木造ハイブリッド構造の大林組「仙台梅田寮」がいよいよ完成

森林資源の循環による低炭素社会、木の温もりを感じる健康的な空間を実現します

建築事業

大林組が宮城県仙台市で建設している木造ハイブリッド構造の社員寮「仙台梅田寮」が、2023年3月、いよいよ完成を迎えます。1階は鉄筋コンクリート(RC)造、2~3階が木造の木造ハイブリッド構造です。CO2を吸収して光合成する木を活用する木造建築は、建物自体に炭素を固定できるため都市の「第二の森林」として注目を集めています。

中庭を囲むように4棟の建物で構成する地上3階建て。2~3階の木造部分には74の個室を配置

大林組は、木を中心とした豊かな循環型社会をめざす取り組みとして、「OBAYASHI WOOD VISION」を掲げています。仙台梅田寮の建設はその一つであり、建物全体で国産スギ材約830m³、国産カラマツ材約70m³を使用することで、建物のライフサイクルを通じて約540tのCO2を固定。低炭素社会(カーボンニュートラル)の実現に貢献します。

東北は総面積に占める森林の割合が70%を超え、仙台は「杜の都」と呼ばれてきました。そうした地で森林資源を積極的に有効活用することは、都市にいながら木の存在を身近に感じられる健康的な暮らしにもつながります。

仙台梅田寮は、男女共有のほかあらゆる人を受け入れるユニバーサルデザインの社員寮です。施設内を温かみのある木の住まいとすることで、癒しの空間を創出し、社員の健康と快適性というウェルビーイングの向上につなげます。

「sendai umeda dormitory obayashi wood vision project 2023」(動画再生時間:3分7秒)

■新開発「CLTユニット工法」の採用

建設にあたっては、「CLTユニット工法」を新たに開発しました。木の板を重ね合わせたCLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)をユニット化したものを、約120個据え付けて一棟を構築しています。

CLTユニット工法は、厚型パネルを事前に工場でユニット化させて搬入するため、現場での作業はユニット同士の接合のみとなります。これにより工事期間をRC造との比較で2ヵ月、パネルを現地で組み立てる工法と比べて1ヵ月短縮できました。

ユニットの形状は壁と天井のみを組み立てた門型とし、幅2.2m、高さ2.8m、長さ6mにサイズを抑えたことで、大型車両が通行できない車両規制道路を利用した4tトラックでの搬入を可能としました。

CLTユニット工法の採用で、道路運搬規制により日本では難しいとされるPPVC(Prefabricated Prefi nished Volumetric Construction)(※1)の実現に近づくだけでなく、同じ形の部屋が連続する集合住宅やホテルなど、ユニット工法が適した建物への木材適用を後押しします。

「CLTユニット工法の組み立て」(動画再生時間:25秒)

■木材接合手法の改良とBIMの活用

CLTユニット工法の開発においては、従来工法の改良にも取り組みました。壁と天井パネルは、木材をかみ合わせて接合する木材接合法「あられ組」で組み立てます。あられ組に木栓をすることで緩みを防止し、より強固に結合させる「改良あられ組」を開発。これにより木材をつなぐ金物が不要となり、コスト削減を実現しました。

また、CLTユニット工法をより効果的に適用するために、BIMモデルとCLTパネル加工機をデータ連携させることで、製作図を介さずに木材の加工を行いました。現場での据え付けは、ビジュアル工程管理システム「プロミエ」とクレーンを連携させ、部材ごとの据え付け日程と施工実績を登録し、効率的な工程管理だけでなく、BIMモデル内の数量情報と連携させて出来高管理も行いました。

改良あられ組の概念図。お酒の枡などでよく見る木材の接合方法「あられ組」に、木栓をすることで強固に結合
CLTユニットのBIM画像。工場でのCLTパネルの加工や現地での施工状況、工程などをBIMで一元管理

■仙台梅田寮 施設概要

計画地 宮城県仙台市青葉区梅田町一丁目
敷地面積 2,528.04m²
延べ面積 3,677.43m²
規模 地上3階建
構造 1階RC造(一部S造)、2・3階木造(一部RC造)、壁式構造
用途 寄宿舎
工期 2022年3月~2023年3月(予定)
補助金 令和3年度サステナブル建築物先導事業(木造先導型)
令和3年度CLT活用建築物実証事業

■低炭素社会の実現に向けて

大林組は、2011年に中長期環境ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050」を策定、大林グループがめざすべき事業展開の方向性を描き、環境に配慮した社会づくりに取り組んできました。その施策の一つとして、木造・木質化建築におけるサプライチェーン全体を最適化する循環型ビジネスモデル「Circular Timber Construction®(※2)」を掲げています。

持続可能な社会の実現をめざして、CO2排出量が少なく、長期間にわたりCO2を建築物に固定できる木造・木質化建築に積極的に取り組み、木材利用のさらなる普及・促進を図っていきます。

  • ※1 PPVC(Prefabricated Prefinished Volumetric Construction)
    自立型ユニット(壁、床および天井の仕上げを含む)をオフサイトで製造し現場で設置する工法。工程が大幅にスピードアップするとともに、ほこりや騒音による汚染を最小限に抑えることができるなど、生産性を高める革新的な技術として注目されている
  • ※2 Circular Timber Construction®
    木造・木質化建築の推進にとどまらず、大林グループが保有する森林関連の事業実績やノウハウ・知見を活かし、国産木材に関する川上(植林・育林)から川中(加工・調達)、川下(建設、発電、リユース・リサイクル)まで、素材生産~製材~利用~植林という循環サイクル全体を持続可能で最適なものにする取り組み