2021年度土木学会賞を受賞しました

サステナビリティ

       

土木学会では、土木工学の進歩や土木技術者の資質向上を図り、社会の発展に寄与するためにさまざまな活動を行っており、国内外の優れた土木事業や新技術、さらには土木工学、土木事業に多大な貢献があったプロジェクトや個人などを表彰しています。

2021(令和3)年度の土木学会賞が発表され、21部門131件の受賞が決まりました。大林組は技術賞や環境賞をはじめ多くの分野で選ばれました。

    
 

【2021年度土木学会賞 受賞概要】

技術賞

■オールプレキャストによるPC合成桁橋の床版取替え技術の開発と急速施工

(中央自動車道上田川橋における「キャップスラブ®」工法の適用)

コンクリート橋のプレストレストコンクリート(PC)合成桁専用のプレキャスト(PCa)床版「キャップスラブ®」を開発し、中央自動車道上田川橋の床版リニューアル工事に適用しました。工事では既設桁の上に帽子をかぶせるようにPCa床版を架設。ずれ止め鉄筋とモルタル充てんにより、桁と床版を接合・一体化し、従来工法より3倍速いスピード施工を実現しました。

床版リニューアル工事の施工速度を大幅に向上できる画期的な技術であり、高速道路の品質・耐久性の向上、維持管理コストの縮減や補修に伴う交通規制の削減も期待できる技術として高く評価されました。

隣り合う床版同士の接合にはスリムファスナー®を適用。壁高欄にはEMC壁高欄®を用いて、床版リニューアル工事のオールPCa化を図った

■生産性向上と工期短縮を実現したフルプレキャストラーメン高架橋の建設

(北陸新幹線、福井開発高架橋)

北陸新幹線の鉄道高架橋(延長2.3km)の柱・梁の組み立てにおいて土木工事で初めて、現場でのコンクリート打設を不要とするLRV工法を採用しました。

工事区間のうち約1kmがJR北陸本線とえちぜん鉄道に挟まれた営業線近接区間だったことから、高架橋の地上部材をすべてPCa化し、現場作業を部材の組み立てと部材接合部へのモルタル充てんのみに省力化しました。これにより、従来工法と比べ現場作業を45%削減、躯体構築工期を最大65%短縮しました。

難易度の高い施工条件の中、コンクリート工事の品質を確保しつつ省力化と工期短縮を実現した今回の工事は、社会資本ストックの価値向上に大きく寄与するものとして評価されました。

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柱・梁接合部材には鉄筋貫通孔を配置し、柱梁架構のフルPCa化を実現。作業は2つの営業する鉄道に挟まれた最小幅14.2mの施工ヤードで実施

■川俣ダム岩盤PSアンカー更新における技術革新

(ロックアンカーによる岩盤補強技術の確立)

栃木県の鬼怒川上流に位置する川俣ダムは、1966年に建設された堤高117mのアーチ式コンクリートダムです。貯水池から受ける水圧を支えるため、下流側左右のアーチ支持岩盤を建設当時世界最大級だったPS(プレストレスト)アンカーで補強しました。今回、既設PSアンカーの間に新たに最大長さ72.9m、設計緊張力2,400KN/本となる国内最大級の岩盤PSアンカーを施工しました。

PSアンカーの高耐久化や高品質化に取り組み、最新の施工管理・計測管理技術を導入するなどして高度な岩盤補強技術を確立したこと、またこの技術が大型構造物の耐震補強などのさまざまな分野に適用できることが評価されました。

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ダム機能を維持しながら進められた工事では、急峻な地形に大規模足場を設置して岩盤PSアンカ-工を施工した

■橋梁工事における生産性向上の実現

(鋼管・コンクリート複合構造橋脚の採用、柱頭部施工の合理化ほか)

新東名高速道路・新秦野ICから新御殿場IC間の山間で、長さ約500m、最大橋脚高46mとなる中島高架橋の上・下部工を建設しました。橋桁(上部工)は、橋脚頭部(柱頭部)からコンクリートを左右に伸ばす張り出し架設工法で施工。必要最小限の柱頭部幅で工事を行い、足場・支保工数量を削減しました。橋脚(下部工)は、鋼管・コンクリート複合構造橋脚とし、現場作業量の大幅な削減を図りました。

これらの生産性向上の取り組みは、今後の類似工事の参考となる秀逸な事例であり、橋梁工事の発展に大いに貢献するとして評価されました。

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道路脇の防護柵となる壁高欄には、付着性能に優れた防食鉄筋「サンドグリップバー®」を採用し、経済性や耐久性の向上を図った

環境賞

■現場打設型ジオポリマーコンクリートの開発

ジオポリマーコンクリートは産業副産物(フライアッシュ、高炉スラグ微粉末など)を主原料としており、セメントを使用しないため、製造過程で発生するCO2を、セメントコンクリートと比較して75%以上削減できます。従来は、硬化が早いが強度が出にくいなどの施工・品質面での課題がありましたが、新たな混和剤を使用することで、現場打設できるように改良しました。

高温環境により劣化した鉄筋コンクリート構造物への補修実績があることから、今後の適用拡大によってCO2排出量の削減が期待できると評価されました。

ジオポリマーコンクリートの適用は産業副産物の処分量削減、環境保全にもつながるため、世界各国で実用化に向けた研究が進められている

■粘性土から砂質土までの様々な土壌を連続的かつ瞬時に判別する技術「土質判別システム」

福島第一原子力発電所の事故により発生した約1,400万m³の除染土壌の貯蔵における安全性確保と施設容量の効率的利用のために、ベルトコンベア上を流れる土の性質を連続・瞬時に判別する土質判別システムを開発しました。除染土壌を簡便に測定できる3つの指標(断面積、含水比、乾燥密度)で判別し、改質材の添加量を適切に制御することで、添加剤の使用量を大幅に削減し、コストの低減を図ります。

土質分野の専門知識を総合的に活かして新技術を開発したことは、地盤工学分野において画期的であり、一般の建設工事により発生する建設汚泥などの再利用にも展開できる技術として高く評価されました。

土質判別システムの全体図。汎用計測機器を組み合わせたシンプルなシステムのため、現場への導入が容易。工程はベルトコンベアに設置した計測機器と演算プログラムにより自動化され、建設技能者は不要となる

田中賞

【作品部門・技術】
■防水層にUFCを用いたプレキャストPC床版(UFC複合床版)

高速道路リニューアル工事における通行規制期間の短縮と床版の耐久性向上をめざして、防水性能を有するUFC(超高強度繊維補強コンクリート)との複合構造のPCa床版「スリムトップ®」を開発し、新たな床版取替工法を確立しました。床版同士の接合部にもUFCを打設・接合することで、橋面全体の防水が可能となり、現場の防水工が不要になります。2020年、東北道宮城白石川橋上り線(宮城県)で初適用しました。

耐用年数100年のUFCを使用することで今後の防水層の更新が不要となるなど、工程短縮・省力化のみならず、道路の耐久性向上やライフサイクルコストの低減も実現できる技術として評価されました。

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プレキャストPC床版の断面。接合部には、常温硬化型のUFC「スリムクリート」を使用。上層面のUFCの打ち継ぎ形状を直線ではなくのこぎり歯状にして、接着性を高めた

国際活動奨励賞

深見 秀樹(大林組 北米支店グアム事務所 所長)

技術功労賞

伊藤 敦信(大林組 明神山トンネル工事事務所 所長)

大林組は今後も、安全で安心して暮らせる社会のインフラ整備に寄与するため、新たな技術開発や建設技術の発展に努めてまいります。