2023年度土木学会賞を受賞しました

サステナビリティ

       

土木学会では、土木工学の進歩や土木技術者の資質向上を図り、社会の発展に寄与するためにさまざまな活動を行っており、国内外の優れた土木事業や新技術、さらには土木工学、土木事業に多大な貢献があったプロジェクトや個人などを表彰しています。

2023(令和5)年度の土木学会賞が発表され、18部門111件の受賞が決まりました。大林組は技術賞をはじめ多くの分野で選ばれました。

    
 

【2023年度土木学会賞 受賞概要】

技術賞

■環境負荷低減を目的としたアースドリル工法による鋼管矢板建込工法の適用事例

2025年4月の供用開始をめざし、現在、外構工事を行っている大阪・堺市古川下水ポンプ場建設工事では、ポンプ場の躯体新設に向けて、面積4500m²、深度30mを超える大規模開削を行いました。

今回の開削工事に伴う掘削土の45%が汚染土であることから、運搬による外部への環境負荷を低減させるため、汚染土の減量化が図れる「アースドリル工法による鋼管矢板建込工法」を採用しました。

今回の工法の採用により、掘削土を原料とするモルタルの活用や、鋼管矢板内部に掘削土を埋め戻し(封じ込め)するなど、汚染土の場内利用を可能にしました。

アースドリル工法により166本の鋼管を打ち込む(写真中央が鋼管)

掘削土を可能な限り再利用することで、場外処分に伴って発生するCO2排出量の削減、汚染土壌の移動に伴う周辺環境への拡散回避といった、社会環境に対するリスクを大幅に減らすとともに、コスト縮減により公共事業へ寄与したことは、今後の類似工事の参考となる秀逸な事例であるとして高く評価されました。

■スマートプロジェクトマネジメントを活用した鉄道駅新設ホームの早期供用開始

(武蔵小杉駅横須賀線ホーム2面2線化)

このプロジェクトは、神奈川県川崎市にあるJR武蔵小杉駅の抜本的な混雑緩和対策の一環として、横須賀線に下りホームを新設し、2面2線化したものです。狭あいな空間において、鉄道の運行や利用者への安全に配慮しながら、スマートプロジェクトマネジメント(※1)を活用し、着工から2年9ヵ月で新ホームの供用開始を実現しました。

今回の工事では、プロジェクトの設計から施工まで新技術やDXを積極的に導入しています。既設構造物と新設構造物をBIMモデルで重ね合わせることで旅客動線や乗務員目線を確認するなど、設計の早期合意を実施。またECI(Early Contractor Involvement)方式の採用により、施工計画の早期策定やプレキャストコンクリート柱の設置など、工事期間の短縮を図っています。これらの取り組みにより、新ホームの供用開始を約1年前倒しすることができました。

今回の受賞では、狭あいな施工環境下でさまざまな制約を受ける首都圏ターミナル工事において前例のない取り組みであり、土木技術の発展に寄与するものとして評価されました。

新設した武蔵小杉駅横須賀線下りホーム
  • ※1 スマートプロジェクトマネジメント
    BIM、点群データ、ICTなどのDX技術やECI(Early Contractor Involvement:設計段階から施工者が技術協力して仕様を決定)などの新たな契約手続きを活用し、フロントローディングを行うことで、生産性向上(工期短縮、コストダウン)をめざすプロジェクトマネジメント

■中央自動車道中津川IC~園原IC間橋梁リニューアル事業

(多種多様な複数橋梁同時施工の床版取替工事)

中央自動車道の山間部に位置する全8橋の橋梁は供用後約50年が経過し、大型車交通量の増加や凍結防止剤散布の影響による床版劣化が著しいことから、新技術を活用して高速道路の機能維持と性能強化を図りました。

また、工事中の交通規制期間の長期化や渋滞などの社会的影響を踏まえ、プレキャスト部材の活用や最大3橋の同時施工などにより、床版取替工事の省力化と急速施工を実現し、通行規制期間を大幅に短縮しました。

新技術を活用してリニューアルした柳樽川橋(下り線)

今回の受賞では、今後増加する橋梁リニューアル工事において、土木技術の発展およびインフラ整備に大きく寄与したことが評価されました。

■安威川ダムの建設

(人と自然環境に調和した都市近郊型ダム)

安威川ダムは、大阪府茨木市に建設された多目的ダムで、1967年の北摂豪雨災害を契機に計画されました。ダム周辺には多くの住民が暮らしている一方、オオタカやオオサンショウウオなど貴重な動植物が生息しています。そのため、計画段階から人と自然が調和するダムを目指して整備が進められました。

自然環境を守るため、近隣の山を掘削せず、採石場から堤体盛立材料(ロック材)を購入しました。また、ICT技術を活用し、盛立材料の品質管理と供給を円滑に行いました。さらに、自然に近い放流設備を導入し、下流の環境保全にも貢献しています。

堤体を保護する表面のリップラップ面は「安威川積み」と称され、地元住民やダムマニアからも親しまれている

今回の受賞では、新しい知見や経験を活かし、将来にわたって人と自然が調和する都市近郊型ダムを建設した好事例として評価されました。

■東海道線支線地下化・新駅設置

(国際ゲートウェイ・国土軸を繋ぐ)

東海道線支線地下化・新駅設置事業では、JR大阪駅の北エリア「うめきた地区」の西端を走行する東海道線支線のうち2.4kmを大阪駅側に移設・地下化し、新たに地下駅を設置しました。支線の地下化・新駅設置により、国際競争力の高い知的創造都市に生まれ変わる「うめきたプロジェクト」を推進する基盤となり、街のポテンシャル向上にも貢献しています。

地下化により交通の円滑化と分断された市街地の一体化を図った

建設現場は、軟弱な沖積粘性土層が堆積した地盤であるうえ、営業線や道路、高層建築物に近接していましたが、事前の念入りな調査により地盤変位の予測精度を高めることで、安全に工事を実施しました。また、上空を交差する東海道本線の列車運行に支障をきたすことなく、技術の活用や関係者との入念な調整などによって地下化を実現しました。

今回の受賞では、さまざまな技術的課題に対して多くの知識・技術を活用し、安全に早期に工事を完了したことが評価されました。

田中賞

【作品部門・既設】
■東名阪自動車道弥富高架橋(下り線)の大規模更新

開通後約50年を迎える東名阪自動車道は床版劣化が著しく、大規模な更新が必要とされていました。全長約1.6kmの弥富高架橋は交通量が多い路線であり、渋滞の影響を最小化するために、1車線ずつ床版を取り替える幅員方向分割施工を採用しました。上り線2車線・下り線1車線を常時供用したまま約1.4mの拡幅を含む床版取り替えを22ヵ月の短工期で施工しました。

また、側道から揚重設備を使って資機材を搬出入する技術を開発し、渋滞および一般車との接触事故の防止のため、高速道路を介さずに約3,300枚の床版の搬出入を行いました。

弥富高架橋(下り線)の床版取替状況

今回の受賞では、新技術の活用により、かつてない急速施工と社会的影響の低減を実現したことが評価されました。

技術功労賞

渡辺 朗(大林組 東京本店原電東海総合工事事務所 総括所長)

  • 2008年の車両火災により被災した首都高速5号線復旧工事では陣頭指揮を執り、73日で全面開通
  • 首都高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事では急速施工技術を推進し、作業環境改善などの工夫によって、安全で短工期な施工に尽力 など

長年にわたるプロジェクトでの功績が認められました。

首都高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事では各方面に向けた見学会を多数開催するなど、土木事業の発展・理解のための情報発信として多大に貢献した

大林組は今後も、安心して快適に暮らせる社会のインフラ整備に寄与するために、新たな技術開発に努めてまいります。