木の心地よさを街へ——駅前の木造商業施設

#25 nonowa国立SOUTH

JR中央線・国立(くにたち)駅(東京都)に直結する木造商業施設「nonowa国立SOUTH」は、周辺の街並みと調和し、環境に配慮した建築を目指して計画されました。景観や街づくりに力を入れる文教都市・国立において、「サステナブル」をキーワードに、積極的に木造・木質化を進め、多くの二酸化炭素(CO2)を固定することを実現したプロジェクトです。

2024年3月に開業したこの施設が掲げるテーマは「地球と、地域と、身体に心地よいソーシャルグッドリビング」。地球に優しい暮らしにつながり、出会いが生まれるコミュニティの中心地として、上質でゆとりのある街のリビング(居場所)でありたいという願いが込められています。

ガラス越しに木の架構を積極的に見せる外観は木材活用を一目で伝え、内部では地域の木材を仕上げやサインに取り入れ、木に親しみを感じられる空間をデザインしました。

――木の心地よさを街のにぎわいへとつなげるために、どのような発想から設計の手がかりを選び、どのような技術で形にしたのか。ここから、その全貌をひもときます。

国立市のシンボルである木造の旧国立駅舎(写真右)とも調和する外観は、駅前の景観に豊かさをもたらす(撮影:Nacása & Partners Inc.)

ハイブリッド木造で商業施設に適した空間をつくる

ガラス越しに堂々とした木の柱が見えるエントランス(撮影:Nacása & Partners Inc.)

商業施設では、見通しの良い広い空間や、テナントが入れ替わっても使い続けられる柔軟さが求められます。そこでnonowa国立SOUTHでは、木を生かしながらも商業施設として成立させるために、設計から施工までの各段階で工夫を重ねました。

一般的な木造建築は、建物が横に揺れたときに形が崩れないように筋交(すじか)いや耐力壁を入れて支えますが、nonowa国立SOUTHでは、柱と梁のつなぎ目を強固に固定する剛接合を採用しました。柱と梁によって構成する純ラーメン構造を実現したことで、見通しの良い広い空間とレイアウトの自由度を両立しています。

    • 筋交い
    • 耐力壁

    従来のピン接合
    (回転する)

    • 剛接合
      (回転しない)

また、商業施設において木造を成立させるには、火への備えも欠かせません。そこで柱には大林組の耐火技術である「オメガウッド(耐火)」を、梁には鉄骨梁に木の耐火被覆を組み合わせた「耐火木質ハイブリッド集成材」を採用。さらに柱と梁をしっかりとつなぐため、プレキャストの鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の仕口(柱梁接合部)によって剛接合する新たな工法を開発しました。

木柱:オメガウッド(耐火)
鉄骨梁:耐火木質ハイブリッド集成材梁
ハイブリッド木造 架構パース図
木造+鉄骨梁+プレキャスト鉄骨鉄筋コンクリート仕口で実現したハイブリッド木造
柱梁接合部の詳細図
新たに開発したプレキャスト鉄骨鉄筋コンクリート仕口
耐火設計説明図。鉄骨梁の熱をコンクリートが吸収して直接木に伝わるのを防ぎ、木柱の強化石こうボードをコンクリート部分まで貼り延ばすことで、コンクリートの温度上昇を抑制。

こうした工夫により、木材使用量は構造体で205m3、仕上げ材も含めた全体では238m3に達しました。

これらの木材が森の中で吸収し、木内部に貯めた炭素(C)量は、CO2に換算すると約176t。この量は、1haのスギ林が吸収するCO2の20年分に相当します。

木材使用量 238.6m3
木柱:158.1m3 
梁被覆:47.5m3 
内装材:33.0m3
CO2固定量
(木材利用による
CO2固定量)
176t

ページトップへ

環境負荷を軽減するオフサイト施工

工場敷地内で木柱と鉄骨鉄筋コンクリートユニットを組み立てる様子

木材利用によるCO2固定に加えて、施工時のCO2排出削減にも配慮し、nonowa国立SOUTHではオフサイト施工(主要部材を工場で組み立ててから現場へ運ぶ施工方法)を採用しました。木柱と鉄骨鉄筋コンクリート仕口ユニットをあらかじめ一体化し、耐水強化石こうボードなども工場で取り付けたうえで現場へ搬入。そうすることで、工期の圧縮や施工精度の確保、輸送の効率化による環境負荷軽減を図りました。

また、人の往来や交通量の多い駅前という立地において、搬入車両の削減や、粉じん、騒音の軽減にも寄与しています。

木柱や仕口ユニットを現場で組み立てる様子

オフサイト施工による環境配慮

プレキャスト工場が物流拠点となる
  • 木柱と鉄骨鉄筋コンクリート仕口をプレキャスト工場で一体化
  • 耐水強化石こうボードなども工場で取り付け

  • 施工精度の向上
  • 工期短縮、作業スペース不足の解消
  • 輸送車台数削減によるCO2排出量削減
  • 粉じんや騒音軽減による近隣配慮

街に溶け込む、ガラス越しの木の架構

ガラス越しに木の架構を見せる外装。ガラスボックスの一部をくり抜くように設けた2階・テラスの柱は、あえて木とは異なる黒いパネルで覆い、外観のアクセントとした(撮影:Nacása & Partners Inc.)

日々多くの人が行き交う駅前という立地において、街のシンボルである木造の旧国立駅舎と調和しながら、木を使った建築であることが一目で伝わる外観を目指しました。

2階に設けたテラスの高さは、旧国立駅舎の三角屋根や大学通りの桜を見通せる目線に合わせ、街の新たな視点や場所を創出。買い物途中などにふと街の魅力を見渡せる、国立市の表玄関にふさわしい建築を表現しています。

旧国立駅舎や大学通りの桜を見渡せるテラス(撮影:Nacása & Partners Inc.)

ページトップへ

木だけじゃない、サステナブルな素材選び

床の仕上げは廃土(陶磁器の生産過程で生じた不要な土)からつくられたタイルを採用し、天井から下がるバナーサインも再生ポリエステル繊維を採用するなど、一貫してサステナブルを体現している(撮影:Nacása & Partners Inc.)

nonowa国立SOUTHの「サステナブル」を支えるのは、柱・梁などの構造材としての木だけではありません。共用部のデザインは、国立市に拠点を構える家具・プロダクトデザイナーの小泉誠氏と協働し、内装仕上げ材からサインに至るまで一貫してサステナブルな素材を採用しました。

共用部の壁仕上げ材や外構ベンチには、地域の木材である多摩産材の杉を大面積で使用。床材タイルやバナーサインの素材には再生材を多く含むものを採用し、国立市内で老朽化により伐採された桜の木を活用して館内サインやドア取っ手へと再生するなど、資源を循環させて、日常の中で手に触れられる形にしています。

多摩産材の杉で製作したベンチ(撮影:コイズミスタジオ)
トイレ(撮影:コイズミスタジオ)
階段(撮影:Nacása & Partners Inc.)
多摩産材の杉を積極的に使用した内部空間
階数表示サインは国立市役所内で伐採された桜の枝を輪切りにしてつくられた(撮影:コイズミスタジオ)
木の温かみを感じる階数表示(撮影:コイズミスタジオ)

ページトップへ

木の心地よさを街に届けるnonowa国立SOUTHは、商業施設という経済合理性が求められるビルディングタイプの中でも、都市の木造・木質化の普及に貢献できる――その可能性を具体の形で示した、象徴的な事例です。

日が落ちると木の架構が駅前を柔らかく照らす(撮影:Nacása & Partners Inc.)
「nonowa国立SOUTH」JR東日本グループ初の木造商業ビルの環境デザイン
(動画提供:相羽建設、動画再生時間:4分15秒)

ページトップへ