再生可能エネルギー活用

風力発電施設の建設をエンジニアリングから施工までトータルでサポート

日本では、2050年カーボンニュートラル実現に向け、非化石電源である再生エネルギーを現在の導入割合から倍増する目標(2030年度)を掲げ、急ピッチでその導入を進めています。風力発電は太陽光発電、水力発電に次ぐ導入ポテンシャルを有し、中でも、洋上風力の設置面積は領海と排他的経済水域(EEZ)を含めると世界6位になることから、今後のさらなる導入拡大が期待されています。

一方、風車の導入に際しては、地震や台風といった日本特有の厳しい自然条件に耐えうる信頼性の高い構造が要求されるうえ、近年は世界的な風車需要増によるリソース不足や紛争などの影響による物価高に直面しているため、工期短縮や合理的な施工法によるコスト削減が課題となっています。

陸上風力発電では、平野部の設置場所が減ったことにより、山間部をはじめとする厳しい自然環境での施工が要求される傾向にあります。環境や地域共生を図りながら、より合理的な施工計画と工法を選定することが重要です。

洋上風力発電では、着床式風車の大型化に対応するための運搬据え付け船舶確保や施工方法の見直しが必要であることに加え、政府が掲げる浮体式風車の2030年度市場導入に向けて、高い信頼性を有しながら大量製造が可能な浮体システムの技術開発が求められています。

これらの課題に対し、大林組は次のようなサービスを提供します。

  • 設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)をトータルでサポートし、低コストと工期の短縮を実現します。
  • 地震、風、波浪などの自然外力に対し、風車システムが十分な耐力を有する構造であることを解析で検証し、風車施工に必要な認証の取得を行います。
  • 風車は過酷な自然環境の中で20年以上の長期間にわたり運用されるため、大林組の生産支援部門(設計・技術部門、ロボティクス部門、エンジニアリング部門、技術研究所)による総合エンジニアリング力で、高い品質と耐久性の確保を保証します。
  • 130年以上にわたって積み上げられた実績に基づく高い施工マネジメント力(安全、品質、環境、工程、労務、原価管理)と技術力で、お客様にご満足いただける施設を提供します。
  • 大林組の有する国内外のサプライチェーンを通じ、信頼性の高い材料や資機材を遅延なく調達します。専門作業は、大林組が定めた審査基準を満たす協力業者との協働で地域貢献を実現します。
  • 洋上作業では、大林組と東亜建設工業株式会社で共同所有するSEP(Self- Elevating Platform:自己昇降式作業台船)を利用した作業を行います。

陸上風力への取り組み

■陸上風力を支える技術

ウインドリフト工法
ウインドリフト工法は、風車タワーの四隅に配置した支柱を上下する昇降装置により部材を吊り上げ風車の組み立てを行う工法です。近年、風車はより高く(ハイタワー)大型化が進み既存の大型クレーンでの組み立てが困難になりつつあります。ウインドリフト工法は、大型クレーンの能力を超える揚重能力を有しているため、これらの大型風車への適用が可能です。

複雑地形上の風況予測
複雑な地形条件の中で、風力発電の立地選定・発電量予測や工作物の耐風性の検討に供するための、複雑地形上の風の計算流体シミュレーション技術です。地面の標高に加え、樹木など風への摩擦抵抗力となる要素も入力条件として、流体の方程式を数値的に計算することで実際の地形上の風を求めます。

気流解析による複雑地形影響評価

洋上風力への取り組み

■洋上風力の実績

秋田能代洋上風力発電事業
大林組は日本初の着床式洋上風力発電事業である秋田洋上風力発電株式会社に株主として出資し、事業会社として事業参画を行いました。2020年に着工し、秋田港に13基、能代港に20基、合計約140MW(1基4.2MW、計33基)の着床式風車の商業運転を2023年1月に開始しました。

  • 秋田港洋上風力発電所
  • 能代港洋上風力発電所

(提供:秋田洋上風力発電株式会社)

■洋上を支える技術

スカートサクション
スカートサクションは、水圧差を利用してスカート形の基礎を海底地盤に貫入(または撤去)させる海洋自然環境に優しい洋上風車基礎施工の新技術です。本工法の特徴としては、①水圧差を利用して貫入・撤去を行うため大型の杭打機が不要、②浅い根入れで大きな荷重を支持可能、③事業終了後、スカート内に注水することで完全撤去が可能、が挙げられ、ジャケット基礎や浮体の係留基礎への適用が可能となります。

  • 左:貫入時 右:引き抜き荷重作用時

テンションレグプラットフォーム
テンションレグプラットフォーム(TLP)型浮体式洋上風車は、浮体と海底を緊張係留させて浮体の安定を図るため、波などによる動揺が非常に小さく、高い発電効率が期待できるとともに、海洋占有面積が小さいというメリットがあります。大林組では、2012年にTLP型浮体式風車の開発に着手。以降、水理模型実験および動揺解析による安定性の検証を経て、一般財団法人日本海事協会(Class NK)から設計基本承認AIP(Approved in Principle)を取得し、2024年には国内で初めて洋上風力発電施設用TLP型浮体を実海域に設置しました。今後も2030年以降のTLP型洋上風力発電施設の社会実装に向けて技術開発を推進していきます。

着床式風車設計解析システム
大林組では、これまで大型構造物の耐震検討に利用してきた耐震設計技術を洋上風力発電所建設に応用し、液状化を含む風車システム全体の耐震照査を3次元FEM解析で行っています。また、解析結果は技術研究所の遠心模型実験や現地実証試験によりその妥当性を確認することで、厳しい認証にも対応できる洋上風力発電所建設に必要な設計手法を確立しています。

風況精査技術
「風況精査技術」とは、風況観測と計算流体力学とを組み合わせてウィンドファームの風況を予測する技術です。陸上における地形の複雑さや、洋上における大気安定度の影響などを考慮した予測を行います。大林組ではNEDO共同研究において、簡易浮体型観測システム(動揺補正機能付き鉛直ライダーを搭載)を用いた1年間の洋上風況観測を国内で初めて秋田県能代港において実施し、防波堤で観測される気象データとの相互比較により実用化に向けた望ましい精度の再現を達成しました。

■洋上風力を支える船舶

SEP船(自己昇降式作業台船)
大林組は東亜建設工業株式会社と共同で建造したSEP(Self Elevating Platform:自己昇降式作業台船)を共同保有しています(2023年4月完成)。発電容量9.5MWクラスまでの着床式洋上風力発電設備の運搬据付け、メンテナンスを目的として建造しましたが、それを超える大型風車に対しても施工能力の範囲内での運搬、据付け作業のほか、メンテナンスや地盤調査船、運搬船、一般海洋工事の作業台船等、さまざまな用途に対して使用が可能です。

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