杜の都・仙台で汎用性の高い木造建築をつくる

#2 大林組仙台梅田寮

宮城県仙台市にある自社社員寮「大林組仙台梅田寮」は、循環型資源である木材の利用拡大をめざす大林組の取り組みの一環として2023年に完成した、社員に快適で安全・安心な住居を提供する施設です。

仙台梅田寮は、1階は鉄筋コンクリート(RC)造で高い耐震性を確保し、2、3階の住居部分は断熱性の高い木造により東北の厳冬をしのぐことができる、RC造と木造のハイブリッド構造の建物です。コンクリートや鉄を減らすことによりCO2排出量を削減し、さらに木材がCO2を吸収して蓄積した炭素を建物内に固定することから、脱炭素社会に貢献できるものです。

仙台梅田寮の建設では、新たにCLTユニット工法を開発。部材を工場であらかじめ一体化するユニットの活用により、工事期間の短期化、建設現場での省力化、高品質化をローコストで実現しました。今回、CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)ユニットを約120個据え付けて一棟を構築し、木造でありながら高い遮音性能も確保しました。そのため、従来は木造化が難しかったホテルや集合住宅、病院などにも活用できます。CLTユニット工法の確立により、木造の汎用性向上、普及拡大を図り、循環型社会の実現への礎を築きました。

建設資材は、東北の森林資源を積極的に活用しています。福島県内の工場でCLT加工を行い、震災復興としてつくられた福島高度集成材製造センターでユニット組み立てを行うことで、地域経済の活性化にも貢献しました。また、ダイバーシティ(多様性)を受容し、男女を問わずすべての人を受け入れられるユニバーサルな計画・運用とし、身体的・精神的・社会的な面においてもウェルビーイングな建物を実現しました。

中庭からの朝日が心地よく差し込む緑豊かなラウンジ
OBAYASHIの「〇」、CLTパネル接合「改良あられ組」の木組みの木栓をイメージした「〇」が内装デザインのモチーフ(©エスエス)
疲れを癒す暖かな明かりに包まれた食堂と一体感のある中庭
食堂では、毎食三種以上のフルーツが添えられ、WELL認証 GOLDに沿った低糖質で健康的な食事が提供されます。また、寮生が自分で調理できるキッチンも併設しているため、中庭の菜園で採れた旬の野菜も調理可能です(©エスエス)
設計と施工が共に知恵を出し合って開発したCLTユニット工法
工場で製作したCLTユニットを端から並べて組み立てていきます。在来工法に比べ短工期、現場での省力化、工場製作による高品質を実現しています
建設時のCO2排出量をRC造に比べ35%削減
重量の小さい木造建築をユニット化することにより、建設現場での省力化を図るとともに、CO2排出量を最小限に抑えました。また、隣合う2部屋を輪切りにした小割ユニットにすることで、小さなトラックでの輸送を可能にし、住宅地の狭小道路接道という条件を克服しています(特許出願中)
木の心地良さと静寂性を確保した寮室(©エスエス)
ローコスト木造でありながらも、ホテル同等の遮音性を確保するため、実物大の遮音試験体を作成して仕様を決定しました
老若男女が共存するダイバーシティ
各部のセキュリティを確保し、ダイバーシティな寮を実現しています。段差のない水廻りとするなどバリアフリーにも対応しています。木目を活かした内部にそれぞれの個性がかけ合わさることでダイバーシティな暮らしを実現しています
先輩後輩で育てる菜園
中庭の菜園では数十種類の野菜を育てています

中庭を囲む4棟構成
4棟それぞれが独立運用可能なプランニングのため、感染者隔離にも対応可能な配置・平面計画としています。また、災害などの緊急時に支店機能をバックアップすることができるように、72時間稼働できる非常用発電や防災備品などを備えています(©エスエス)
sendai umeda dormitory - obayashi wood vision project 2023 - コンセプトムービー
(動画再生時間:3分8秒)