地域に開かれた「これからの工場」をめざして

#3 内外テクノス本社工場

埼玉県ふじみ野市にある内外テクノスのメイン工場と事務所を建て替えました。大林グループである内外テクノスは、一品生産を主軸とし、伝統建築からホテルまで幅広い建築物の木造作工事を行う会社で、大小さまざまな制作に対応するフレキシブルな大空間が必要とされました。ほぼすべての工程を人の手で行うため、「つくること」のみならず「つくる人」のために快適な環境をつくりたいという思いを共有するところから建て替えプロジェクトはスタートしました。

さらに、住宅や大学が建ち並ぶ郊外において、周辺環境に調和する新たな工場の在り方を徹底的に検討しました。勾配屋根により建物ボリュームを抑え、正面道路に面する部分は植栽により緩やかな境界とし、地域に開かれた、人と環境に優しい木造建築をめざしました。

この工場は大規模木造建築物に位置付けられますが、準耐火建築物(※1)を適用し、木質空間の温かみを残しつつも、生産に必要な大空間を実現しました。郊外の工場建築において大規模木造を実現したことで、さらなる木造建築の普及の可能性を提示するものです。

※1 準耐火建築物
耐火建築物以外の建築物のうち、その主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)が準耐火性能を満たし、かつ、延焼の恐れのある開口部(窓やドア)に防火戸など、火災を遮る設備を有する建築物

準耐火建築物の性能を満たして実現した大空間(@千葉顕弥)
生産効率のみならず「人のための空間」を木造の温かみとともに実現
事務所棟は3.6mピッチのCLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)構造壁による大きなワンルームでコミュニケーションを促す
「つくる人」と「環境」に優しい自然共生型の工場
太陽光や風などの自然のエネルギーを活かした小規模木造ZEB(※2)オフィスの実現

※2 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)年間に生産するエネルギーと消費するエネルギーの収支をゼロにすることを指向した建物

既存樹を活かしながら、地域の潜在的な自然植生「シラカシ群生」に基づき植樹を行いました。木々が周辺環境との緩衝帯となるようランドスケープを計画し「フェンスを設けない開かれた工場」を実現しています
木架構とともに「働くひと」が大通りから見える工場
ランドスケープと風景を創り出す工場