気候関連の情報開示(TCFD提言に基づく開示)

大林組は、長期ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050」を策定し、2040~2050年の目標の一つとして「脱炭素」を掲げ、大林グループおよびサプライチェーン全体で持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めています。足元ではこのビジョンの実現をめざし、CO2排出量の削減など「環境に配慮した社会の形成」をESG重要課題に設定するなど、地球温暖化防止に向けた事業活動を展開しています。
2020年7月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」提言への賛同を表明し、気候関連のリスクと機会を特定・評価し、気候関連問題が事業に与える中長期的なインパクトを把握するため、国内の主要4事業(※1)を対象としてシナリオ分析を実施しました。今般、この結果を踏まえ、TCFD提言に沿った気候関連の情報を開示します。

※1 対象とした国内の主要事業は「建築事業」「土木事業」「開発事業」「新領域事業」の4事業

TCFD推奨 気候関連情報開示項目

ガバナンス 戦略 リスク管理 指標と目標
気候関連のリスクおよび機会に係る組織のガバナンス 気候関連のリスクおよび機会が組織の事業・戦略・財務計画に及ぼす実際の影響および潜在的な影響 気候関連のリスクについて組織が特定・評価・管理する手法 気候関連のリスクおよび機会を評価・管理する際に使用する指標と目標

ガバナンス

大林組は、「大林組基本理念」に基づいた企業活動を実践しESGの視点で全社的にCSR活動を推進するため、代表取締役社長を委員長とし、各本部長などの執行役員を委員とする「CSR委員会」を設置しています。CSR委員会は年1回開催され、気候関連課題に対する活動を含むCSRに関する基本方針の策定、方策や具体的な活動計画の立案および活動実績のレビューを行っています。グローバル経営戦略室ESG・SDGs推進部がCSR委員会事務局を務め、ESG経営推進およびSDGs達成のための施策の立案、推進および実施状況の把握を行うとともに、情報の発信や社内浸透を担任し、グループ一体での取り組みを推進します。

気候変動に関するガバナンス体制

組織 組織概要 活動概要
取締役会
  • 各取締役で構成
  • 年15回程度開催
  • 気候関連リスクおよび機会に関する監督
CSR委員会
  • 委員長:代表取締役社長
  • 委 員:各本部長などの執行役員
  • 事務局:グローバル経営戦略室ESG・SDGs推進部
  • 年1回開催
  • 気候関連課題に関する活動を含むCSR活動を推進するため、基本方針の策定、方策の立案および実施状況の評価などを実施
環境マネジメント
専門委員会
  • CSR委員会に設置
  • 委員長:環境担当役員
  • 委 員:本社各部門の環境責任者
  • 年2回開催
  • CSR委員会の下部組織として、大林組環境マネジメントシステムにのっとり、収集された環境関連データに基づく施策や実施計画などの見直し・推進、目標の設定およびその実施状況と実績のモニタリング・レビューなどを実施
環境担当部門
  • 本社および各本支店(環境担当部門)
  • グループ会社(環境担当部門)
  • 環境マネジメント専門委員会が設定した実施計画や目標に基づき、本社および各本支店ならびにグループ会社各社が具体的な活動を推進

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戦略

リスクおよび機会の特定

大林組は、事業・戦略・財務計画の検討を行う際に、短期・中期・長期の気候関連リスクおよび機会による影響を判断する一連のプロセスの中で、気候変動の影響についても考慮しています。

  • 短期のリスクおよび機会:
    顕在化しつつあるリスクおよび機会について、半年ごとに開催する環境マネジメント専門委員会で環境保全に係る重点施策の見直し、目標水準の修正を実施します。
  • 中期のリスクおよび機会:
    中期経営計画およびローリングプランで適宜詳細な分析を行います。
  • 長期のリスクおよび機会:
    必要に応じて長期ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050」の見直しを実施します。また、シナリオ分析実施時に2030年を想定したリスクおよび機会を特定しています。以下「シナリオ分析」に詳細を記載。

シナリオ分析

  • TCFDの提言に基づき、リスクおよび機会を特定・評価し、気候関連問題が事業に与える中長期的なインパクトを把握するため、2030年における国内の主要4事業(※1)を想定し、シナリオ分析を実施しました。
  • 分析においては、産業革命前に比べ2100年までに世界の平均気温が4℃前後上昇することを想定した4℃シナリオと、2℃前後上昇する2℃シナリオを採用し、各シナリオにおいて政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と、災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施しました。使用したシナリオのうち代表的なものは以下のとおりです。

        【移行リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ】

    • 4℃シナリオ:IEA(※2)によるStated Policy Scenario(STEPS)(※3)
    • 2℃シナリオ:IEAによるSustainable Development Scenario(SDS)(※4)

        【物理リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ】

    • 4℃シナリオ:IPCC(※5)によるRCP8.5(※6)
    • 2℃シナリオ:IPCCによるRCP2.6(※7)
  • 分析の過程では各シナリオに対して、気候変動に関連するインパクト要因を洗い出し、約30の項目について事業への影響度を定量的かつ定性的に検証し、大・中・小の3段階で評価しました。その内、事業へ大きな影響を与えるリスクとして「炭素税の導入」、「夏季の気温上昇」、「自然災害の激甚化」、機会として「省エネルギー・再生可能エネルギー技術のニーズ拡大」、「国土強靭化の取り組み」を特定しています。
  • 今後、特定したリスクおよび機会への対応策を中期経営計画に織り込むとともに、気候変動を含む中長期のリスクおよび機会を特定・評価・管理する機能を強化し、大林グループの事業機会の増大と組織的なレジリエンスのさらなる向上をめざします。
  • ※1 対象とした国内の主要事業は「建築事業」「土木事業」「開発事業」「新領域事業」の4事業
  • ※2 国際エネルギー機関(International Energy Agency)。エネルギー安全保障の確保、経済成長、環境保護、世界的なエンゲージメントを目標に掲げる国際機関であり、エネルギー政策全般をカバーしている
  • ※3 現時点で各国が公表している環境政策は実現されるが、COP21パリ協定の長期目標は達成されず、2100年までの気候変動による気温上昇が産業革命以前に比べて4℃程度生じることを想定したシナリオ
  • ※4 COP21パリ協定の長期目標達成に向けて国際的な協調が進むことにより、2100年までの気候変動による気温上昇が産業革命以前に比べて2℃より低く保たれることを想定したシナリオ
  • ※5 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略称で、人為起源による気候変化、影響、適応および緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織
  • ※6 温室効果ガス排出量抑制の対策が取られず、産業革命時期比で2.6~4.8℃の気温上昇が生じることを想定したシナリオ
  • ※7 温室効果ガス排出量が抑制され、気温上昇は産業革命時期比で0.3~1.7℃程度に留まることを想定したシナリオ

【シナリオ分析結果のまとめ】

※主要4事業への影響度を大・中・小の3段階で評価しています

項目 2030年における影響 対応策
概要 4℃
シナリオ
2℃
シナリオ
移行 リスク 炭素税の導入
  • 建設工事などの事業活動により排出されるCO2に対して課税され、コストが増加する。
  • エネルギー消費が多い建設資材の価格が上昇し、調達コストが増加する。
  • 施工段階における省エネルギー推進(省燃費、省電力)
  • ゼロエミッションの推進、建設廃棄物のリサイクル率向上、再生材および低炭素型資材の活用
  • 木造中高層建築に係る設計・施工技術の確立およびサプライチェーンの構築
  • サプライチェーンとの協働による建設機械の脱炭素化
機会 省エネルギー・再生可能エネルギー
技術のニーズ拡大
  • 社会のニーズに対応したZEB(※1)や省エネルギー技術の優位性が高まる。
  • 既存のエネルギーから再生可能エネルギーへの置き換えが進む。
  • グリーンビルディングの認証に対応したオフィス需要が拡大する。
  • 事業性と快適性を実現するZEB技術の開発・実用化推進
  • 既存施設のバリューアップや省エネルギー改修に対する営業強化
  • 再生可能エネルギー事業の推進
  • 環境性能に優れた高付加価値ビルの供給
物理的 リスク 夏季の気温上昇
  • 建設現場の作業者の熱中症をはじめとする健康リスクが増大する。
  • 建設現場の就労環境悪化により作業者不足が深刻化する。
  • 省力化技術・ICTを活用した生産性・施工安全性のさらなる向上
  • 建設現場の就労環境改善に向けた革新的な技術開発
自然災害の激甚化
(台風・豪雨・洪水など)
  • 風水害の増加により、工事中の建設物などへの被害や作業の中断、建設資機材のサプライヤー被災などへの対応リスクが高まる。
  • 洪水リスクの高い地域に保有する不動産の資産価値が減少する。
  • サプライチェーンとの強固なネットワーク構築による災害時のBCP対応力の強化
  • 環境性能、防災性能、事業継続性能の向上を実現する再開発事業の推進
機会 国土強靭化の取り組み
  • 防災・減災、国土強靭化のためのインフラ建設や維持修繕の需要が拡大する。
  • 防災・減災、強靭化技術の開発・実用化推進
  • インフラ建設や維持修繕に対する営業強化
  • ICTを活用した調査・点検から評価・診断、補修・補強工事までのワンストップビジネスの推進
  • ※1 Net Zero Energy Buildingの略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることをめざした建物

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リスク管理

大林組は、企業活動に伴うリスクの的確な把握とその防止、または発生時の影響の最小化に努めることが、企業価値の向上とステークホルダーに対する社会的責任を果たすことにつながると考え、グループ全体を包括するリスク管理体制を構築しています。
重要な意思決定事項に関しては、取締役会・経営会議に付議し、個別事案ごとにリスクを抽出・評価のうえ、リスクが顕在化した場合の影響を最小化するための対策が妥当であるかについて議論し、意思決定を行っています。気候関連のリスクに関してはCSR委員会で審議され、取締役会に報告されます。
また、各部門においては、業務プロセスに内在するリスクを把握し、必要な回避策・低減策を講じたうえで業務を遂行するとともに、内部監査部門である業務管理室が、各部門のリスク管理状況を監査しています。
今後はさらなるリスク管理の高度化をめざし、リスク管理体制の強化を進めます。

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指標と目標

大林組は、2050年に向けた長期目標を含むCO2削減目標(総量・原単位)を設定し、事業活動におけるCO2排出削減の取り組みを推進しています。
今後、さらに脱炭素の実現に向けて長期的なCO2削減目標を見直すとともに、削減目標を確実に達成するためSBT(※1)認定の取得に取り組む予定です。

  • ※1 Science Based Targetsの略称で、気候変動などによる気温上昇を2℃未満に抑えるというCOP21パリ協定の長期目標達成に向けて、企業が科学的根拠に基づいて設定する温室効果ガス排出削減目標

CO2削減目標

指標 基準年 目標年 目標
直接貢献(※1)によるCO2排出量削減率 2013年 2030年 ▲85%
2050年 ▲85%
間接貢献(※2)によるCO2排出量削減率 2013年 2030年 ▲25%
2050年 ▲45%
  • ※1 直接貢献=A+B-C

    A 建設現場・オフィスでの燃料使用および電力購入       (スコープ1+スコープ2)

    B 建設資材・廃棄物の輸送および従業員・作業員の通勤     (スコープ3の内、カテゴリー4、7、9)

    C 再生可能エネルギー事業による発電量に相当する排出量

  • ※2 間接貢献=a+b-c

    a 大林組設計施工建物を竣工後35年間供用すると想定した場合の運用時年間排出量

    b 建設資材の生産    (スコープ3の内、カテゴリー1)

    c 省エネルギー改修・低炭素型資材の適用による削減効果

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