年度グッドデザイン賞」において、大林組が携わったグラングリーン大阪がグッドフォーカス賞[地域社会デザイン]を、大屋根リングが未来社会デザイン特別賞を、空調用誘引ユニット「in-DUCT(インダクト)」吹出口タイプ、ボッシュ 新本社ヤマハ本社オフィス棟岩谷産業 神戸研修所GLION ARENA KOBE、大阪上本町駅、近鉄上本町バスターミナルがグッドデザイン賞を受賞しました。

グッドデザイン賞は、1957年に創設された日本で唯一の総合的なデザイン賞です。複雑化する社会において、課題の解決や新たなテーマの発見にデザインへの期待がますます高まっています。そうした時代にあってグッドデザイン賞は、製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、かたちのあるなしにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインと捉え、評価・顕彰しています。

グラングリーン大阪(うめきた公園サウスパーク等先行開業区域) 【グッドフォーカス賞[地域社会デザイン]】

グラングリーン大阪は、大阪駅北側の貨物駅跡地に誕生した都市と自然が融合するまちです。公園を中心に多様な過ごし方・使い方を受け容れる緑豊かなパブリックスペース「みどり」を計画、この場所に集まる多様な人々に対してQOL(クオリティ・オブ・ライフ 生活の質)向上の機会を提供し、新たな価値を共創する場所となるようデザインしました。持続可能な都市であり、まちづくりの新たな転換点となることを目指しています。

受賞企業 三菱地所、大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、
竹中工務店、阪急電鉄、三菱地所レジデンス、うめきた開発特定目的会社(出資者:大林組)、
日建設計、三菱地所設計、GGN LANDSCAPE ARCHITECTURE LTD.

<審査委員の評価>
大阪駅北側の貨物駅跡地の大型開発。特に評価されるのは、「公園の中にまちをつくる」という思想で、都心の一等地にありながら、大きな「みどり」の公共空間を中心に据えたことだ。中心の芝生広場の緩い傾斜などランドスケープデザインも丁寧にデザインされている。実際、開業してからは、多くの人が芝生の上や周辺の植栽の間で座ったり寝そべったりしてゆっくりと過ごしており、オープンスペースの価値が可視化されている。床を積むことで利益を出してきた再開発に限界を感じる人が増えてきている中で、新たなまちの価値を提示したエポックメイキングな開発といえる。加えて、立体的な緑地やブリッジによって、都市を眺める視点を提供したことは特筆すべきことである。1993年に竣工して長らく孤立していた梅田スカイビルが大阪らしい視対象になっており、梅田スカイビルの布石が30年以上経って鮮やかに回収されているのもすばらしい。

大屋根リング 【未来社会デザイン特別賞】

提供:2025年日本国際博覧会協会 撮影:株式会社伸和

大屋根リングは、「多様でありながら、ひとつ」という大阪・関西万博の理念を表す、シンボルとなる建築物です。日本の神社仏閣などの建築に使用されてきた伝統的な貫(ぬき)接合に、現代の工法を加えて建設しています。万博会場の主動線として円滑な交通空間であると同時に、雨風、日差しなどを遮る快適な滞留空間として利用されました。

受賞企業 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会、藤本壮介建築設計事務所、
大林組、竹中工務店、清水建設、東畑建築事務所、梓設計

<審査委員の評価>
審査の過程では、万博建築における公共性とは何かということが議論になった。一般の公共建築とは異なり、万博における建築は、約半年間の仮設である一方で、日本における現実の厳しい法規制の中でも、万博だからこそできることがあるのではないか。大屋根リングは、「現代の貫」と表現されているように、木造建築の大規模化に対応する技術進化を伴いながら、日本固有の建築文化を継承するという姿勢は、万博に相応しいメッセージである。大地に描かれた求心力のある円は、世界中から訪れる人や多様なパビリオン建築を力強くひとつにまとめ上げ、そして何より、世界最大といわれる木造建築の圧倒的な迫力は、世界中の人々に感動を与えている。この作品を契機に、日本において中大規模建築の木造木質化に向けた機運が大きく加速し、日本建築の伝統的な木造技術が未来に向けて、さらなる進化を見せることを大いに期待したい。

in-DUCT 吹出口タイプ

2024年度にグッドデザイン・ベスト100を受賞した「in-DUCT」の誘引機構と吹出口を一体化させて新しい空調誘引ユニットを開発しました。従来製品のメリットである「周囲空気の誘引による大風量の供給」「結露防止」「動力不要」などはそのままに、吹出口との一体化によって気流方向の変更が容易になり、設置自由度が大きく向上しました。

受賞企業 大林組、協立エアテック

<審査委員の評価>
本製品は、機能と形態を高次元で統合した空調用吹出口ユニットである。従来機種が有する「周囲空気を誘引して風量を増加させ、温度差を抑制し結露を防止する」という実績ある性能を継承しながら、誘引機構と吹出口を一体化することで、施工における自由度を飛躍的に高めている。さらに、可変機構を備えることで気流方向の調整が容易となり、運用上の柔軟性も向上している。アルミ型材による軽量設計と標準施工への対応も備え、現代の多様な空調ニーズに応える優れたデザインとして高く評価された。

ヤマハ 本社オフィス棟

©エスエス

静岡県浜松市に位置し、世界有数の楽器メーカーであるヤマハの本社オフィス棟です。2007年から進められてきたヤマハ本社事業所再編計画の集大成として、2024年に完成しました。グランドピアノを模して大きく跳ね出した低層部のボリュームが既設の開発棟・品質管理棟・生産管理棟と連結することで、他部門との効率的なネットワークを促進しています。

受賞企業 大林組

<審査委員の評価>
下屋のデザインと外構が企業ブランドを表現した特徴的なデザインである。事業主の事業が直感的に認識できる形態は、事業主のビジョンに向き合い、その歴史をリスペクトしたデザイナーの真摯な姿勢である。 ビル全体における高い技術力と課題解決能力はもちろん評価されるものではあるが、それ以上にアイレベルにおける企業拠点の静かなる表現、アピールを粘り強く形にした点が高く評価された。俯瞰しなければ分からない2次元の表現にとどまらず、3次元でレベルを変えオーバーハングして接続させる手法も洗練されており、グッドデザインと評価する。

岩谷産業 神戸研修所

©ヴィブラフォト 浅田美浩

水素の利活用を通じて脱炭素社会の実現に取り組む岩谷産業の研修所です。岩谷産業の姿勢を表現するため、木造と鉄骨造のハイブリッド構造を採用しました。兵庫県・神戸市の海に臨む立地にあり、エネルギー源として水素エネルギーを利用しています。脱炭素の未来を拓く発信拠点として、この場所で多様な人材を育成することを目指しています。

受賞企業 大林組

<審査委員の評価>
企業の持つ研修所や保養所が資本効率の面から姿を消しつつある現代において、人的投資としての研修所の役割に事業主のコアコンピタンスを発信する拠点としての役割を持たせ実現したプロジェクトであると想像される。水を表現した建築としてのデザインも美しく、木造ハイブリッド構造、水素エネルギー利用など環境に対しても一切の妥協がない。本年度のテーマである「はじめの一歩から ひろがるデザイン」であり、ここからオープンイノベーションが創発され、デザインの思想も含めて未来への投資となることを期待する。

GLION ARENA KOBE

©エスエス

兵庫県の「神戸ウォーターフロント」エリアが港湾物流拠点からにぎわい拠点へ転換することを目指して建設されたアリーナです。270度海に囲まれた突堤の幅約65mの細長い敷地において、馬蹄(ばてい)型の座席配置によって1万人収容のアリーナを実現しました。夜景と環境負荷低減にも配慮したV字型のシンボリックな建物形状に加え、周辺広場との一体的な開発により、神戸の街の変化をけん引しています。

受賞企業 NTT都市開発、大林組、山下PMC

<審査委員の評価>
アリーナという施設は、イベント開催時には人が集まり街ににぎわいをもたらすが、それ以外の日常に集客できるかどうかが運営上の大きなポイントとなる。この施設は、三宮駅からほど近く利便性の高い立地にあり、施設低層部には、海に面して飲食店舗が並び、限られた敷地ながらも港の風景を楽しめる居心地のよいランドスケープデザインが丁寧に施されている。1万人収容の客席は、突堤という特殊な細長い敷地を上手に活用して配置され、ここにしかない臨場感のある体験ができそうである。長年積み上げてきた神戸の港の風景に、V字型のシンボリックな形態が加わり、夜間景観も含めて、魅力的な景観を生み出した。

大阪上本町駅、近鉄上本町バスターミナル

©大日フォトスタジオ 山川高弘

近鉄・大阪上本町駅のバスターミナルを改修するとともに、駅連絡通路を新設しました。線路を1線廃止して整備した連絡通路は、リズミカルな曲面壁で乗客を誘導し、行き帰りの空間体験に変化を与えます。

既存天井をライン照明で覆ったバスターミナルは、発着場を二重の光の輪で照らす演出によって既存からの一新を強調し、目的地へと旅立つ期待感と高揚感を創出しました。

受賞企業 近畿日本鉄道、近鉄不動産、大林組

<審査委員の評価>
かつて市電が交通の主役だった時代は主要ターミナルだった上本町だが、今は少し寂しさと昭和の雰囲気を残す駅と地域になっている。行き止まり式の大規模な鉄道駅が地上レベルにあることは我が国では珍しく、上本町駅はその点で極めてバリアフリーかつ地域と一体化された空間といえる。このバスターミナルのリニューアルは、鉄道駅構内とバスターミナル側の境界線を撤去し、薄暗かった駅が大きく明るく広がった印象を受ける。万博シャトルバスへの発着場としてのリニューアルだが、上本町駅全体の再開発も発表されており、このバスターミナルから周辺地域の活性化につながる新しい展開を期待している。

大林組は建設を通じて、デザインにできること・デザインが活かされる領域を広げ、一人ひとりが豊かに創造的に生きられる社会づくりに貢献していきます。