タイ・バンコクで大林グループの「ものづくり」カタチにした高層ビル

#20 O-NES TOWER

O-NES TOWERは、タイの首都・バンコクの都心部に位置し、高架鉄道BTS(Bangkok Mass Transit System)の駅に直結する大型複合テナントオフィスビルです。大林グループであるタイ大林の自社開発プロジェクトとして、大林組と共に用地取得から計画、設計、施工までを一貫して自社で手掛けました。

地下5階、地上29階建ての高層ビルの耐震性を確保するため、タイ初の鉄骨ハイブリッド構造を採用して新耐震基準を先行導入(※1)しました。また、ウェルネスの観点から、タイの最先端をゆくさまざまなビルマネジメントシステムを備えています。

O-NES TOWERは、その名前の由来である「Obayashi New Environmental Space(大林グループが提供する新たな空間)」の名の通り、タイ初の試みを数多く実現し、バンコクに新たな公共空間とオフィス空間を提供しています。

  • ※1 タイで2021年9月に施行された新たな耐震基準を2019年着工時点で先行導入した
O-NES TOWER 北側外観

街とつながる

通勤に車を用いる人が多く、しばしば交通渋滞も見られるバンコク。O-NES TOWERの設計にあたっては「歩車分離」をテーマに掲げ、車、歩行者、鉄道駅利用者がそれぞれのアプローチで街とつながる構成としました。また車寄せを地下に設けたことで利用者の安全を守りながら、外構の緑化によって都市に潤いを与えています。

車、歩行者、鉄道駅利用者それぞれのアプローチを分ける歩車分離を実現
  • 【3階 BTS連絡橋】
    BTS「ナナ駅」からはO-NES TOWERへは専用の連絡橋を通って直接アクセスできる
  • 【1階 歩行者通路】
    緑豊かな前庭を通ってエントランスへ
  • 【地下1階 車寄せ】
    1階の歩行者と車両の衝突を防ぎ、乗降者を雨や日差しから守るシェルターとなる
建物内外が一体となるようデザインしたエントランス。ガラスのみで構成した1階ファサードが街とのつながりを一層強固なものにする
光・水・緑を感じるエントランスでは、水盤(庭などに設けられる浅い池や水面)のゆらめきが天井にも映り込む
1階のガラス面や水盤を通じて地下1階のロビーや車寄せにも自然光が降り注ぐ
現代美術作家の杉本博司氏と榊田倫之氏が監修した前庭は、市民に開放され、街に潤いを与える

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鉄骨への挑戦

前庭からエントランスを臨む。V字形の鉄骨柱「Vコラム」は、柱の角を正面に向けたことでよりV字を印象的に魅せている

O-NES TOWERでは、建物中央部に鉄筋コンクリート造のコア壁を、外部にはコンクリート充てん鋼管構造(CFT)柱を配したハイブリッド構造を採用しました。

7階から1階にかけてCFT柱をV字型に絞ることで、地上から見上げた際の柱の力強さを印象付け、エントランスにまるで「ゲート」のようなデザインをもたらしました。

  • 柱は地下1階と1階、7階と8階でそれぞれ45°回転しているため、柱の接合部の調整を行った
  • パラメトリックモデル(※2)を活用して複雑なジョイント部の解析を行った
  • ※2 パラメトリックモデル
    寸法などのパラメータを入力するだけで簡易に作成・修正が可能な3次元モデル
実寸モデルを製作し、接合部の検討を重ねた
地上での仮組み検査の様子

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ウェルネスな優しいオフィス

基準階平面図
50m2ごとに1台配備したセンサーが自動で調光する仕組み
人感センサー 日照センサー

オフィス内部は、スパン20mを超える広さを確保し、正方形に近い平面形状で無柱空間を実現。鉄骨造を採用したことで、大きなスパンを支える柱が不要となり、柔軟なレイアウトが可能になりました。鉄骨造、かつ高層建築の前例がなかったバンコクでは初となるオフィス空間です。

また空調システムも、タイでは事例の少ない選択エリアごとに個別操作可能な仕様を採用。スマートフォンやコンピューターでエリアごとの温度制御・調整などのシステム稼働が可能となり、さらに空調・照明のモーションセンサーを配備したことで、制御建物全体の省エネルギー化に貢献しています。

タイ大林 オフィス内観(O-NES TOWER 8階)

O-NES TOWERは、健康やウェルビーイングの観点から施設空間を評価する国際的な認証制度「WELL認証」と、省エネルギーや環境影響などへの取り組みを総合評価する国際的な制度「LEED認証」でいずれも「ゴールド」を取得しています。

デジタルツールをフル活用

オフィス基準階のBIMモデル

O-NES TOWERでは、設計から施工まで、BIMをフル活用しました。現場レベルの調整や生産設計までをBIMで対応した、タイでは珍しい事例です。

鉄道駅と建物をつなぐブリッジは、パラメトリックモデルや3Dモデリングソフトを活用して設計しました。数百パターンの形状検討を経て、最適化した緩やかなアーチ形状を採用。軽量パイプの立体トラス構造が、前庭への眺望と構造安定性を両立させています。

都市と共にある、多彩な空間

O-NES TOWERの低層部には、アトリウム、テナント、ビジネスセンター、フードコートなど多彩な機能を配置しました。屋上庭園からはチャオプラヤー川を望むことができ、オフィスワーカーのエンゲージメント向上にも寄与しています。

3階から4階にかけての吹き抜けのアトリウム。
日射を遮へいするための水平ルーバーと強風対策としての耐風梁を兼ね備えたファサードを採用したことで、日差しの強いバンコクでも明るく快適な空間を実現した
5階のフードコートはオフィスワーカーだけでなく、市民にも開放している
6階 ビジネスセンター(家具付きのサービスオフィス)
開放的な屋上庭園

O-NES TOWERは、都市の風景の一部として、この地に息づき、末永く、バンコクの未来を見守り続けます。