三 葬送 4 献燈(けんとう)
元帥の献燈
故人の遺骨は一週忌の法要を機に菩提寺龍淵寺境内の塋域(えいいき)に葬つたのであつたが、後大正七年の三回忌に際し、上原元帥は故人の靈を慰めんものと一對の燈籠を故人の墓前に寄進せられた。その時の義雄氏の式辭は下の通りである。
義雄氏の式詞
式詞
顧れば家嚴逝きてより三年、茲(ここ)に回忌法要の日を卜し、献燈の式事を行ひ聊(いささ)か淸酌庶羞(せいしゃくしょしゅう)を奠(さだ)す
献するところの石燈は、家嚴在世中多年眷顧(けんこ)厚誼を忝ふし、而も肝膽(かんたん)相許されたる上原男爵閣下の寄贈に係り、優麗典雅結構宜しきに適ひ、その刻字は閣下親らの筆に成りたるもの、長へに塋域を照して松風蘿月(らげつ)と共に家嚴が無窮(むきゅう)の好伴侶たるべし
嗚呼幽明境を異にすと雖も、閣下の温情高風に父嚴の靈亦莞爾たるべく、茲に又宮里閣下代參の榮を荷ひ、併せて各位の光臨を辱(かたじけの)ふし、洵に感激に堪へざるなり、忝しく蕪言を陳して式詞とす
大正七年一月二十三日
義雄 謹白