十 第五回内國勸業博覽會工事 三十八歳―四十歳 2 行幸啓
臨御
明治三十六年四月二十日 明治天皇には大阪に行幸あらせられ、親しく第五回内國勸業博覽會開會式に臨ませ給ふた。會場美術館樓上御便殿に於て、博覽會總裁閑院宮載仁親王殿下、副總裁平田東助男、審査總長大鳥圭介男及安廣事務官長、高崎大阪府知事に拜謁仰付られ、式場に出御、畏くも勅語を賜つた。
天皇、皇后兩陛下には、前後八回に亙(わた)つて京都御所より會場に行幸啓あらせられ、巨細に各館を御巡覽遊ばされた。この産業御奬勵の大御心を拜し奉つた大阪の市民は、悉(ことごと)くその御宸念に感激して抃舞(べんぶ)狂喜したものである。まして故人にとつては、心を罩(こ)めて建造した各館に 兩陛下が御足を駐めさせられたのであるから光榮限りなく、恐懼(きょうく)措く所を知らなかつた。