脱炭素社会

大林グループは環境方針を策定し、サプライチェーン全体で「脱炭素」「循環」「自然共生」社会の実現に向けた取り組みを実施しています。脱炭素社会の実現に向けては、温室効果ガス排出削減目標を設定し、事業を通じた燃料や電気の使用量削減や低炭素資材の活用など、すべての事業で具体的な取り組みを推進していきます。

温室効果ガス排出削減目標

温室効果ガス排出削減目標(2030年度目標)を次のとおり設定しています。本削減目標は、パリ協定に整合した温室効果ガス排出削減目標であるとして、2022年にSBT(Science Based Targets)(※1)認定を取得しています。

Science Based Targets initiative(SBTi)認定ロゴ
2030年度温室効果ガス排出削減目標を示す図。2019年度比でScope1・2は46.2%削減(38万トンCO2から20万トンCO2)、Scope3は27.5%削減(459万トンCO2から333万トンCO2)を目標としている
  • ※1 SBT(Science Based Targets)
    パリ協定(世界の気温上昇を産業革命以前より2℃を十分に下回る水準(well-below 2℃)に保ち、さらに1.5℃に抑えることをめざすもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のこと
  • ※2 国際的な温室効果ガス排出量の算定と報告の基準として開発された「GHGプロトコル」で定められた温室効果ガス排出の区分
    Scope1...事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
    Scope2...他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
    Scope3...Scope1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)。なお、目標対象はカテゴリ1および11

脱炭素に向けた取り組みの現状分析および課題

Scope1およびScope2

  • Scope1においては、建設現場での軽油由来排出の削減に向け、軽油代替燃料やバイオ燃料の導入に加え、電動・ハイブリッド建機の活用を段階的に拡大中です。一方で、これらの代替燃料や電動建機の普及には、供給エリアの制約や高コストが課題となっています。
  • Scope2については、再生可能エネルギーへの切り替えや非化石証書の活用などにより、2024年度には大林グループの国内事業における排出量の実質ゼロを達成しました。今後は、国内事業において、非化石証書に頼らない再生可能エネルギー利用の比率の増加が課題です。また、海外事業における排出量削減も課題となっています。

Scope3

  • ZEBを含めた環境配慮型建設の実績を着実に積み上げ、2025年度には設計施工案件の約7割をZEB化(ZEB相当含む)しています。一方で、設計施工案件の受注量や建物の環境性能を自社でコントロールできない部分もあり、竣工案件が多い年度は排出量が多くなっています。
  • 排出量の削減に向け、低炭素資材の技術開発を推進するとともに、CO2削減にも貢献する資源循環の取り組みを進めています。

削減方針

脱炭素に向けた取り組みの着実な実施に向け、CO2排出削減策のロードマップに基づきCO2削減を進めるとともに、実施状況や社会情勢に応じて適宜ロードマップの見直しを行っています。

CO2排出削減ロードマップ。Scope1では代替燃料や電動建機の導入、Scope2では再生可能エネルギーの導入、Scope3では低炭素資材の活用やZEBの推進に取り組み、2030年までにScope1・2を46.2%削減、Scope3を27.5%削減し、2050年のカーボンニュートラル実現を目指す

削減の進捗と今後の見通し

Scope1およびScope2

Scope1・2の温室効果ガス排出量推移と削減目標を示すグラフ。2019年度377.5千トンCO2から2025年度280.3千トンCO2へ削減し、2030年度に46.2%削減、2050年度に100%削減(実質ゼロ)を目標としている
  • 大林グループは2030年度までにScope1およびScope2の排出量を2019年度比で46.2%削減する目標を掲げています。2025年度時点では25.8%の削減を達成しており、2030年度目標に向けた取り組みを加速しています。
  • Scope1については、建設現場で使用する燃料由来の排出削減に向け、GTL(※3)、バイオディーゼル、リニューアブルディーゼル(※4)などの軽油代替燃料の活用を進めています。今後も供給状況やコストなどを考慮しながら活用範囲を拡大し、建設現場における脱炭素化を推進します。
  • 電動建機については、実証実験を通じて効果の検証を継続するとともに、施工計画に応じた給電・充電体制の構築や運用手法の標準化を進めています。今後も現場運用に関する知見を蓄積し、導入拡大に取り組みます。
  • Scope2については、国内事業において再生可能エネルギーの導入および非化石証書の活用により、電力使用に伴うCO2排出量の実質ゼロ化を継続しています。今後は海外事業においても再生可能エネルギーの活用を順次拡大し、グループ全体での排出削減を推進していきます。

Scope3

Scope3カテゴリー1(資材製造)およびカテゴリー11(販売した製品の仕様)の排出量推移と削減目標を示すグラフ。2019年度比で2030年度27.5%削減、2050年度100%削減を目標としている
  • 低炭素資材であるクリーンクリート®(低炭素型のコンクリート)については、適用可能な案件への利用を積極的に推進し、サプライチェーン全体の排出削減に貢献していきます。また、電炉鋼材の利用を促進する目的で、新築工事の電炉鉄骨使用率30%を目指しています。
  • 環境配慮型建築の普及にも注力しており、今後も省エネルギー技術や再生可能エネルギーの活用を進め、2030年度に設計施工案件の100%ZEB化を目指します。
  • 低炭素資材の利用拡大と環境配慮型建築の普及を通じて、建物のライフサイクル全体でのCO2排出量削減を推進し、建設業における脱炭素化の取り組みをけん引していきます。
  • ※3 GTL(Gas to Liquid)
    天然ガス由来の製品で、環境負荷の少ないクリーンな軽油代替燃料。石油由来の製品と同等の性状を保持しつつ、軽油対比でCO2排出量を8.5%削減することが可能
  • ※4 リニューアブルディーゼル
    食料と競合しない廃食油や廃動植物油などの原料から、水素化精製プロセスを経て製造する次世代バイオ燃料。ライフサイクルアセスメントベースでの温室効果ガス排出量で石油由来軽油比約90%削減を実現し、軽油を使用する車両や重機などでそのまま利用することが可能

Scope1削減策

軽油代替燃料などの導入

  • 事業活動を通じて排出されるCO2の多くは、建設現場の建機などに使用される軽油などの燃焼から発生しています。そのため、CO2の排出を低減できる軽油代替燃料(GTL、バイオディーゼル、リニューアブルディーゼルなど)を積極的に活用することで、Scope1排出量の削減に取り組んでいます。2025年度は利用実績が前年度から増加し、東京・大阪をはじめとする各地の建設現場で活用を拡大しました。
  • 軽油代替燃料などで削減しきれないCO2については、環境省が指針を提供するカーボン・オフセット第三者認証(※5)プログラムによる削減も推進していきます。
  • 将来的には、水素燃料の活用も視野に取り組みを進めていきます。
廃食油の回収、B100(バイオディーゼル燃料)の製造、建設機械での利用までの流れを示す写真
100%バイオディーゼル燃料の活用に向けた実証実験
再生可能ディーゼル燃料『Neste MY Renewable Diesel』の容器
Neste社のリニューアブルディーゼル(RD)実証実験
建設現場で使用される油圧ショベルと燃料供給車
出光興産のバイオ燃料「出光リニューアブルディーゼル(IRD)」実証実験
  • ※5 環境省が指針を提供しカーボン・オフセット協会が管理する制度で、企業や団体が排出した削除困難な温室効果ガスを、クレジットなどで埋め合わせ(オフセット)した取り組みを登録された認証機関が認証する仕組み。SBTのルール策定および認定を行うSBTi(Science Based Targets initiative)は、SBT達成にあたり、カーボンクレジット等によるオフセットを排出削減実績として算入することは認めていないため、SBTに基づくCO2削減目標達成に向けた施策には含まれない

ICT省力化施工、ハイブリッド建機・電動建機の導入推進

  • ICTを活用した省力化施工の拡大やハイブリッド建機、電動建機(電動大型バックホウ、電動ダンプなど)の導入をメーカーの市場投入計画に沿って推進し、現場での運用実績を蓄積しています。今後は施工条件に応じた給電・充電体制の整備や運用ノウハウの高度化を進めることで、さらなる導入拡大を図ります。
  • 建設現場で充電を行う電動油圧ショベルと充電設備

    B100燃料専用発電機を用いた充電状況

  • 建設現場で給電車両から電動油圧ショベルへ電力を供給している様子

    電動大型バックホウの作業状況

Scope2削減策

再生可能エネルギーへの転換

  • 建設現場やオフィス、賃貸不動産などで使用する電力を順次再生可能エネルギーへの切り替えや非化石証書購入により、2030年までに大林グループのScope2における「脱炭素」を目指します。

再エネ電力 導入実績と目標

項目 実績 目標
2024年度 2025年度 2030年度
国内単体 100% 100%(※6) 100%
国内グループ会社
海外
  • ※6 2025年度の数値は第三者保証取得前の検証値

Scope3削減策(カテゴリー1「資材製造」)

低炭素資材の活用(木造・木質化建築の推進など)

  • サプライチェーンなどと協働しながら、資材製造段階におけるCO2排出量の削減に向けた低炭素資材の開発・普及を推進しています。2010年に開発した低炭素型のコンクリート「クリーンクリート」は、従来のコンクリートと比較してCO2排出量を最大80%削減でき、累積打設量は2025年度末時点で47.9万m³に達しました。そのほか、産業副産物を活用した「クリーンクリートN®」「クリーンクリートジオ®」、木質バイオマス由来のリグニンを活用した「リグニンクリート」など、さらなるCO2削減や炭素固定に資する技術・資材の開発と実用化を進めています。
  • また、大型建築物の木造・木質化の推進に加え、電炉鉄骨やリユース材の活用拡大を通じて、建設資材の製造から施工におけるCO2排出量の削減に取り組んでいます。

クリーンクリートと電炉鉄骨 使用量目標

目標
クリーンクリート 5万m³/年
電炉鉄骨 新築工事での使用率30%
一般コンクリートと比較したCO2排出量の削減効果を示すグラフ。クリーンクリートは最大約80%、クリーンクリートNは最大約120%の削減効果を示している
一般的なコンクリートと比較した「クリーンクリート」「クリーンクリートN」のCO2排出量
累計打設量の推移を示す棒グラフ。2016年度123千立方メートルから増加を続け、2025年度は479千立方メートルとなっている
「クリーンクリート」の適用実績
屋内に並べられた湾曲形状のプレキャストコンクリート部材
「クリーンクリート®」を使用したシールドトンネル用セグメント
橋脚基部周辺の仮締切内で施工を行っている様子
「クリーンクリートジオ®」を使用した低炭素型流動化処理土の施工状況

構造部材をリユースしCO2排出を削減するオープンラボ3(旧電磁環境実験棟)

樹木に囲まれた低層建築の外観
旧電磁環境実験棟(1993年竣工)
オープンラボ3完成イメージ
鉄骨構造の施工現場で作業員が部材を確認している様子
既存建物の鉄骨部材の取り出し状況
完成建屋の内部(赤色鉄骨:リユース材)
新材で新築する場合と解体部材を転用した場合のCO2排出量を比較したグラフ。排出量は135.1トンCO2eから69.3トンCO2eとなり、65.8トンCO2e、49%削減している
オープンラボ3における使用構造部材の製造時CO2排出量の比較
木材を活用した中高層木造建築の外観と、木質空間を生かした吹き抜け内部の様子
日本初の高層純木造耐火建築「Port Plus」(撮影:株式会社エスエス 走出直道)

インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用

  • 低炭素資材(クリーンクリート、電炉鉄骨、木造・木質化建築など)の利用促進のため、インターナルカーボンプライシング(ICP)を導入し、低炭素資材の研究開発投資の促進に活用しています。ICP単価は外部の市場単価予測や低炭素資材によるCO2削減単価などを参考に設定していますが、市場単価の変動などに合わせて適宜見直しを行う予定です。今後、削減効果の見える化や導入実績現場の評価、計画段階での低炭素資材の利用促進に活用していきます。
ICP設定単価 10,000円/t-CO2

Scope3削減策(カテゴリー11「建物運用」)

ZEB・ZEH-Mの推進・拡大

  • 自社の事業活動から排出するCO2の削減だけでなく、お客様に引き渡した建築物の運用時に排出されるCO2の削減にも取り組みます。建物計画の初期段階でCO2排出量削減効果とコストを比較検証できる「カーボンデザイナー E-CO BUILDER™」などのシステム開発を通じて、建物の用途や特性に応じた最新の省エネ技術とノウハウによりお客様に最適なZEB・ZEH-M(※7)をご提案していきます。
  • ※7 ZEB・ZEH-M(Net Zero Energy Building/House - Mansion)
    快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物

2030年度目標

ZEB目標(※8)

登録
種別
工事
種別
設定する
目標値
建築規模/建築用途
10,000m²未満 10,000m²以上
事務所、学校、
工場など
ホテル、病院、
百貨店、飲食店、
集会所など
事務所、学校、
工場など
ホテル、病院、
百貨店、飲食店、
集会所など
設計 新築 A)ZEB
普及率
66% 10% 100% 100%
既存
建築物
B)実績
成長率
20% 20% 20% 20%

ZEH-M目標(※9)

建物規模 2030年度におけるZEH-M全体の普及目標(%) 目指すべき水準以上の普及目標(%)
低層 100 100
中層 100 100
高層以上 100 100
全体 100 -

2025年度目標(※8)に対する実績

種別 規模 ZEB相当受注実績 ZEB相当受注実績割合(延べ面積比率)
新築 300m²未満 14 51%
300~2,000m²未満 8 86%
2,000m²以上 10 71%

2025年度は以下の実績はありませんでした

  • ZEBプランナーの設計受注実績のうち既存建築物及びコンサルティング受注実績
  • ZEHデベロッパーの導入実績
  • ※8 ZEBプランナーとしての目標
  • ※9 ZEHデベロッパーとしての目標
自然エネルギーを活用した建築環境システムの概念図。太陽光発電・太陽熱利用、自然換気、地下水利用、地中熱利用、クールピットを組み合わせて建物の省エネルギー化を図る仕組みを示している
自然エネルギーを活用した省エネルギー技術
住戸とエントランスにおける省エネルギー技術の概念図。外壁の高断熱化、Low-Eガラス、省エネ換気、高効率空調・照明・給湯設備、太陽光発電、太陽熱利用、コージェネレーションシステムを組み合わせてエネルギー消費を削減する仕組みを示している
ZEH-Mで活用される省エネルギー技術
木材を外装や構造に使用した2階建て木造建築
ZEB認証を取得した木造の仮設現場事務所

TCFD開示

気候変動に関するリスクおよび機会については、2020年7月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、関連リスクと機会を特定・評価し、気候変動関連問題が事業に与える中長期的なインパクトを把握するため、シナリオ分析を実施のうえ、2020年11月に同提言に沿った情報を開示しました。また、ISSB「IFRSサステナビリティ開示基準」の公開など、社会からの要請に応じるため、2024年4月に情報を更新しました。(有価証券報告書P22より

脱炭素に貢献する技術開発の推進

新たな省エネ工法、省燃費建機や電動建機の技術開発に加えて、水素利用なども含めたカーボンニュートラルに貢献する技術開発について、他業種とも連携しながら推進していきます。