大林芳五郎傳

1940年に刊行された「大林芳五郎傳」を電子化して収録しています。
なお、社名・施設名などは、刊行時の表記のままとしていますので、あらかじめご了解下さい。

第二編 本記

十四 人夫五千人調達 四十一歳

戰時奉公の最初の用命は、京釜鐵道工事と旅順閉塞船の石材積込みであつたが、その直後大林組は第四師團司令部より人夫五千の供給方を命ぜられた。この人夫は第五師團の動員令に伴なふ補充であつて、第四師團に委囑し來つたものである。一令の下に五千の人夫を集結することは容易な業ではない。しかし故人の德化は大阪に於ける勞働者の頭の心まで滲み込んでゐて、天下の大事に際して發せられた大林の徴集令は忽ちにして五千の勢揃を全ふすることが出來た。第四師團當局はその疾風迅雷的の神速さに舌を卷き、『これでこそ四師團は豪(えら)いものぢやと依賴者に大きな顏が出來る。お蔭で當師團の男前が上つた。天下分け目の大戰爭の出鼻に實に幸先がよい』と欣躍賞讃せられたのである。

爾後大林組は陸軍の命を受け、第四、五、十一各師團の豫備病院の建築工事を殆ど一手に引受け、戰時工事の必須機關として重用せられたのであつた。

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