2020年度土木学会賞を受賞しました

サステナビリティ

       

土木学会では、土木工学の進歩や土木技術者の資質向上を図り、社会の発展に寄与するためにさまざまな活動を行っており、国内外の優れた土木事業や新技術、さらには土木工学、土木事業に多大な貢献があった会社などを表彰しています。

2020(令和2)年度の土木学会賞が発表され、19部門133件の受賞が決まりました。大林組は技術賞や技術開発賞をはじめ多くの分野で選ばれました。

    
 

【2020年度土木学会賞 受賞概要】

    

■技術賞
夜間のみの交通規制で床版を取り替える「DAYFREE」の開発と施工

(中央自動車道 弓振川橋床版取替工事における実証)

DAYFREE™」は、劣化した橋梁の床版を夜間に1車線のみの規制で取り替える世界初の技術です。昼間は全車線を交通開放し、夜間のみ片側車線規制することで床版の取り替えを可能にします。通年施工が可能で、渋滞を伴う集中工事が不要となるため、作業の平準化や建設業界の働き方改革にも寄与します。

今回の受賞では、今後増加する「交通量の多い都市部近郊の橋梁」での床版取り替え工事において、渋滞を抑制する工法として適用が期待できることが評価されました。

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中央自動車道弓振川橋(上り線)の床版取り替え工事で実証し、実現性や施工時の通行車両に対する安全性を確認した

ラオス国ナムニアップ1水力発電所建設プロジェクト

(世界最高レベルの高速施工と日本流の品質確保を同時達成したダム建設技術と住民視点での新たな定住モデルの構築)

ラオスに位置するメコン川の支流・ナムニアップ川に、水力発電所を備えた主ダムと副ダムをそれぞれ建設しました。土木建築、発電機器、水門などの各工事をそれぞれ海外実績の豊富な日本企業が担い、主ダムの堤体構築には急速施工を可能にするRCC(Roller Compacted Concrete)工法を採用しました。

今回の受賞では、オールジャパン体制による高い技術力を結集し高速施工を実現したこと、徹底的な品質管理と作業員の教育により、経済性と品質を同時に確保したこと、湛水予定地の住民の安定的な生活基盤の確保に努め、新たな定住モデルを生み出したことなどが評価されました。

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主ダムは堤高167m、堤体積236万m³の重力式コンクリートダム。約30万kWの電力はタイとラオスの両国に供給されている

開削工法のさらなる発展に向けた設計・施工の合理化

(設計施工一括発注方式を活かした東京外環中央JCT北側ランプ改良工事の取り組み)

本プロジェクトは設計施工一括発注方式の工事です。外環道と中央自動車道、都道とを接続する7本の連結路を内包した大規模かつ複雑な線形の地下道路トンネルを、開削工法とニューマチックケーソン工法(※1)を組み合わせて構築しました。

発注方式の利点を活かし、設計・施工両部門が緊密に連携して経済性や品質、安全など、工事全体の合理化を徹底的に図ったことが、開削工法などのさらなる発展の可能性を示したとして高く評価されました。

  • ※1 地上で躯体を構築し自重で沈下させて設置する工法
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東京外環中央JCT北側ランプ。複合ボックスカルバート構造とすることで部材厚を抑え、過密配筋を解消。温度ひび割れやコンクリート充てん不良のリスクを低減した

カチプール・メグナ・グムティ新橋建設および旧橋改修工事

バングラデシュの首都ダッカと重要港湾がある第二の都市チッタゴンを結ぶ国道1号線の既存橋の改修・補強、既存橋に並行する新橋の建設を行いました。下部工には既設橋基礎を一体化した鋼管矢板井筒基礎工法を、上部工には送り出し工法などを採用し、現場での作業をできるだけ省略することで安全に工期短縮を図りました。

今回の受賞では、多くの日本の建設技術を導入・移転することでバングラデシュにおける土木技術と社会の発展に大きく寄与したと評価されました。

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渋滞の解消と将来の交通量増加への対応を目的に、既設道路の交通を確保したまま、近接で新橋建設を行った

千本ダム堤体補強工事

建設後100年を経た今も島根県松江市の水道用水の4分の1を供給し続ける千本ダムは、山陰で最も古い石積み堰堤の水道専用ダムとして国指定の登録有形文化財になっています。

地震時の安全性に懸念があったことから、ダム機能を維持しながら堤体の全面的な耐震補強を実施しました。文化遺産としての景観を損なわず、早期に補強を行うため、国内初の「堤体PSアンカーを適用したダム堤体の耐震補強工法」を採用。堤体頂部からアンカーを鉛直に挿入し、基礎岩盤と固定しました。

今回の受賞では、歴史的価値のある構造物を早期に安価にリニューアルする手法を確立し、地域社会に安全・安心を与えたこと、文化遺産として市民に親しまれる環境を整備するなど地域への貢献度が高いことが評価されました。

石積み式の風情ある佇まいを見せる千本ダム。今後の100年の耐久性を見据えて、アンカーの二重防食などを実施した

東京駅北通路周辺整備

(旅客流動の変化に対応した北通路拡幅および既設構造物を活用した利便性の高い新たな空間の創出)

上野東京ライン開業に合わせ、東京駅改札内北通路の改良を実施するとともに、バリアフリールートや待合設備などの駅機能の強化を実施しました。通路の幅員を12mに拡張し、既設構造物との連続性を保ちながら、地下に大規模な商業施設空間を創出しました。

タイムリーかつ効果的な駅機能の強化を実現した本プロジェクトは今後のターミナル駅改良のモデルケースとなるもので、今回活用した工事桁架設計画は他のターミナル駅にも水平展開されるなど、社会的な貢献度や技術的価値が極めて高い事例として評価されました。

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東京駅の丸の内北改札と八重洲北改札を一直線に結ぶ北通路

■環境賞
環境にやさしいテールグリースの開発

シールド工事においてトンネル内への地下水の流入を防止する従来のテールシール充てん材を改良し、生分解性を有する材料を用いることで環境への影響を低減できる「シールノックBD」を開発しました。60%以上の生分解性と低毒性を有し、テールグリースとしては国内初となるエコマーク認定を取得。2件のシールド工事への適用により、従来品を上回る止水性能と圧送性能を確認しました。

今回の受賞では、十分な科学的データに基づいた高い信頼性と施工実績を有し、今後のシールド工事においても周辺環境への負荷低減が期待できる優れた技術であるとして高い評価を受けました。

シールドマシン内側のテールシール拡大図(左)。掘進時、ブラシ内部にテールグリース「シールノックBD」(右)を充てん

■技術開発賞
低セメント量の高流動コンクリート(ニューロクリートNeo)を用いたトンネル覆工施工技術の開発

トンネル覆工の生産性向上と品質確保をめざし、従来の普通コンクリートと同等のセメント量で自己充てん性を確保できる低セメント量の高流動コンクリートニューロクリートNeo®と、コンクリートの打ち込み用ホースを自動で制御でき、配管切り替えが不要となるホース伸縮式連続打設システムを開発しました。

両技術の併用により、施工に要する人員を半減させるとともに、作業環境を改善できます。ニューロクリートNeoにおいては施工状況に応じた製造方法を確立したことで、開発から4年で10件以上の現場で適用。覆工施工に広く活用できることが実証されています。今回の受賞では、これらの点がトンネル覆工の生産性向上に大きく貢献するとして評価されました。

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大分212号下屋形トンネル新設工事では、コンクリートの締め固めを行うことなく仕上がりの良好な覆工を構築できた

■国際活動奨励賞

町田 馨介(大林組 アジア支店 土木営業部 副部長)

■技術功労賞

黒木 邦彦(大林組 九州支店 熊本城土木工事事務所 所長)

大林組は今後も、安全で安心して暮らせる社会のインフラ整備に寄与するため、新たな技術開発や建設技術の発展に努めてまいります。