第三節 創業六十年を迎える
業績向上―資本金一億五〇〇〇万円に増資
昭和二十七年(一九五二)は創業満六十年に当たった。この年は特需ブームも終わりを告げ、輸出は不振となり、国内需要も減退して不況となったが、建設業界が受けた影響は比較的少なかった。大林組にとっては、むしろ業績は向上し、三月の決算では純利益金五一〇〇万円となり、前期を二〇〇〇万円近く越えた。これに応じて株主配当も五分増加して年一割五分とした。さらに同年九月決算においては、純利益金九九〇〇万円を計上し、ほとんど倍増のいきおいを示した。配当も創業記念特別配当三割五分を加え、年五割という破格なものとなった。同時に資本金も、これまでの七〇〇〇万円から一億五〇〇〇万円に増資した。
創業六十年記念式典は、十一月十八日午前十一時半、本店五階で行なわれた。目ざましい業績の伸長があったとはいえ、大林組はようやく立ちあがった時期であり、世の中もまた、まだ貧しさから脱却していなかった。式典は簡素を旨とし、社長式辞、従業員総代の祝辞があったのち、自祝の昼食会が開かれたのみである。参列者も本店在勤者、京阪神在住の元役員や顧問、内外木材工業役員、大阪林友会役員の範囲にとどめ、服装も全員平服であった。
記念式典のほかには、特別な行事は行なわず、得意先などの関係方面に対しても、大林組の現況を紹介するため戦後の主要工事を収録した「工事画報」を贈呈するにとどめた。
なお、これを機会に昭和二十年以降中断していた慰霊祭を復活することとし、十一月二十三日午後二時から府立大手前会館において挙行した。