大林組100年史

1993年に刊行された「大林組百年史」を電子化して収録しています(1991年以降の工事と資料編を除く)。
なお、社名・施設名などは、刊行時の表記のままとしていますので、あらかじめご了解下さい。

7 たくましく未来に向かって

当社100年の歴史は、明治後半期、大正、昭和、平成とまたがり、まさに近代および現代日本とその歩みをともにしている。これらの時代を通して前半のわが国は、殖産興業・富国強兵による国力増強策に始まりいくつかの戦争を経て世界の列強の一国となり、後半に当たる太平洋戦争後は、民主国家として経済大国への道を歩み、再び高い国際的地位を手中にした。しかしこの間、戦争、世界恐慌をはじめ多くの苦難を乗り越えなければならなかったのである。当社もその事業の赴くところ、国運と盛衰をともにし、敗戦後は苦難の再建から始まり、今日の大をなすに至った。それは幾多の風雪に耐えぬいた100年であった。

創業者大林芳五郎は、時代を先見して土木建築の請負業に身を投じ、明治25年(1892)、大林組を興した。そして自ら実践し教えた「良く、廉く、速く」を三箴とし、人材を集め、技術を尊重し、進取積極、誠実な施工に徹し、顧客の信頼をかち得て短期間に事業の基礎を固め、全国業者としての地歩を築いた。

その後、大正、昭和の前期を通じて業界を代表する企業へと成長したのであったが、敗戦によって多大な損害をこうむり企業の基盤は揺るがされることとなった。

戦後は社会の混乱、企業存亡の危機のなか再建が始まったが、それは苦闘というにふさわしいものであった。やがて新しい社会体制のもとに新しい国づくりが進められ、建設業は復興、再建の旗手として甦った。当社は施工の機械化、新技術の採用等近代的施工法を体得しつつ、国土建設、産業基盤づくりを支え、高度経済成長期に入って、産業界の発展とともに大きく躍進した。

石油危機後は、高度成長時代のひずみも現れ、当社をはじめ建設業界も低成長下に苦しい時期を迎えた。しかし、当社は人材の育成、組織の改革、研究開発等経営の合理化を積極的に推進してこの低迷期を乗り切り、新たな発展期に入った。この間、海外での事業活動も着実に拡大し、事業はグローバル化の一途をたどった。国土の開発・整備、産業構造の変貌、情報化・国際化の進展など大きな社会変化のなかで、当社は大きく発展してきたのである。

ここにその歴史について述べてきたが、過去を語るのは、未来への道を探らんがためであり、1世紀に及ぶ歴史のなかに多くの教訓と示唆を見出すことができた。

当社の今日をもたらしたのは、得意先のご愛顧によることはいうまでもなく、後援者の助力、先輩諸氏の尽力、協力会社のよき協力によるものであり、そして大林グループの役職員のたゆまぬ努力によるものであった。こうして100年の歴史のなかに当社の伝統は築き上げられてきたのであり、これを大林会長は「未知への積極的な挑戦と誠心誠意の遂行精神、科学的合理性の尊重、人材の育成と活用」の3点に集約して述べている。

当社はこうした伝統を企業の壌土とし、その上に現在から近未来にふさわしい内容、風姿をもつ企業を確立すべく、新しい企業理念を掲げ、長期経営ビジョン「大林ルネッサンス111」を抱いて一丸となり、創業第2世紀を迎えて、たくましく未来に向かって歩み始めている。

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