大林組100年史

1993年に刊行された「大林組百年史」を電子化して収録しています(1991年以降の工事と資料編を除く)。
なお、社名・施設名などは、刊行時の表記のままとしていますので、あらかじめご了解下さい。

2 抜本的な組織改正を実施

■―営業力強化を第一義として

平成2年(1990)の社長年頭訓示は「大胆な企業革新を」と題して、建設業を取りまく環境は量的にも質的にも大きくかつ急速に変化し、建設業の業態を変貌させつつ1990年代の幕開けとなったが、この節目をとらえ受注高2兆円を目指し、攻めの経営姿勢に徹して建設大手の地位を堅持するとの基本方針を述べている。

そして“新しい大林、たくましい大林”を構築するため、組織・人事の大胆な改革を断行し、従業員の意識の変革を求めて営業に重点をおく企業体質に変換する必要があるとして、営業部内の要員の拡充、営業組織の戦略的再構築を行い、各部門が営業をバックアップすることにより営業力の質の向上を図ると同時に、人材の育成に力を注ぎ活気ある企業風土への変革を進めていくとした。

さらに営業体制の再構築に関しては、営業と生産の機能の見直し、受身から攻めへの戦略的営業の推進、プロジェクトごとの柔軟な営業体制の確立、一人一人の営業マインド、大型工事の受注戦略等について説示した。

このようにこの時期においては、景気の長期的拡大という追い風を受けつつ、元年度の受注高、経常利益とも過去最高が見込まれるなかにあって、営業力の強化、工事施工能力の拡大を図って、一段の躍進を期したのである。

以上の趣旨に基づき、新しい時代に対応して組織の改革を行うため、2年1月東京本社に岡田副会長を委員長として「組織改革委員会」が設置され、抜本的な機構改正の検討が進められた。そして同年7月、まず東京本社および本店の組織改正が実施された。その後、支店・営業所へと進み、1年後の3年7月、北陸支店の移転とその組織改正をもって完了した。今回の措置は、市場変化に適応できる営業力の強化を第一のねらいとし、あわせて企画機能の拡充、施工の効率化、技術の高度化等を意図したもので、当社の組織改革としては画期的なものであった。

なお、これらの組織改正と同時に専務会が発展的に解消され、新たに経営会議が発足した。

■―営業本部ほか7本部制へ

東京本社に関する改正のあらましは次のとおりである。

●営業本部

従来の建築本部の営業関連業務を集約するとともに、民間の土木工事の営業をも含めた総合的な営業業務を管掌するため、営業本部(本部長=副社長篠原良男)を新設した。これは、建築本部の下に置かれていた建築部と営業部の営業活動の重複性の解消と、民間土木工事とそれに関連する建築工事に対する営業担当の統合化、さらに工事情報の収集から見積り、受注、引渡しなど一連の業務を一貫した責任体制のもとに行うこと等をねらったもので、今回の組織改革の主眼である。営業本部の構成は下図のとおりである。

営業本部のうち新設となった室・部について若干触れる。

本部長室は、営業本部長のブレーンとして、建設需要の調査、工事獲得に関する基本方針および総合的施策の立案、全店の店別工事獲得目標の立案等を担任する。これに対し東京営業推進部は、営業の最重要拠点である東京本社所管地域における営業業務のスタッフ部門としての役割を担うもので、営業情報の収集、工事獲得に関する施策の立案、営業各部および営業所に対する工事獲得目標の立案等を担任する。いずれも企画機能の強化を図ったものである。

契約事務部は、東京本社所管の建築工事に関する入札書および提出見積書の作成、工事の決定に伴う事務等の業務のほか、従来総務部が担任していた請負契約の審査、契約書の作成、工事保証に関する業務を引き継ぎ担任する。

環境部は、工事が周辺環境へ与える影響の調査および分析等のアセスメント業務、工事現場周辺住民等との折衝業務を担任するもので、環境問題に関する業務の重要性がますます高まってきたことに対応したものである。

●建築生産本部

営業本部の新設に伴って建築本部が廃止され、建築部門のうち施工関連業務および資材部の業務を集約して、新たに建築生産本部(本部長=専務取締役工藤立治)を設置した。その構成は下図のとおりである。

本部長室は、企画機能の強化を図って、建築生産本部長のブレーンとして設置した。建築生産に関する総合的施策の立案、施工業務の総合監理、技術職員の配置の総合調整と研修等を担任する。

品質保証室は、品質保証業務の重要性に鑑み新設したものである。

購買部は、従来の資材部の業務と建築部の下請負契約業務を一元化し、集中購買による原価の低減と業務処理の効率化を図り、工事施工体制を強化することを目的として設置された。同部は、協力会社の指導育成および新規導入等の業務も担任する。

●設計本部

企画提案型営業、需要創出型営業の推進にあたって、設計部門の果たす役割は大きい。設計部門の組織力、技術力の一層の向上を図り、全社的に効率的な業務運営を行うため本部制(本部長=専務取締役向笠愼二)とした。その構成は下図のとおりである。

本部長室は、設計業務に関する総合的施策の立案、設計に従事する技術職員(設備に係る技術職を除く)の配置の総合調整等を担任し、本部長のブレーンとしての役割を担う。

設計技術部は、設計に関する研究開発、情報処理技術の開発、設計図書の標準化等の業務を担任し、また、設計環境部は、計画建物が周辺環境に与える影響の調査・分析、関係官庁との折衝業務、確認申請業務を担任する。

なお、設計本部は平成3年7月、完成したばかりのセンチュリータワービル(東京都文京区本郷、当社設計協力・施工)に移り、最新のオフィス環境のもとで執務することとなった。

●土木本部

建築部門の営業・施工に係る組織の改革と同時に、土木部門も営業力の強化と施工体制の一層の充実を図って、土木本部(本部長=専務取締役萩原惟昭)の組織の再編成を行った。その構成は次ページのとおりである。

本部長室は、前3本部に設けられた本部長室と同様に、土木本部長のブレーンとしての役割を担う。土木工事の獲得および施工に関する総合的施策の立案、全店の店別工事獲得目標の立案、技術職員の配置の総合調整と研修、協力会社の指導育成、土木工事の品質保証に関する全社的施策の立案等を担任する。

東京企画部は、東京本社所管地域における営業業務および施工業務のスタッフ部門であり、官庁等土木工事に関する営業情報の監理、東京営業各部および営業所に対する工事獲得目標の立案等を担任する。

また、東京本社所管の土木工事の進捗状況・工事利益の把握、工事事務所の編成等も行う。

●土木技術本部、技術研究所等

従来の技術開発本部のうち、土木関連部門である土木技術部、地下空間技術開発部およびダム部に土木本部設計部を加え、土木の技術営業部門を集約した組織として、土木技術本部(本部長=専務取締役黒沢重男)を設置した。

これに伴い、技術開発本部を発展的に解消したが、建築部門の研究開発については、今回機能強化を図って本部から独立の組織とした技術研究所および研究開発グループが主として担任するほか、技術営業と密接なかかわりをもつ特定分野の研究開発については、従来どおりエンジニアリング本部や原子力本部が担任していくこととした。また、技術開発本部にあった企画管理部および特許部も本部に属さない組織として独立させ、海洋技術部はエンジニアリング本部の海洋開発プロジェクト部に統合した。

なお、企画管理部は技術開発企画室と改称し、従前の業務を引き継いだ。

以上の組織の構成は下図のとおりである。

●エンジニアリング本部

今回の改正では変更ないが、2年5月に地球環境部が増設された。

●原子力本部

従前と変わりない。

●その他の組織改正

<関連事業室>

大林グループを形成する国内の関係会社の経営に関する企画機能を強化するため、総合企画室関連事業課を関連事業室とし、独立の室とした。

<情報システム企画室>

全社的経営情報システムの企画、部門業務情報システムの総合的活用のための施策の立案、コンピュータ利用による業務効率化の立案等を担任させるため、新設したものである。これに伴い、総合企画室OA課を新設の同室に移管した。

<労務安全部>

従来の労務安全部、土木本部安全管理部、建築本部安全管理部の3部を統合して労務安全部とした。

<不動産開発事業部および不動産開発事業管理部>

従来当社の不動産開発業務は、宅地造成を中心とした開発事業部と賃貸不動産等を取り扱う営業不動産部の双方で担当していたが、今回の改正において、自社事業のものはすべて不動産開発事業部で担当し、不動産開発事業の拡大を図ることとした。

また、同事業のスタッフ部門として、不動産開発事業管理部を設置した。

以上が東京本社に関する改正のあらましであるが、本店についても、営業部門を中心に東京本社に準じた大幅な改正を行った。

設計本部のCADルーム
設計本部のCADルーム

■―支店・営業所の組織改正

東京本社および本店の組織改正に伴い、支店・営業所の組織も営業力強化の線に沿って次のように改正された。

まず平成2年(1990)11月、営業所の組織を改正した。東京本社管轄の営業所は、すべて部を置く営業所とし、各営業所とも総務課、営業第一部、営業第二部の編成とした。同時に営業所名を県名と一致させたことにより、千葉、埼玉、新潟、群馬、栃木、茨城の6営業所となった。

また、本店および支店管轄の営業所については、これまで京都・泉南・岡山の3営業所にのみ課が置かれていたものを、今回、そのほかの営業所にも原則として営業課を置くこととした。ただし、京都営業所には、総務課、営業第一部、営業第二部のほか工事部を設けた。

次いで3年2月、支店の組織改正を行い、土木部、建築部を廃止し、新たに営業各部、土木工事部、建築工事部を設けた。営業第一部に事務課、営業課、見積課を置き、営業第二部以下は営業課のみとし、営業業務の統合化と営業重視の体制をとった。

さらに、名古屋、広島、神戸各支店には開発営業部が設置されていたが、九州、東北、横浜、札幌の4支店にも同部を新設し、四国、北陸両支店では営業第一部に開発課を置いた。

これらのねらいは、もちろん営業力強化にあるが、営業部が受注から引渡しまで一貫して責任をもった客先対応ができるようにしたこと、また自社の開発事業や大型の開発プロジェクト受注など、開発型の事業展開を強化することなどにあった。

このほか、支店の土木工事部、建築工事部の組織整備、設計部の組織拡充、安全関係3課を新設の安全部に所属させるなどの改正も行われた。

なお、3年7月北陸支店の組織を改正し、支店所在地を金沢市から新潟市東大通2丁目3番28号に移して、金沢には課を置く営業所を新設、新潟営業所は廃止した。

新潟市へ移転した北陸支店―辞令交付日の朝
新潟市へ移転した北陸支店―辞令交付日の朝

■―情報システムセンター

平成2年(1990)12月、電子計算センターの名称を情報システムセンターと改め、その組織を改正した。

これは、先の東京本社、本店の抜本的組織改正の際に、情報システム企画室が新設され、同室が全社的な経営情報システムの企画立案や、部門業務の情報システムの総合的活用のための企画立案等を担任し、将来的な情報システムの構築を推進していくこととなったことに伴い、その実施部門としての電子計算センターの体制整備を行ったものである。

情報化時代を支えるコンピュータは、エレクトロニクスの進展によりデータベースとして膨大な情報量を扱い、さまざまな切り口でその処理が行えるようになっていた。一方、パソコンなどダウンサイジングの動きも加速され、システムとして活用することが急務となっていた。

新組織は下図のとおりである。

改正の主たる内容は、運用管理部とシステム開発各部とに分けた部制としたことである。

運用管理部はコンピュータシステムの利用に関する業務処理、機器・ネットワーク・ソフトウェア・情報ファイルの運用および管理、外部から受託するコンピュータの利用に関する業務等を担任する。

システム開発各部は、担当する部門を①総務・人事・財務・経理、②営業・施工・不動産開発、③技術開発の3部門に分けて、それらに関する情報システムの開発およびデータベースの構築・活用等を担任することとなった。

なお、電算業務の基本的方策の立案に資するために設置されていた電算業務運営委員会は、同センターの改組に伴い情報システム連絡会と改称され、当社が目指す情報システムの構築等に関し、関係部門の効率的な業務遂行を図るための協議の場として機能していくこととなった。

情報システムセンター・コンピュータ室(東京本社)
情報システムセンター・コンピュータ室(東京本社)
情報システムセンター(本店)
情報システムセンター(本店)
コンピュータグラフィックスなどを制作するAVルーム(東京本社)
コンピュータグラフィックスなどを制作するAVルーム(東京本社)
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